第7話 作戦会議

「そういえば今回盗んだお金はどうするんだ?」


「そうだね。一部は貰って余った分を闇金に騙された人に返そうかなって思ってるよ」


 そんな簡単に返せるものなのか?と思ったが、「私が闇金のターゲットとなった人たちをピックアップしておいたわ」って? さすがです姉御!

 それにしても、これほど用意周到だとなぁ。


「その…改めて聞きたいんですけど、俺って何の為に雇われたんですか? 別に今更辞めたいとかじゃないですけど、俺が居なくても上手く回るような気がするんですよ」


 その言葉を聞くと、大野さんはあっけからんとした顔で、口にした。


「凄く簡単なことよ。妹のストッパーになって欲しいのよ」


「見張り的な感じですか?」


「見て分かる通り香織はポンコツでね。頭を使うことが苦手なのよ」


 何で頭を使うことが苦手で怪盗をできてんだよと思ったが、多分大野さんが指示をしているのだろうと勝手に納得できた。


「普段は私が指示を出してるんだけどね」


 思った通りだったー!


「どうしても目で見れない所はね…ほら、ニュースでも見たでしょう? 宝石を砕いて孤児院に送ったって

 あの宝石をコレクターに売れば、借金返済まで大きく前進できたのよ。でも砕けた結果、欠片を殆ど無くしてしまうなんて····本当に何をやってるのかしら」


 愚痴が止まらないな、香織の口から魂が飛び出してるぞ。


「香織、大丈夫か?」


「ワタシ八ポンコツ…」


 ダメだ故障しているようだ。壊れてしまった香織は置いといて。


「それでゴルド社に盗みにはいる時、俺は何をすればいいんですか?」


「実際に現場で覚えるって形でどうかしら?」


 なるほど、現場で覚えるのか…確かにそれが一番いいかもな。知識だけじゃいざという時に失敗してしまうし、いやでもいきなり現場か、それはそれで怖いな。


「それなら日時を教えてください」


「今夜よ」


 ん?なんて?


「今聞き間違えたかもしれないんで、もう少し分かりやすく噛み砕いて教えてもらってもいいですか?」


「今夜の22時にゴルド社の付近にあるサマーズビルの屋上よ」


 ふーん今夜ね…

 え…!?


「まさかの知識もないままで現場体験!? 現場で学ぶのは了承しましたけど。右も左も分からないままなんですけど!?」


「大丈夫!私が付いてるよ!」


 いつの間にか復活してたんだな、というかそれも心配事の一つなんだけどな!


「せめて罪は軽くしてくださいね」


「何で捕まる前提なのよ?」


 だって俺は運動があまり得意じゃない。成績だって、どれだけ真面目にしても3が限界なくらいだ。


「安心して! もし捕まったとしても、お姉ちゃんが何とかしてくれるから」


「そうよ。あなたはまだ初犯だから罪が軽くなるわ」


 失敗したら捕まることは確定なんですね。



 〇



 時刻は回って今は19時だ。あの後、近くの公園に降ろしてもらって家まで帰ってきた。問題は親にどう言って出るかだな、こんな時間に出歩くなんてとか怒られそうだな


「ただいまー」


「おかえりなさい! 今日は遅かったわね」


「友達と遊んでた」


 嘘ではない。


「それならよかったわ〜 今日の夕食は晶の大好きなオムライスよ!」


 やったね。俺は無類オムライス好きだからな、もちろん卵はふわふわより硬めだ。ってそんなことはどうでもいい、とりあえず夜に出ることを伝えないと


「オムライス楽しみ、それとちょっと夜出かけてもいいかな?」


「夜?何時ぐらいかしら」


「ちょっと遅いけど21時ぐらいかな、友達の家に泊まる可能性もあるから帰ってくる時間は未定かも」


「あら、もしかして麻耶ちゃんの家かしら? 今日はもしかしてお赤飯の方が良かった!?」


 早とちりしすぎだし 、なぜ女子の家に泊まることになる!?


「違う。俺の数少ない友達の一人の岸本の家」


「今とても悲しい言葉が引っ付いてたわね…分かったわ! 岸本くんによろしくと言っといてね」


 パパにも伝えないとと連絡をしている母を背に、岸本に電話をかける


「もしもし」


『おーす、どうしたー?』


「悪いんだけどさ、今夜もし俺の母親から電話が来たら、一緒にいることにしてくれないか? 寝ていることにしてくれたら助かる」


『随分めんどくさいことを頼むな、また今度、飯でも奢れよ。それなら俺も頑張ってやるぜ!』


「好きなものを食わしてやるよ」


『契約完了だな、ちなみにどこに行く予定なんだ? 母親に言えない場所なのか? まさか…!夜の街なのか!? 今日大人の階段を「晶いるー?」上るんだな! みんなに伝えて「晶いる?」おいてや「母さんが来たから切るすまん!」るからな!』


 ってちょっと待って、あいつ最後になんて言おうとした? 思い出せ… 思い出せ…確か『大人の階段を上るんだよな!みんなに伝えておいてやるからな!』だったか…やべえぞあの野郎!


 とりあえずメールで


『みんなに言ったら殺す。あと、そういうのじゃねぇよ!』


 すぐに返信がきた。早いなあいつ

 内容は『分かったw まあデートを楽しんでこいよ』と書かれていた。

 訂正したらしたで『必死で草』とか送ってきそうだし無視する。

 とりあえず準備をしてから出るか、最寄りの駅から行けば 、そこまで時間はかからないだろうし。

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