第5話 不良少女
「無いんですか!? 一世を風靡する怪盗ですよ。あなたみたいな人でもモテますよ!」
あなたみたいとは何だ!? 興味が無いというよりも、半信半疑の方が大きい。まず仮に怪盗だとしても、ポンコツすぎないか? 自分から正体を明かしたぞこいつ。
「とりあえず一緒に来てください!」
「ちょっ!?」
力つよ! 男子高校生を普通は引っ張れるのか? あと、「呼び方は香織でいいって?」今言うかそれ!?
「分かった! 一緒に行くから手を離してくれ」
「それならいいですよ。お姉ちゃんのところに行きましょう!」
来た道を帰っていく。あれ?何かを忘れているような。あっ、葛木達のことを忘れてた。まあいいか、どうせ俺には止められない運命だったからな
「お姉ちゃん!」
さっきの場所に戻ると、警察官について説明している大野さんとさっきまで隣にいた女子の丘咲寝子(おかざき ねこ)が真剣な表情で説明を聞いていた。
遠くから歩いてくる俺たちに気づいて、よく通る声で呼ぶ。
「香織? 一体どうしたのよ?」
「これ忘れもの!」
そう言って取りだしたのはお弁当箱だった。
「ありがとう香織、もう少しでコイツに食堂で何か奢ってもらうかもしれなかったわ」
おい、隣の職員がとんでもない表情でびっくりしていたぞ、あっ、ホッとして胸を撫で下ろした。
「君は確か…さっきの不良達を連れ戻しに行ってくれた子ですね?」
「実は…」
さっきまであった出来事を、香織と一緒に説明した。
「なるほど…私の妹を助けてくれてありがとうございます」
「いえいえ! そんな当たり前のことをしただけです」
「ふーん…」
え、なに? 丘咲さん超見てくるじゃん。
「ねえ」
「あ、えと… なんすか?」
「正義感強いんだね。勘違いしてた」
「勘違い?」
勘違いってなんだ? 俺と丘咲さんに関わりなんてなかったはずだけど。
「ほら毒島がさ、あんたのことを悪く言ってたんだ。女の子を食い物にしてるとか色々とね」
マジかよ····
「俺に友達ができないのは、悪い噂のせいか?」
「結構広まってるし、割と関係あるかもね」
やべ 、口に出てたわ。てか広まってるのか…! ん? 香織さん静かだな。何して…って、大野さんに耳打ちしてるぞ、何の話をしてるんだ? 怪盗の件か? でも大野さんは警察官だし、バレたら不味い人には言わないか?
「えっと君の名前は確か…」
プリントを取り出して確認する。
「溝口晶くんですね。この後、用事とかはありますか? 溝口くんは説明を聞けていないので、時間がありましたら、この後お話をしたいのですが」
何だろう。少し裏がありそうな気がするんだが。
チョンチョンと丘咲さんが服の裾を引っ張ってくるぞ、何だこの人可愛いな。
「どうしたんだ?」
「話聞いときなよ。あんたも警察官になりたいんでしょ?」
「あんたもってことは…」
「うん。私は警察官になりたい」
見学先は毒島が決めたと言っていたが、一応話し合いもあったのかな?
「えと… どうすんの?」
「そうだな、聞いていこうかな」
そう言うと大野さんが手を叩いた。
「よかったです! それでは、後は見学だけですけど、それが終わったら一旦学校に帰ってもらって、その後に車で学校まで迎えに行きますね」
隣の職員に上司に、そう伝えてと言うと妹を連れて他の場所に歩いていった。
暫くすると見学を担当してくれる別の職員がきて。
見学を終えバスに戻る事となった。
「葛木達はどこにいるんですか?」
とバスの運転手に聞くと答えてくれた。
「君らの班の人なら先に帰るって言いに来たので、学校まで送り届けましたよ」
かなりの自由人だな、まあボコボコにされるのが、今から放課後になっただけマシか。
「私、寝るからおやすみ」
「ああ… おやすみ?」
「何で疑問形?」
そういって少し笑って、丘咲は眠りについた。
それから香織に言われた怪盗のことについて考えているうちに、学校に到着した。
〇
「おう、おかえり、ん? 葛木と毒島はどうした?」
教室に着くと先生から二人のことを聞かれた。
「先にバスで学校に帰ったと聞きましたけど」
勝手に帰ったのか? と先生が少し怒っていると、他の生徒もポツポツと帰ってき始めた。
「よう晶!」
岸本が帰ってきたらしい。
「よう」
「警察署はどうだった? 俺の所は牛丼のチェーン店だったから昼飯に牛丼を食べれたぜ」
羨ましいなこいつ。
「俺は普通に社員食堂で食べたな」
「こいつ可愛い子と知り合いになってたよ」
何でそんなことを言うんだい、丘咲さん?
「なっ!お前は羨ましい野郎だな! 山口にチクッといてやる!」
「何であいつの名前が出るだよ!」
「てか、何か丘咲ちゃんと晶も距離が近くなった感じ?」
「同じ夢を持った同士だからね」
無い胸を張るなよ。あれ、背筋が寒くなって····
「なんか言った?」
「何も言ってません」
エスパーかよ、でも今のは俺が悪いな····そんな他愛の無い話をして時間を潰していると。
「まだ帰っていない生徒もいるが、下校時間になったし、自由解散だ」
先生がそう言うと残った生徒達が喜んで帰る準備を始めた。
「なあ晶、一緒に帰らねえ?」
「あー、悪い」
向こうであった出来事を怪盗の部分は濁して岸本に伝えた。
「そっか、てか美人さんなんだろ? その警察官の人」
「確かに綺麗な人だったな」
俺がそう言うと、ニヤけた顔をして問題を起こすなよーと言い変なジェスチャーをしながら教室を出ていった。
「起こさねぇよ!」とつい叫んでしまい。周りの視線が集まったが、俺は悪くないはずだ。
「とりあえず校門の前で待っていたらいいのか?」
そう呟いて校門まで向かうと、もう待っていた。そりゃもう目立つパトカーに乗って。
「あっ!溝口くーん! 迎えに来たよー!」
なぜ香織が乗っているんだ? 後、パトカーの中から叫ぶのやめてくれ…! 周りの人から変な目で見られてるから
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