第4話 出会い
綺麗な金髪の女性は大野優子(おおの ゆうこ)という名前らしい。陽キャたちが必死に名前を聞いていたので耳に残っている。
というか、陽キャたちよ、もしかしてポスターで決めたろ? そう、この警察署の募集ポスターに映っているのは大野さんである。
「電話番号とか教えてくださいよー!」
「勤務中ですので」
「じゃあ勤務が終わったらいいのか?」
と詰め寄る葛木。
やめておけ、明らかに怒っているから。青筋が目に見えるほど浮かんでいるから。というか葛木の奴、昔はそんなキャラじゃなかっただろ!
「いい加減にしてください! 今は授業の一環だと聞いていますよ。静かに話を聞いて帰る。それだけを守ってください!」
「ちっ… 何だよ」
「龍斗!どこに行くんだよ!」
葛木の取り巻きである毒島文夫(ぶすじま ふみお)が止めようとする。
「ここにいてもうぜぇだけだし、外に出るんだよ」
「俺も着いていくぜ!」
嘘だろ? さすがに出ていく振りだよな? って本当に出ていきやがった!? 隣の女子も出ていったら俺一人になるぞ····
「なに?」
「えっ?あっ… いや何でもないけど」
やばい目が合った。
「用がないならこっち見ないでよ」
すいません····
「てか、あの二人ほんとに信じられないんだけど」
隣の女子が小さな声で呟くのが聞こえる。もしかして、この子は真面目に職場体験したかったりするのか?
「ちょっとダメですよ大野さん! 相手は高校生ですよ!」
「高校生だからなによ。ここには見学に来てるんでしょ? 生半可な気持ちで来ていい場所じゃないから」
その通りだ。俺もここに来たのは偶然だが、どこに行ったとしても将来に役立つために学ぶことが多いはずだ。「確かにそうですが…」と止めに来た職員の人も苦笑いしているし、実際にあの二人の行いは間違っているとしか言えない。
「あの?もしよかったらですけど。さっきの二人を探してきてくれませんか? 同じ男の子だし多分友人ですよね?」
「え? 俺がですか?」
まさかの言葉に困惑する。むしろは仲は最悪だと言えるが····俺は縋るように隣の女の子をチラッと見る。あっ! 目を逸らしやがった! なら仕方がないか。
「えっと、あまり期待はしないでくださいね」
一応予防線だけは張っておく。
「よかった。それじゃあ、お願いしますね」
〇
「あいつらどこに行ったんだ?」
この警察署の中にいればいいなと思い歩いていると
「いい加減にしてください!」と大きな声が聞こえてきた。
「警察署の中で事件か?」と思い近づいていくと
「いいじゃん!ちょっとぐらい遊ぼうぜ!」
「本当にいい加減にしてください! 私はお姉ちゃんに届け物をしに来ただけです!」
金髪に青い目をした美少女が葛木達にナンパされているのが見えた。
「届けに来ただけなら、その後暇だろ? それまで待つからカラオケとか行こうよ」
「嫌です!どいてください!!」
おいおいマジか、ここは一応外だがまだ警察署の敷地だぞ? というか葛木の野郎、あのままだと手とかも掴みそうだぞ····さすがに不味いと思った俺は咄嗟に「暴漢がいます!」と叫んだ。
すると俺に気づいたのか睨みつけるような顔で逃げていった。やばい、このあと絶対に殺されると思いつつ俺もこの場を後にしようとする。
「待ってください!」
と声がかけられた。びっくりして逃げようとするが
捕まった…? え? あの場所から10mは離れていたよね? 一瞬で距離を詰められたのか。
「助けてくれてありがとうございます!」
「俺が助けなくても、多分ほかの職員が助けてくれていたと思うわよ」
びっくりして、ちょっと変な口調になってしまった。
「それでもありがとうございます!」
眩しい! すっごい眩しい笑顔だ! あまりに恥ずかしすぎて目を逸らすと、ベンチに置かれている新聞が目に入った。
『盗まれた宝石 砕かれて孤児院に』
目を逸らした位置に、たまたまあったからか、気になったのかと勘違いし、彼女に話しかけられた。
「このニュースが気になるんですか? ちなみに私の名前は大野香織(おおの かおり)です!」
「いや…えっと気になるには気になるけど、あと俺の名前は溝口晶(みぞぐち あきら)です」
「晶さんですね!」
いきなり下の名前だと? かなりのやり手だな····
「この怪盗はかっこいいですよね! 孤児院に寄付なんて普通はできないですよ 。まさしく正義の怪盗です!」
「孤児院に寄付って言っても、盗んで得た物に変わりはないと思うから悪人でしょ」
やべ···· 昔からの悪い癖だ。他人の意見を真っ向から否定してしまう 。もう少しやんわり言えたら良かったのに····
「へー···· そ、そうですか? そういう考え方もできますよね。まあ、世間から見たら正義ですけど、さてはあなた捻くれてますね?」
こいつ…! 急に煽ってきやがった····! 俺もいきなり否定したのは悪いと思うけど。さっきまでの丁寧さはどこに行ったんだよ!
「いやいや、ひねくれてるも何も泥棒って犯罪だから、どんなに綺麗なことやってもダメなことはダメでしょ? 君あまり法律とか詳しくないタイプかな?」
「はー!? 何ですかあなた! ぶちのめしますよ! 孤児院に寄付ですよ? 素晴らしいことですよ! それを否定するなんて、あなたは人の心がないんですか!?」
「本性がでてきたね!? てか宝石を砕いて配ったとか言ってるけど、もしかして間違って砕いたんじゃない? だって塊の方が価値が高いだろうしな! あれだポンコツだポンコツ怪盗だ!」
ヒートアップしていく口論の中で、目の前の女がとんでもないことを口走った。
「ポンコツ怪盗って! 私のことをバカにしてるんですか!? あ…」
今この人「あ…」って言わなかったか?
「いや…別にあれですよ。私は怪盗ではないですよ
そんな訳無いですけど、まあ、私の好きなものをバカにされて、腹が立った的な感じなんですけど。何ですかその目は?」
普通に見てるだけだが。
「さては疑ってますね。いやその目は確信を得たような感じがします」
なんの確信だよ! 叫びたち気持ちもあったが我慢する。 というか急に静かになったな。何か喋ってるぞ?耳を澄まして、よく聞いてみると。
「私の正体を見破った? つまりは優秀な人材ってことだよね。お姉ちゃんが言ってたわ、優秀な仲間を作れって、つまりこの人が優秀な人材ってこと…!」
ごめん、何言ってるか全然分からない
「その怪盗に興味はありませんか?」
いえ、無いです。
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