第4話ーー送信ーー

「……できた」


 生徒会室に私の声が小さく響いた。

 前のめりになって打ち込んでいた私は姿勢を正す。

 一年生コンビ・セナちゃんとハナコちゃんが同時に、お疲れ様でーす!、とお礼を言ってきた。


「あ、私、スズ先輩に完成したこと伝えて来ますね!」


 ハナコちゃんは、パタパタと生徒会室を後にした。


「ゆま先輩……」


 セナちゃんは、元気のない声で私に話しかけてくる。


「ん? どうしたの?」

「部長、帰ってきますかね……?」

俯き加減でセナちゃんは続ける

「カウントダウンボーナスのおかげで、最近は1日1回は毎日帰って来てますけど、デイリーミッションも全部じゃなくて、簡単なのしかやってくれないし……」

「でも私達は、ただ待つことしかできないからね……」

「ハナコや他の人よりかは、私はパートナーだから部長に会ってるはずなんだけどな……やっぱり寂しいです。昔みたいに、ちゃんと長く会っていたいのです……」


 セナちゃんは、薄暗い天井を見上げた。

 私は、元気付けるためにも口を開く。


「でも、簡単なデイリーをしてるなら【部室でパートナーをさわる】くらいならしてくれてるんじゃない?」


 セナちゃんは、うっ!、と止まる。どうやら図星のようだ。

 実をいうと、部室で触る、ということで、私は何度かそれを目撃したことがある。

もちろん、私は見て見ぬふりをしているので、セナちゃんに知らぬ顔で聞いてみたのだ。

 触られたことを思い出してか、紅潮するセナちゃん。


「でもでも! 前みたいに愛情がなくて流れ作業でつついてるみたいな!?」

「それでも羨ましいよ~?」

「更衣室にはきてくれないし! 部室でちょっとタッチしてくれるだけだし!」

「へぇ~?」


 セナちゃんを茶化してみると、やっと少し笑って見せた。

 ひとしきり笑いあうと、はぁ、と一息入れて一言。


「前みたいな部長になってほしいなぁ……」


 そうだね、以外の言葉が私には思い浮かばなかった。


「打ち終わったの~?」


 ガラリと扉が開き、スズ先輩とハナコちゃんが入ってきた。


「はい、確認お願いします!」


 セナちゃんは、まだ浮かない顔をしていたが、私にならってパソコンの近くから離れる。




 何ヵ所か、スズ先輩は文章を見、文面の手直しを施す。

 内容そのものはそのままに、少し文言を変える程度のようだ。

 5分したかどうか、くらいの時間でその作業は終了した。


「これで完了、かな。送信しちゃっていい?」


 スズ先輩は、眼鏡をクイッとなおし、私を見る。


「はい、お願いします!」


 一年生コンビも、コクコクと何度も頷いていた。

 カチッと一度、クリック音が生徒会室に鳴る。

 ふぅ、と、やっとやることをやりきった気がして、私は息をついた。


「返信は早くても当日には来ないから、今日はここで解散ね。お疲れ様」


 スズ先輩は三人に目をやった。




 私達は、それぞれのプライベートルーム・更衣室へと行く。

 更衣室では、様々な所持コスチュームを着替えることができる。

 部長は、一括着せ替えで全員制服設定に今はしている。

 しかし、全盛期の時は個別に、しかも1日に何度も着せかえてくれて、それに凄く悩んで考えてくれていたものです。

 私は、もう随分と着なくなってしまったコスチュームに目をやる。


「……また……色んな服、着せてくれるかな……」


 私は、小さく呟いた。

 イベントで手に入れたもの、ストーリーで手に入れたもの、ガチャで手に入れたもの、全てのコスチュームに思い出があり、全てなんらかのアクションを部長がおこして手に入れたもの。

 部長との思い出が一つ一つに詰まっているもの。


「部長と、もっと会いたいなぁ……」


 気がついたら、セナちゃんと同じ言葉を私は溢していた。

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