第11話 お泊まり 前編
葉月と強制的に付き合う事になってから数日が
経った。そして私は今、葉月の家の前に立ち尽くし
ていた。彼女との約束通り日曜日遊ぶ事になったの
だが、遊ぶ場所は葉月の家だった。私はパンパンになっているリュックを背負って、右手には学校の鞄を握り締めていた。うん、ついでに言うとお泊まり会でもある。
そう考えるだけで私は既に帰りたい気持ちでいっぱいになった。
うん!やっぱり帰ろう!今からでも遅くないはず、、
仮病でもなんでも使って、来れないって連絡しょう!
そう決めて引き返そうとしたその時、ビックリして悲鳴を上げそうになった。インターフォンから彼女の声が聞こえてきたからだ。
「葵、さっきから何してるの?早く上がってよ?
ドア開けてるから」催促された。
「あ、う、うん。お邪魔します」
リビングに着くと甘い香りが漂っていた。
キッチンの方にエプロン姿の葉月がいた。
私に気付くと満面な笑顔を見せた。
私は思わず見惚れた。あれ葉月ってこんな可愛かったんだっけ?昔からモテている事を知ってたけど彼女は幼馴染みだからまじまじと顔をあんまり見ていなかった。あと一年間会えなかったから?、、、うん!それしかないよね。
「葵、いらっしゃい!ちょっと待っててね?
葵の好きなビスケットがもうすぐ出来上がるから
ね!」かなり上機嫌に見える。
「う、うん。ありがとう」
私は大人しくソファに座った。
辺りを見渡すと一年前と変わらない風景だった。
緊張するけど妙に落ち着く。
私は目を瞑った。
「葵、眠いの?」耳元で問いかけられて、飛び上がった。
「ば、馬鹿。びっくりさせないでよ!」彼女を睨む。
私は最近変に葉月の事を意識してしまう。
特に不意に近付かれると警戒してしまう自分がいる。
「ふふふっ、そんな警戒しないで?安心して今はまだ何もしないから」楽しそうに彼女は笑う。
「い、今はって後から変な事をするつもりなの?」
恐る恐る彼女に尋ねる。
「私達はもう付き合ってるのだから何したってよくない?」にこにこで言う。
「うっ、、き、キス以上の事をしたらマジで怒るからね!?」
「キス以上な事って何?」
「き、キス以上はキス以上よ!わかってるくせに
聞かないでよ!」彼女をきーっと睨む。
「うん、ちゃんと分かってるよ?葵が可愛くて
意地悪したくなっちゃったの。ごめんね?」
彼女は私の目の前に来て跪き同じ目線になると
顎を引かれ軽い口付けをされた。
「キス以上の事もちゃんとするよ?葵には拒否権なんてないからね?」彼女は小悪魔のように笑う。
「 • • • • • • • 」
「葵、眠いでしょう?少し寝たら?
私の部屋覚えてる?パジャマも置いてるから
着替えてて、今日はお家デートだから」
甘くて、優しい声で耳元で囁く。距離が近過ぎて
甘いシャンプーの香りがして、余計にドキドキす
る。
「わ、わかった!おやすみ!」
私は逃げるように2階へと向かった。
葉月の部屋の中に入ると当たり前だけど彼女の匂いで
いっぱいだった。最近変な事ばかりされるから嫌でも意識してしまう自分がいる。部屋から逃げたくなったが葉月のいるリビングより今はこっちの方が安全だと思い、諦めてベッドの上にあるパジャマに着替え、ベッドへ横になった。
昨日の夜は葉月とどうやって別れるか考えていたらいつの間にか朝になっていた。寝不足という事もあって
瞼が重たい。私は目を瞑り意識を手放した。
好きの先へ ユア @nakaakari3
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。好きの先への最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます