ブログ【推しのVtuberに裏切られた話】

 一口に推し活と言っても、色々な形態がある。推しの業種にも寄るが、ステージやライブを観に行く、出演番組を観る、グッズを買う、SNSをフォローする、友達に紹介する、同担と語り合う……等々。


 私の場合は推しがVtuberなので、動画や配信を観に行くのがもっぱらメインの推し活になるが、特にアニメ系のオタクが多いV界隈で活発な推し活のひとつが、ファンアートを描くことだ。Vtuberによっては、ファンアートを投稿する専用のタグを用意している人も多く、タグを覗きにいけば、絵心のあるオタクたちから推しへの熱意溢れるイラストが投稿され、連日大賑わいしている。かくいう私も、イラストを描く方のオタクだ。


 で、ここからが本題。


 私は推しに認知されたくないオタクだ。


 私は私自身の活動として、推しのファンアートを描いてSNSに投稿したりしているが、タグは一切付けていない。あくまで私個人の作品として発表しているだけで、それを推しに宛てたファンレターのつもりで描いたことなど一度もない。というか、Vtuberは活動形態的にアニメキャラクターのように認識されがちだが、実態は中に生きた人間のいる現実的なタレントだ。そのファンアートはいわゆるナマモノの一種だと思っているので、そもそもタグをつけて推しの目に留まるように投稿すること自体が私にとっては異文化なのだが、それは主題ではないので置いておく。


 ともかく、推しに関する創作をするうえで、本人の目には届かないように気を遣って活動しているつもりなのだ。


 先日、そんな私を戦慄させる出来事があった。


 鳥羽アルエというVtuberがいる。いつもやたらと楽しそうなキャラクターで、私の推しのひとりだった。


 彼女は配信の最後に、自分のファンアートを紹介するのがお決まりだった。それは別に構わない。ファンアート用のハッシュタグもあるのだから、そこに投稿されたイラストを紹介することはなにもおかしなことではない。しかし、その日紹介されたイラストが問題だった。


 そのイラストは、ハッシュタグの付けられていない、無言で投稿されたイラストだったのだ。


 タグ付けはある種の意思表明だ。タグを付けることで『この投稿は推しの目に留まっても大丈夫ですよ。配信などで取り上げても大丈夫ですよ』という承諾をしているものだと、私は認識している。


 だが鳥羽アルエは、それを破って、タグ付けされていないイラストを紹介したのだ。


 確かに上手いイラストだったかもしれない。紹介すれば配信も盛り上がるだろう。けれど、タグ付けされていないということは、鳥羽アルエに見せるつもりはなかったということだ。それをわざわざ探し出してきて、自分の配信に乗せたのだ。


 創作をするオタクとして、こんなにも恐ろしいことはないと思う。自分の作品が無断で取り上げられ、配信を観ている何万という人間の目に晒されるのだ。自分の配信のために同意のないファンを晒しものにする。こんな酷い裏切りがあるだろうか。


 やっぱり所詮個人Vtuberだと、その辺のコンプライアンス意識がなあなあなんだろうか、とも思ってしまうが。


 ともかくそれ以来、怖くて私はSNSは鍵垢にしているし、ファンアートも投稿していない。Vtuberを推すことももうできない。


 この投稿が誰の目に留まるかはわからないが、もしもVtuberの誰かが見たのであれば、考えてほしい。私たちファンは、あなたたちの付属物じゃない。私たちにも、踏み込んでほしくない領域というものがあるということを。

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