第78話 『鷹崎家』(三)
――コラボ当日。俺たちは、敵地へと足を踏み入れていた。
ぷかぷか浮かぶ『目玉くん』に、あんまるが笑いかける。すでに配信は開始してある。同時接続数は二万を超え、注目度の高さがうかがえる。
「ドモ~☆ あんまると~?」
「加藤段蔵だ。二人あわせて『迷宮見廻組』、以後よろしく。――そして」
手で隣にいる人たちを示す。
「どうも、『鷹崎家ダンジョンさんぽ』の鷹崎兄です」
「むすめ!」
「妹!」
テンポよく挨拶するのは、男女でデザインの差はあれど、お揃いの青いダイバー衣装を着用した三人だ。ギルドロゴが胸元に入っているのがポイントだな。『迷宮見廻組』もロゴを作るべきだろうか。
『アリアちゃんきた!』
『かわよ~』
『鷹崎パッパ、ここまで若者に囲まれると、さすがにちょっと浮くな』
『あれ? そのダンジョンどこ?』
「予定通り、本日はコラボだ。気づいた人もいるようだが、告知していた神奈川のダンジョンではない」
俺たちが立っている場所は、木製の足場だ。
睡蓮の葉が浮かぶだだっ広い水面に、横幅五メートルほどの桟橋のような構造物が通路として伸びている構造のダンジョンである。
「簡易計測だが、ローラシア・カテゴリーのタイプ:
「このたび『鷹崎家』は傭兵申請をおこないまして、先輩である『迷宮見廻組』さんにいろいろ教えていただく所存です。――
『実地!?』
『やば!』
『てことは、そこ闇ギルドの違法ダンジョンか!』
鷹崎兄はコメント欄の煽り方が上手いな。さすがはベテランだ。
「そう、闇ギルドが違法に秘匿、占有しているダンジョンだ。ここからは進みながら説明する。行くぞ」
「りょー。……にんじゃー、いそいだほうがいいの?」
とことこ歩きながら首をかしげる鷹崎アリア。俺もようやく、この無垢な超越者の存在感に慣れて来た。
「ああ。別の出入り口を作られているらしいからな。逃げられる前に闇ギルド構成員を捕まえたい」
魔導犯罪の資源はダンジョンからの産出品。ドロップアイテム、ダンジョンコア等々だ。そのダンジョンは毎日、日本のどこかでいくつも開いている。闇ギルド構成員を減らすに越したことはない。
……捕まえた構成員から情報を得て、魔導技術を販売する『呪詛組』のふたりまで辿り着きたいという、個人的な思惑も大きいが。
鷹崎妹が「はーい」と手を挙げた。
「
「いや、あそこまで過激にやる必要はない。命あっての物種だし、敵もモンスターだけとは限らないからな。無理は禁物だ」
ぜんぶで何階層かもわからないのである。確実に、慎重に、しかし素早く行動する……、というわけだ。
「それに、コアを改造されたダンジョンでは、モンスターの湧き方や性質も改造されていることが多い。……来るぞ」
足場の先を指差す。ざぱっ、と音を立てて、ぬめぬめした人型のモンスターが湖から足場に上がって来た。一匹ではない。続々と爪を立てて上がってくる。
鱗だらけの全身に、髭の生えた川魚らしい顔つきの魚人モンスターだ。細長い手足には水かきと鋭い爪が生えている。あんまるが「キモ」と呟いた。
「
鷹崎兄が興味深そうに顎を撫でた。詳しいな。
「あの数、一本道では分が悪いか。――あんまる」
「おっけー☆ そんじゃ、アタシの
そこで、鷹崎妹がすっと前に出た。
「まあまあ、ここはお姉さんが」
「おねーさん? おばさんじゃなくて?」
「怒るぞクソガキ」
鷹崎アリアの軽口に言い返しながら、背負っていた二メートルほどの長さの棒を引き抜いた。ひゅん、と風切り音を立て、回転させる。
「乱戦なら私の出番。それに、初コラボでしょ? お互い、なにが出来て、なにが出来ないか――」
棒を回転させたまま、駆け出した。そのまま半魚人の群れに飛び込んで――吹き飛ばす。
『うわ』
『さすが"武器術"の妹』
『相変わらず無双系みたいな戦い方するなぁ』
目にも止まらない速度で(※忍者の目は除く)振るわれた棒が半魚人の腹を打ち、顎を打ち、頭をぶっ叩いて、次々に黒い塵に変えていく。
驚くべきは、叩けば叩くほどに速度が増していくこと。
鷹崎妹は、半魚人の群れをあっという間に殲滅し……カメラ目線で微笑んだ。
「――それが、ダイバーの自己紹介ってもんでしょ?」
※※※あとがき※※※
投稿間隔が開いて申し訳ないのですが、プロットの調整とガチ生活習慣改善のため、もうしばらくゆるペースになると思いますなのだ。
失った若さと体力っていつごろ取り戻せますか?
え? もう帰ってこない? そんな……。
カクヨムコン参加中なのだ!
面白かったら☆☆☆のレビューの奴をよろしくお願いしますなのだ!
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