第6話 休日
今日は日曜日で部活や検定なども無い日で
夕方までずーっと寝るつもりでいた。
なのに何故か朝の7時に思春期な妹に叩き起こされ
た。
「由依、もうせっかくの休みなのに寝かせてよー」
「いいから起きてよ」苛立ちを全く隠す気がない妹
が低い声で言う。イライラしたいのは正直私なのに
理由も分からず休日に叩き起こされるのは誰だって
良い気分ではない。
「あのね理由くらい言えば?」
「付き合って欲しいところがある」小さい声で言う。
「なんで私があんたの用事に付き合わなきゃならないわけ?」ちょっとイラッときたから冷たく言い返す。普通前日に言うべきでは?と思う。まあ、確かに昨日の由依はなんかソワソワしてて、ちらちら私を見ていた。はあ、昨日言えばいいのに不器用なとこは誰に似たのやら。
するとリビングの方で豪快にくしゃみをする父の
声が響いた。
「お姉ちゃんの好きな本か漫画を3冊買うから
付き合って、、ください」
もう本当にこういう時だけお姉ちゃんって呼ぶなんて
ずるい奴め、、でも久々にお姉ちゃんと呼ばれて悪い気はしない。
「わかったよー」
ベッドから重い体を起こし、妹の髪の毛をぐしゃぐしゃにしてから逃げるように部屋から出た。
後ろから妹からの怒りの声が響いたのだった。
妹は私に髪を触られるのがとても嫌っているのを
知ってるがなんだかそれが面白くてたまーにやっている。
向かう先は片道新幹線で約40分もかかる。
駅の隣には5階建のアミュがあって、そこの5階に
映画館がある。妹は今日上映されるアニメを観に来たのだ。友達と行けばいいのにと言うが妹は頑なに嫌がる。友達みんなアイドルなどにハマっていて自分だけ
アニメオタクだなんて恥ずかしいのだと言う。
妹はいわゆる八方美人で完璧主義者だ。中学の頃の妹は成績オール5、部活はバスケ部のキャプテンで顔も
整っていてとてもモテていた。学年が違う私のところまでその噂は届いていた。高校は入学してまだ2週間だけど妹なら間違いなく輝かしい成績は継続と私は確信している。
「葵、早く行こう!」興奮を隠し切れず目を輝かせる
妹を見て思わず苦笑してしまう。普段大人びて見え、こういう時だけ幼く見える妹がとても可愛い。
「はい、はい」
映画館に入る前にポップコーンと飲み物を買った。私は塩味で妹の由依はキャラメル味で私はファンタメロンで妹はコーラを買った。食べ物の好みは昔っから真逆だった。私はキャラメル味は美味しいと思うけど甘過ぎて飽きるコーラは炭酸が強くて苦手だ。
映画が始まると同時に私はポップコーンに目をつけた。その前にある必需品を鞄から手探りで探すが見当たらなかった。それでも、もう一度探してみる。私の動きを気になった妹は顔を近づけて耳元で囁く。
「先から何探してるの?」
「うーん、持ってきたと思ったんだけど忘れちゃったみたい」私はそう言って自分の手を眺めた。
すると妹は鞄から何かを取り出し、それを渡してきた。僅かな光を頼りに渡された物を確認する。
私は笑顔で妹の耳に近きお礼を言った。
「由依、ありがとう、さすが私の妹だね!」
「し、静かに食べてよね」
変わらず素っ気ない妹だった
私は早速妹から渡されたウエットティッシュを使う。
変なこだわりでウエットティッシュが無いと手で食べられないのである。ペーパーだと手にベタベタが残り
手が気持ち悪いと感じてしまうからだ。
まさか由依がウエットティッシュを持ってくるなんて
驚きだ。使ってるところはお店の中以外みないから。
素っ気ないけど変わらず優しい妹のままだと改めて実感した。
映画を見終わって隣のゲーセンに由依を誘った。
ゲーセンのお菓子を取るのが好きで必ず何かしらの
お菓子を大量に持って帰ってしまう。だけど同じお菓子が大量に家にあっても何故か食べる気にはなれない。ゲーセンで獲れた時の達成感が好きでやっているだけだからだ。ゲーセンに着いて、両替をするために
プリクラ機辺りに向かった。そこで見覚えのある人が
いて、引き返したが気づかれた。
「あれ!葵じゃん!」
後ろから高い声が聞こえてきた。
近づき抱きつかれた。
「げっ。」
「もう!葵冷たいよ?せっかく一年振りに会えたのに第一声はそれってひど〜い」
甘い香りの香水が彼女から漂っていた。
割と良い匂いの香水でずっと嗅いでいたいと思ってしまう。うん!そうです。私はかなりの匂いフェチです。私はそれなりに体型は良いが葉月と比べると
まるでレベルが違う。葉月は遅いのに出てるところは出ていて、女子の大半が羨むような容姿だ。
中学校まで一緒で葉月はとても人気があって、呼び出されては告白されていた。前まで短かった髪は一年前より伸びていて、葉月にとても似合っていると思う。
諸々を置いといて彼女を引き剥がす。
「葉月、そろそろ離れて欲しいんだけど、ここ、道のど真ん中で流石に恥ずかしいよ」
「うーん、わかった!ここじゃなければ良いって事ね!みんなごめん抜けるね!」
わかったって絶対分かってないじゃない!友達を置いて、私の手首を掴んで空いていたプリクラ機へと連れられた。
「葵、私に謝る事あるんじゃない?」
壁際へと追いやられる
「な、何を謝るの?」本当に思い当たりないんだけど
「へー、シラ切るんだね」低い声で言われる。
「だからなんの事?」
「葵は携帯無いから葵の家に電話をかけてるのに
一回も電話に出てくれないじゃない!」
「うん?電話してくれてたの?」
「電話してるわよ!毎週欠かさずよ!?
酷いよ!絶対家に居る時間なのにいないと言われるし、私の事そんなに嫌いなの?」
拗ねてるように葉月は言う
だけど電話なら私でも気付いたはず、たまに
リビングに寛いでる時鳴る事はあるけどいつも
由依がすぐに出てくるから出る事はなかった。
由依に誰からと聞くと迷惑電話とだけ言うし。
「ごめん、本当に知らなかったから帰ってから
お母さんに聞いてみるよ。もしかしたら、今まで伝え忘れてるのかも」
「葵のお母さんじゃなくて、、うん?
はあ、、そういう事ね、、」
コロコロ変わる葉月の表情をただ眺める私。
「葉月、本当にごめんね。あのさあ、高校入って
しばらくしてから親に携帯買って貰えたの。
良かったら交換しない?」
幼馴染でさえも聞くのは恥ずかしいって思う。
「えっ!い、良いの!?」嬉しそうに葉月が聞いてくる。
「うん、寧ろ嬉しいよ。私、友達少ないから」
恥ずかし過ぎて顔が熱い。
「ありがとう!!嬉しい!」
早速お互いの電話番号を交換した。
「じゃあ、そろそろ戻らなきゃ」と私は言う。
「わかった!寂しいけどすぐ会えるから我慢する!」
「うん、バイバイ」
ラインを開くと何通か由依から届いてた。
葉月と別れて由依を探す、遊びもしないで画面と睨めっこしている妹を見つけると急いで駆け寄って謝る。
「由依!ごめん!」
「遅い!両替に行っただけなのに迷子になるなんて」
「実は途中で葉月と会ったの」
「えっ、葉月さんがここにいるの?」
「うん、友達と来てたっぽいよー」
「へ、へー、そうなんだ。で、何話してたの?」
「うーん、特には何も?それより両替できたから
行こう?」
何か言いたげそうな由依だったがそれよりも
私は早く遊びたいっていう気持ちが勝って、
由依の腕を掴んで目当てのクレーンゲームへと
向かった。
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