第36話 バズ・ニンジャ(一/十五)
饕餮の突進を
「ふむ。対魔術式であれば、通りはする……、が」
『高速治癒能力?』
『不定形タイプだろ。そもそも斬撃無効かも』
『スライム的なやつか』
実体のよくわからないモンスターだな。
形を変えながら襲い掛かってくる様は、黒い水か泥のようにも見えるが、その表面は階層縦断型モンスター特有の異界障壁で覆われている。
見た目とは裏腹に、非常に硬い。
「あんまる。何秒かかる?」
「三十秒! マジチャは足りてるから、あとはアタシが集中するだけ!」
「了解した」
饕餮が、うぞうぞ蠢いて目玉の位置を変え、また突進の構えを取った。
「攻撃手段は突進、触手状に変形しての打撃か。威力はさほどではないな。筋肉を持つミノタウロスより攻撃力は低く、不定形モンスターらしく耐久性が高い……、と見ておくか」
巨クナイを担ぎ直す。このサイズとしては異例の軽さで仕上げてもらっているが、それでも二十キログラム以上ある重量級武装だ。少しだけ、機動性が落ちている。
「さて。仮に、スライムや
巨クナイを振って目玉を引きつけつつ、こちらから饕餮に向かって走り出す。核がどこか、確認する作業が必要だ。
『なるほど』
『そこを攻撃すれば倒せるってわけね?』
『目玉かな?』
「俺も目玉だと思う。なので」
十本以上の触手状に変形して放たれた突きの連打を巨クナイで打ち払う。
こうして、話しながら戦闘するのにも慣れてきた。
「狙ってみようか。【
連打で浴びせられる触手をかいくぐりながら、巨クナイを影に落とす。巨クナイを収納して身軽になれば、全力の忍者瞬歩術が使える。
地を這うように走って、目玉に接近する。
「――再励起、【風魔流忍法:吞牛之術】」
巨クナイを影から引き抜き、勢いそのまま、逆袈裟に斬り上げる。饕餮の目玉の表面を削って、浅い傷を残した。饕餮が「ぎぃいッ」と鳴いて跳ね、俺から離れて距離を取る。
『デカい武器を出したり消したりしながら戦うの、映えるな』
『さすがゲーミングニンジャだ』
ゲーミングニンジャって言うな。ともあれ、そろそろ三十秒だ。
「目玉がアタリらしいな。あんまる、狙えるか」
「もち☆」
あんまるが、前に出る。両手で構えるのは、ぎらぎらと光り輝くオーラを纏った妖刀鮫丸だ。
饕餮がぶるりと震えて、目玉をまっすぐあんまるに向けた。突進の構えだ。
「ミノタウロスと比べれば防御技術がないし、本体そのものが柔らかい。異界障壁ごと叩き切ってしまえ」
「おっけー☆ そんじゃ、必殺の~っ」
饕餮が、弾けるように突進する。あんまるが鮫丸を振り上げる。
「
青色に輝く斬撃が、洞窟を照らす。
あとに残るのは、黒い霧だけだ。
●
ダンジョン突入から五時間弱。
『迷宮見廻組』は第九階層のセーフゾーンでヤマザキさんを発見。
無事に保護し、最初の仕事を終えたのだった。
※※※あとがき※※※
みじかめですまんなのだ。
次回は説明回、次々回は姫虎ちゃん目線になるのだ。
よろしくお願いしますなのだ。
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