第8話 侵入経路

 現在時刻は 21:45


 警備が凄いな、ここから見てもわかるくらいにライトアップされてる。とりあえず目的のサマーズビルはどこだったかな?


「おわっ!?」


 急に路地裏に引き込まれた。急なことでびっくりしたけど、この力どこかで食らったことがあるな…?

 もしかして…。


「香織ちょっと痛い」


「ごめんごめん!」

 やっぱりな!


「急に引っ張られるとびっくりするからやめてくれ」


「いやー、ビルを通り過ぎそうだったから」

 ごめんねと付け足して笑う。


「別にいいけどさ」

 とりあえず、周りを見渡してみる。


「このビルはどうやって登ればいいんだ?」


「そこに足が掛けれそうなパイプがあるよね?」


 確かにあるけど、まさか…


「こうやって足をかけて登っていくよ」


「いや無理だわ!」


 運動できないとかじゃなくて、これは人の為せる技じゃない。


「二人して作戦前に余裕ね」


 黒いレインコートのような服にマスクを付けた。大野さんがやってきた。


「大野さん重装備ですね」


「私がバレたら芋づる式で全滅するから」


 確かにそうだ。


「もしかして大野さんもこのパイプを使って上がるんですか?」


「私は香織みたいに人は辞めてないわよ。このビルの裏側に階段があるわ。鍵は開けておいたから大丈夫よ」


「マジで尊敬します」


 ほら来なさいと催促され、裏に回っていく


「今回の作戦は上手く行きますかね? 凄い厳重な警備でしたよ」


「確かに厳重な警備ね。でもどんなに厳重な警備にも穴があるわ。あそこを見てごらん」


 双眼鏡を受け取って覗き込むと。


「あれって」

 何故か屋上は警戒されていない、怪盗といえば屋上からとかも有り得るのに。


「えっと普通は屋上とか警戒しますよね?」


「さあ?」


 大野さんも知らないのか…

 雑談をしながら上にあがると、先に着いていた香織がいた。「遅かったね! 二人とも」と·····いや、お前が速すぎるんだよと思ったが、口には出さない。


「悪い待たせた」


 彼女の顔に目を向けると、白い仮面をつけていることに気づいた。


「黒いコートに白い仮面か、かっこいいな。俺の分はあるのか?」


「もちろんあるよ! ほら、これとこれを着てみてよ!」


 黒い仮面に黒いコート、凄いな見事な真っ黒だ。

 今着てる服の上に着る形でいいんだよな? 試着を終えると。二人はもうビルの端に立っていた。


「お待たせしましたー」


「あら中々似合ってるわね」


「ふぉぉぉ!いいねぇ! 二人は漆黒と純白! これはかっこいいよぉ!」


「落ち着きなさい」


 前と同じようにパシーンと軽い音が響く。

 おほんっと咳をして注目を集める。


「屋上から入るとして結局どうやって入るんだ?」

 まずこの位置から屋上まで直線距離で50m以上は離れている。


「私から説明しよう!」


 そう言って香織は懐から先に針が付いた鉄製の銃を取りだした。


「なるほど、この銃でビルの前の人を全滅させるのか?」


「考え方が野蛮すぎるよ! これはフックショットだよ!」


 フックショットって壁とかに突き刺して使うやつだよな、そうなると音とかは大丈夫なのか? 壁とかに射し込むはずだからかなり大きい音がないそうだけど。それは聞いてみた方がいいな。


「どうやって使う気なのかを先ずは教えて欲しい」


「へ?単純にビルに打ち込むけど?」


 予想と同じだった!?


「刺さった音とかでバレたりしないのか?」


「刺すと言ったけどこのフックショットは私が作り出した道具よ」


 大野さんが会話に入り込んできた。作ったって普通にすごいな…


「このフックショットの先が壁に当たると展開し4つの脚で壁に食い込むのよ、しかも非常に鋭利だから壁にするりと刺さるわ」


 確かに音は小さそうだけど何その殺人兵器。


「後は自動で巻き取ってくれるから安心なさい。溝口くんの分もあるから頑張ってね」


 マジで怖い。こんなアクション俳優みたいなことは生まれてこの方やったことないし、どうすればいいんだ…。


「もしかして怖い?」と香織が話しかけてきた


「当たり前だ。怖すぎて小便チビりそう」


「あはは、先に私がやるから見ておいてよ」


 そう言って香織はフックショットを構えて屋上の出入口部分の壁に打ち込んだ。確かに音は少ないなと考えた瞬間、凄い速度で巻き取られていく姿を見た…


「次はあなたの番よ」


「むりむりむりむりむりむりむり!」

 全力で応答するしかない


「なら仕方ないわね。この手榴弾の風圧で飛ぶしか」


「やらせていただきます!」


 何であの人手榴弾なんか持ってんの? てか飛ぶ前に俺が爆散するわ。いや今は考えるだけ無駄か、とりあえずゆっくり狙い定めて····いけ!


 放射線を描いで棒は飛んでいった。そして壁に当たった。次の瞬間、凄い速度で飛んだ…壁に当たって死ぬ!と思ったが銃の後ろ部分からエアバックが作動した。

 まさかエアバックが搭載されているとは…


「初めてなのによく成功できたね!」


「いや失敗したら、もうこの世にはいないぞ?」


 失敗=死だ。


「それにエアバックも作動するなんて運がいいね!」


「運がいいとはなんだ運がいいとは」


「私の時は作動しなかったから!」


「お前はなんで無事なんだ?」


 化け物じみた体に、俺は驚きを隠せなかった。

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