第8話 風邪で修羅場に!? 前編

 映画館の後たまたま幼馴染の葉月と会って、

 連絡交換してから毎日電話がかかってくるように

 なった。

 大体夜の20時頃に確認のラインがくるのだ。

 

 毎日毎日私がベッドに横になるであろう時間に

 電話してくなんて、あいつはどんだけ暇なんだよっ

 て思う。カップルかってね


 そして今リビングで寛いでいると電話が鳴り響い

 た。


「最近毎日誰かと電話してるみたいだけど、あんた彼氏でも出来たの?」部屋に戻ろうとした私に母が聞いてくる


「違うよー、友達、友達」と言い私は母を見る。

 母の横にもの凄い顔で睨んでくる妹。


 こ、怖いんですけど!


「ふうん、そう?やる時はちゃんとコンドムつけるんだよー?」と母は言う。


「な、何言ってるのよ。ただの女友達なんだってば!

 おやすみ!」ニヤニヤしてる母と不機嫌な妹をリビングに残し、自室に向かった。


もうー、お母さんの馬鹿!娘の気も知らないで

勝手に変な事言う。わ、私だって好きな人と付き合えるんならとっくに付き合ってわ!き、キスだって、

恥ずかしいけど、あの子としたいよ、、

はあ、お母さんの所為で気分最悪。

 

そんな事考えてる間にも携帯はブーブーと鳴る。

仕方なく出ると何故か怒ってる幼馴染。


「葵!遅い!早く出てよ!」


「うるさいなー。お前は私の彼女か」


「. . . . . . か、彼女」


明らかに動揺してる幼馴染に私は何故か恥ずかしくなった。葉月には普通冗談で言ったのだけど、現に今私は女の子を好きになってると思うと変な気持ちになる。葉月もやっぱり気持ち悪いとか思うのかなあ、、


「葉月の馬鹿!何動揺してんのよ。冗談に決まってんじゃん」私は乾いた声で笑う


「そ、そう、、だよね」


妙に重くなった空気が嫌で私は話題を変える。


「で?今日は何の電話ー?」

 私はベッドで勢いよく倒れて、目を瞑って

 葉月に問いかける


「うーん、葵の声が聞きたかっただけだよー?」

 


「そう〜ですかー。もう聞いたから切っていい?」

 冗談で言ってみた。


「うん。わかった」

 素直に受け入れられて逆に驚く。


「珍しいね。いつもならえー嫌だ。寝落ち電話しょう?って言ってくるのに」


「うん、今日もそのつもりだったんだけど

 葵の声がいつもと違うから早めに寝た方が良い

 と思って」


「うん?いつも通りだけど?」


「ううん、違うよ?だから今日は

 電話切ったら寝るんだよ?わかった?」

 優しい声で葉月は言う。


「はいはい。大体葉月から電話掛かってなければ

 私は毎日早寝なんですけどねー」

 嫌味っぽく言ってみた。


「ふふっ、葵は相変わらずお子ちゃまだね」


「う、うるさいな!寝ても寝ても寝たりないんだから

 仕方ないじゃん。もう寝るから切るよ?」


「うん。じゃあ明日ね」


げっ!コイツまた明日電話してくるの?

まあ、いっかあ


「わかった〜、おやすみ」


「葵、おやすみなさい」

 

 私は電話切り、枕元に置く。

 部屋が 静かさに包まれた。いつもなら何も思わない

 が無性に寂しくなった。私はベッドから起き上がり

 部屋を出て再びリビングに戻った。妹はテレビを見

 ていて、母の姿はいなかった。


「あれ、お母さんは?」妹に尋ねた。


「お母さんならもう寝たよ?明日早いんだって」

 テレビを見ながら妹は応えた。


「そうなんだ」

 

「もう寝たら?」

 こっちに視線を向けて、少し眉に皺を寄せている妹が言う。


「なんで?」私は不思議に思って聞く。


「声が変たがら」


「えー、自分でわかんないや」


「いいから、早く寝なよ」

 珍しく優しい口調で言う妹


「わかった。もう寝る。おやすみ」


「おやすみ」


私は自室に戻り、音楽をかけ、無理矢理眠りについた。






私はおでこに冷たいものを感じて唸り声を漏らす。

誰かに首を触られた。溜息が聞こえる。


「葵、ちょっと起きて」妹の声


瞼が重く、ものすごく寒い。


「さ、寒いよ」妹に訴える。


「ちょ、ちょっと待って毛布持ってくるから!」

 慌てて部屋を出ていく音、すぐに戻って

 体の上が重くなる。妹の匂いがふわりと香る。

 さっきよりは暖かくなった。


「葵、ちょっと起きれる?」


「無理。何もしたくない。寝させて」

 私は目を瞑ったまま答える。


「寝てもいいけどさ、まず薬を飲まないと」


「く、くすり、、、の、飲みたくない」

 逃げるように布団に潜る。


「だーめ。飲まないと風邪治らないじゃん」


「だ、大丈夫!たった今元気になったから!

 ほら!」布団から無理矢理身体を起こした。

 ふらついて、妹は咄嗟に支えてくれたが体制を崩し

 私は妹に覆い被さる体勢でベッドへと倒れ込んだ。

 

「ご、ごめん」離れようとしたら両腕でがっしり

 掴まれて、動けない。


「ゆ、由依?」


「大人しくして?」優しい声で命令してくる妹


「お、重くない?」私は妹に尋ねた。

 流石に恥ずかしいから妹に体重が掛からないように

 ベッドに両手で自分を支えていた。病人の私には

 この体勢はきつい、、


「重くない。というか体重全然掛けてないじゃん!

 ほら、大人しくあたしに抱きついてよ」

 何故か怒られた。


 恐る恐る妹に身を任せる。妹の体は布団より遥かに暖かい。

 

「由依、重くない?」

 

「んっ!ちょ、ちょっと耳元で囁かないでよ!」


また怒られた。不思議に妹の体は更に暖かくなった。


「由依、学校は?」


「休み」


「駄目だよ。流石に申し訳ないよ。私は大丈夫だから

 行って?」


私の本心ではない。本当は寂しくなるからいてほしい

けど由依まで私の所為で休んでしまうと罪悪感が湧く。


「病人の葵を置いたら、寂しくて死にそうだから

 行かないよ?」


「し、死なないもん、、、ちょっと寂しくなるだけ

 だもん」妹に見抜かれるなんて恥ずかしい。

 妹の胸に顔を埋める。良い匂い。妹から甘い吐息のような声が聞こえる。気にせず私はそのまま目を瞑った。


「おやすみ、葵」妹の囁く声とともに優しく頭を撫でられて私は安心して眠った。










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