第5話糸の綻ぶ前に

朝を迎えた。

 カーテンから差し込む微かな日差しに目が覚めた。集合時間まであと2時間くらい余裕がある。

 僕はいつもの様にストレッチと日光浴を行った。

 この時、初めてルーティンを早く済ませたいと思えた。

僕にとってはまだまだここは先の見えない"水平線"のようなものだから。

機械的に行っていたであろう散歩も場所が変われば楽しいものである。

 そこで、ある花を見つけた。海のように青々とした花弁を持つ花だ。

「綺麗〜」

 思わず言葉が口からこぼれてしまうほどに。

 僕は気がついていなかった。

 僕にとっての華がそばに居たことに。

「大洋!」

「ひぇ!」

「その花綺麗だよね。」

 「そうですね!ほんとに…」

「勿忘草って言うんですよ!」

「あ、あのジュースの!」

「そうそう」

「僕、初めて知りました!」

 

 「それは良かった。」

「話変わって申し訳無いんですけど…」

「どうしました?」

「ご飯行きません?ランチにでも。」

僕は思い切って誘ってみた。

「良いですね!」

快い返事が返ってきたことに僕は安堵を覚えた。

 

 そうして僕らは別れた。そこから少し経過した頃。

 日も南にあがりすっかりお昼時になった頃僕らは再び会った。

「こんにちは!」

「こんにちは!」

「どうします!どこら辺食べに行きますか?」

「とりあえずその辺、散策しながら見つけましょう。この時間帯どこも混んでると思いますし。」

「オッケー!」

 「ところでこの旅日記もう慣れてきましたか?といってももう明日は最終日なんですけど!」

「そうですね!だいぶ慣れつつあります!明日には皆さんとお別れですね…」

 再びとなるがこの旅は3日間。

 1日、2日、は自由行動3日目に帰る。これが旅の内容だ。何ともツアーなのかどうか疑問思うもののこれが初めてであり判断はつかないままだ。

僕らは近くのイタリアンのお店に入った。

「私カルボナーラにします」

「自分はナポリタンお願いします!」

店内は色んな層の方々で賑わっている。

「今日はどう過ごすのか決めてるんですか?」

そう彼女が口にする。

「今日は海岸の方に向かって海を見ようと思います!」

「いつもと違う場所から見た海の風景を眺めたいんです。」

 そう僕は語った。

「汐里さんは決めてるんですか?」

「私は昨日飲んだサワーの味が忘れられなくて…」

「なので、またあのジュースを飲みたいんですよね。」

「それとお土産として何か買いに行けたらな〜!」

「なるほど〜あのジュース確かに美味かった…

 お土産か〜」

「僕もお土産買わないとな〜」

そこで僕はある提案を持ちかけた。

「確か近くに色々売ってる売店みたいなのがあったと思うんですよ。」

「そこで一緒にお土産探しませんか?」

「良いですね!それなら手間も省けますし!」

 僕は驚きと喜びで膝を机にぶつけた。

 それと同時にナポリタンとカルボナーラが届いた。

「あ……」

僕は顔を赤らめた。穴があったら入りたいと思った。

「先に食べましょうか!」

 汐里さんはその気まずい空気感に気を使ってそう言葉をかけてくれた。

しかしその行動に僕は少し泣きたくなった。

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