第6話 決戦の時

ミナとカイの前には巨大な石柱が立ち並ぶ光景が広がった。

場所はストーンヘンジを思わせるような不思議な草原で、その中心には不思議な光の中で蹲っている王女様の姿があった。


「見て、ミナ。あそこに王女様がいる。」


ミナの目はその方向に釘付けとなり、王女様の苦悩に満ちた表情を捉えた。


「助けなきゃ」


少し離れたところに、杖を握りしめ、何かに祈るかのような表情を浮かべる人影がある。


「ミナ、あれが魔術師ヴォルグレンだ。

 目的はヤツを止めること。

 そして王女を助けること。

 僕とミナが一緒に出ていくと二人ともロープで縛りつけられることになる。

 残念ながら、その時僕は、ミナと話ができない状態になる。」


カイが悔しそうに固い声で言った。


「私に任せて!」


ミナは深呼吸をして、前を見つめた。

一瞬目を閉じて、「カッ」っと目を見開く。


カイは、ミナが、戦闘モードに入ったことを悟った。


(ターンニングポイント)






その視線の先には、力を解き放とうとするヴォルグレンの姿がある。

その時、ヴォルグレンが動き始めた。

王女様はさらに苦しみを増した。


ミナは足音を立てず静かにヴォルグレンに近寄っていく。


「近寄るな!」

「何をしているの?」

「私のやることに口を挟むな。お前のような子供には関係ない。」


しかし、ミナはそれに怯むことない、


「ある!王女様を助ける!」


ヴォルグレンは悪態をつきながらも、その剣気からは冷たい決意が滲み出ていた。


「それなら、お前が止められるか試してみるといい。」


ヴォルグレンは魔法の杖をミナに向けた。

ミナはその構えを見て、剣を両手でしっかりと握り、正面に構える。









戦闘が始まる。


ヴォルグレンが先手を取り、手に持つ杖から「黒炎」を放つ。

暗黒の炎がミナに向かって渦巻き、猛烈な熱を放っていた。

しかし、ミナは果敢に前に進み、「斬魔剣」で「黒炎」を切り裂く。

剣の斬撃は「黒炎」を散らし、火花が飛び散る。


ヴォルグレンは再度攻撃を仕掛け、「影の手」を具現化させる。

数多の影が地面から這い上がり、ミナを捕らえようとした。

だが、ミナは「横斬り」で「斬魔剣」を放つ。

その力強い斬撃は影を粉々に切り裂き、自由を奪われることはなかった。


続けざまにヴォルグレンは、杖を振りかぶってミナに杖を叩きつける。

しかし、ミナは「切り返し」で杖を受け止める。

勢いを利用し、剣を振り下ろし、ヴォルグレンにダメージを与えた。


しかし、ヴォルグレンはまた立ち上がり、再び攻撃を仕掛ける。

攻撃は厳しく、ミナも決して楽な状況ではない。


戦闘は激しさを増し、ミナとヴォルグレンは力を尽くして互いに攻撃を仕掛けていた。


ミナの攻撃は繰り返しヴォルグレンを押し返すが、魔術の力は強大で、ミナの力では対抗しにくい。


ヴォルグレンは再び「黒炎」を放つ。

今度は一つではなく、複数の「黒炎」がミナに向かって飛んできた。

ミナは一つ一つを切り裂くが、それにより体力が徐々に消耗していった。


続けざまにヴォルグレンは「影の手」を再び具現化させ、ミナを捕らえようとする。

ミナは「斬魔剣」で影を切り裂くが、今度は数が多すぎてすべてを撃退するのは困難だった。

何本かの影がミナの足元に絡みつき、動きを遅くさせてしまう。


その隙をついてヴォルグレンは「暗黒の矢」を放つ。

ミナは反撃しようとするも、動きが鈍ったことで矢を避けるのが遅れてしまう。


ミナは胸元に深い一撃を受け、そのダメージで後ろに転び落ちた。

ミナは倒れ込むことなく、立ち上がり、剣を握りしめる。


だが、その顔には明らかに疲労と痛みが浮かんでいた。

ヴォルグレンが有利になっていることは明らかだった。


ヴォルグレンは杖を振り上げると、そこから黒いロープが飛び出しミナの身体に絡みつく。

剣を振るうことすらできないミナは、動きを完全に封じられてしまった。


「思った以上にやるな。おまえも、材料にしてやる。」


ヴォルグレンの口元に満足げな笑みが浮かぶ。

一方、ミナは挫折と屈辱に満ちた目でヴォルグレンを見つめ、抵抗の意志を見せていた。

しかし、体を自由にすることはできない。


ヴォルグレンは、カイのいる方向を見た。


「そこに怯え隠れている弱者よ。おまえも出てこい。」


カイとミナは背中合わせでロープで拘束されたのであった。


ミナの心には悔しさが広がり、ミナの目には決して屈服しない闘志が宿っていた。






ヴォルグレンの力は強大すぎた。

重たい沈黙が降りた。

ロープで縛られた両手と身体が痛みを訴え、特にミナの表情は激しく歪んでいた。


「負けた。負けた!負けた!!くぅ〜。むぅ〜・・・」


ミナはしばらく言葉にならない言葉を叫んでいた。

しばらくして静かにつぶやいた。


「どうして負けたんだ。」


ミナの声はただ一つの問いに尽きる。


その瞳は、まるで内に秘めた炎が灯るかのように激しく燃えていた。

カイは静かにその様子を感じていた。

カイの視線は冷静だった。

二人の間には言葉が必要ない、深い絆が存在していた。


ミナは静かに目を閉じた。

頭の中では戦いが再び繰り広げられていた。


あの一撃、あの動き、全てを再現し、何が間違っていたのか、何が足りなかったのかを探し求めていた。


しかし、どれだけ考えても答えは見つからない。

全てが無駄だったのかという絶望感がミナを襲った。


「だめだ。どうやっても勝てない。」


しばらくしてミナがつぶやいた。


「もしかしたら…」


ミナの声が一段と低く、しかし確かな決意が混ざっていた。

カイはミナの言葉に心を傾けた。


「まず、奇襲をかける。」


ミナの目には新たな闘志が灯った。


「そして、下段からの構えから戦闘を始めて・・・

 この内容を過去の私へ伝えて」


ミナの言葉は明確で、決意に満ちていた。

カイは、その内容を頭に叩き込んだ。

ミナの指示に応えることが、カイにできる唯一の道だ。

そして、カイはミナの勇気と決意を見て、カイ自身も勇気を持つことができた。


「了解、ミナ。任せてくれ!」


カイは、自信に満ちた声で答えた。

カイの目は希望に満ちており、ミナに対する絶対的な信頼がここにあった。


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