第6話 怪盗になりませんか?
変な目で見られつつも、パトカーの中へ。
「ごめんなさい! 変な所から呼んじゃって!」
「変な所って失礼ね」
変なコントをしている二人は置いて、気になったことを聞く。
「どうして、俺を呼んだんですか? あの時、香織が大野さんに何か話していましたよね? それが原因で呼ばれた気がするんですが」
「正解よ、賢い子は嫌いじゃないわ」
仕事上は敬語だったけど、今は敬語を辞めるわねと語る。
「単刀直入に言うわ。彼女の相棒として怪盗をしてくれない?」
「警察官のあなたも一枚噛んでるんですね。ですが、彼女にも言いましたが無理です」
「それは何故かしら?」
「犯罪だからです」
そうだ犯罪だからだ。俺はいい大学に入って、それなりの人生を送って、平凡な暮らしをしたいんだ。だからこの提案には乗っかれない。
「それは本心かしら?」
「本心です」
「あらそうなの? でもあなた笑ってるわよ」
笑ってる····? 困惑気味の香織に目を向けると。
「本当に笑ってますよ」
本心····俺は勉強が好きな訳では無いが、毎日復習や予習をしていい点数を取ってきた。運動も正直にいうと苦手だが、努力をしっかりして良い成績を残している。ひねくれてはいるが品行方正を貫いて生きてきたんだ····。
でも、本当にそれでいいのだろうか? 今この手を取れば、新しい日常へ飛び込める。退屈な人生が変わるんじゃないかと期待をしてしまう。
「俺が入るという事はいったん別として、一つだけ聞きたいことがあります」
「何かしら?」
「目的を聞かせて欲しいです」
「目的?」
怪訝な目で俺を見つめるが、俺からしてもそうだ。目的が分からない。何のために物を盗む? なぜ他の誰かに渡す?
「まず一つ目は物を盗む理由です」
「そうね理由は簡単よ」
そこで語られたのは借金があることだった。両親が多額の借金を作って蒸発し、それを返済するためには妹と自分が身売りをしなければいけない程の状況だったらしい、ただ、これだと矛盾が生じる。
「なぜ借金を返さなきゃいけないのに他人に盗品を渡すんですか?」
「それは…」
言葉に詰まった。複雑な事情があるのか?
「えーとね」
香織が話すのか?
「その私が渡したいと思ってるから…です」
「え?」
何を言ってるんだこいつは?
「もちろん月に払う借金の分は払えるように計算してるよ! でも、貧しい人を救えるのは私しか居ないって思ってしまって…」
力無く笑う彼女に対して俺は傲慢だと思った。でも、彼女のおかげで救えた命もあったはずだと同時に思えた。
「分かった手伝うよ」
「えっ!いいんですか? 犯罪者の仲間入りですよ。証拠が上がるのが怖くて夜しか眠れませんよ」
夜眠れたら十分だと思うが。
「乗りかかった船だしな、それに面白そうって思ったから」
退屈で平凡だった人生は終わりを告げる。
「本当に良かったわ! もし断ってたら怪盗の内通者として逮捕するところだったわ!」
「え!?」
今のこの人なんて言った? 逮捕するって言った? 断ったら終わってたじゃん····危な!? もう、この人には尊敬の念を捨てるか。
「大野それは酷いって」
「あれ!? 急に敬語じゃなくなったわ!」
そのやり取りを見て笑う香織と楽しそうにしている大野を見て、少し怪盗の仲間になってよかったと思った。
「コードネームは何にする?」
私も敬語はやめるねと言いながら、少し興奮気味の香織が話しかけてきた。
「香織のコードネームは何なんだ?」
「私? 私はねコードネーム:シロだ。」
また始まったと頭を抱える大野さんに助けを求めるように見る
「付き合ってあげて」
厨二病なのか····だがしかし、俺も負けてはいない。
「じゃあ俺のコードネームはクロだな、黒い画面を付けりゃお揃いだな。」
「ふぉぉぉ! かっこいぃぃぃ!!!」
ごめん俺の負けだ、この子はヤバいかもしれない。
「全く…帰ってきなさい!」
スパーンッ! といい音がパトカーの中で響いて「ごめんなさい」と香織が恥ずかしそうにしている。
取り敢えず、この空気を変えるため。
「そういや犯行予告をしていたよな? ゴルド社がどこか忘れたけど。」
「えーとね、ゴルド社は金融会社でそれも闇金に近いんだ。」
闇金? でも、ゴルド社はかなり大手の企業だ。闇金なんてしてたら警察がすぐに動くし、何より評判がダメになるだろう。
「もちろん、大手の企業だから大丈夫だと思うわよね」
どうやら大野さんが説明してくれるらしい。
「簡単に言うと人を選んでるのよ。返せない人と返せる人を、返せる人には自分たちの会社が貸して返せない人は断る。そして断ると同時にここなら貸してくれると闇金を紹介する。」
後は分かるわよねと彼女は言った。
なるほどな、紹介料を貰っているというわけか…仮にそうだとしたらかなりの悪者だぞ。
「今回のターゲットの話を聞く感じだと普段から盗みをしているのは悪人のみなのか?」
「うん! そうだよ! お姉ちゃんは汚職警官だから裏とのやり取りとかもあるんだよ。」
「誰が汚職警官だって?」
冗談だよって、泣きそうになるなら言うなよ。ていうか本当に裏との取引とかあるのかよと、怪しむような目で見ていると。
「ちなみに裏の情報があるのは本当よ。」
「先程は無礼を申し訳ありませんでした」
こうとしか俺には言えなかった。
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