第35話 救援依頼と闇ギルド(六/六)
えっ、いま俺、キスされた?
頬にキスを? あんまるに――、杏奈に? テレビに出ていても不思議じゃないような、美人で明るい、一歳年下の東京の女子高生に、キスされた?
……WHAT?
『段蔵くんが機能停止しちゃった!』
『てぇてぇ』
『ピンチになにやってんだあんまる』
『てぇてぇけど今じゃない』
「こんなに耐性ないと思ってなかったんだもん! ごめんて!」
あんまるが
「起きろー」
「……起きている。忍者は機能停止などしないからな。でもちょっと気持ちを落ち着ける時間が欲しい。三十分ほどもらえるか」
「なげえ!」
確かに。休んでいる場合ではない。
突進がからぶった
「……荻谷さん、申し訳ない。緊急事態と判断し、坂上銀五郎の拘束を解きました」
「とんでもない。ご助力に感謝いたします。私個人に干渉してこないダンジョンスキルは苦手でして」
荻谷さんは油断なく拳を構えたままだ。
すでに、坂上は【
「ヤヨ、打ちすぎだ!」
「やぁんっ♥ ギンくんのえっち♥」
「アホ言ってねェでアンプル渡せッ、逃げっぞ!」
ヤヨ・ビシュハーマンだ。坂上に、背後から羽交い絞めにされている。
坂上はヤヨの手からアンプルをもぎ取った。
「あっ、ヤヨのなのに!」
「組織のだろバカ! 【
坂上とビシュハーマン、二人の姿が掻き消える。気配を辿る。俺の背後ではない。つまり、腕の中にいるあんまるの背後でもない。荻谷さんは瞬時に壁に背をつけて、移動先を潰していた。
ならば、どこへワープしたのか。
「おいクソガキニンジャあッ! 今日のところは見逃してやらァ!」
「次は殺すからねぇ、あんまるちゃあぁんっ♥」
ふたりがワープしたのは、饕餮の背後。
左腕でビシュハーマンを抱えた坂上は、右手で握り込んだ五本のアンプルをまとめて己の首筋にぶっ刺した。緑色の液体が、やつの体に流れ込む。
坂上は
「オーバードーズぅ――【
あんまるの「顔コワ」という呟きを聞くことなく、坂上とビシュハーマンは消えた。気配もない。誰の背後でもない。
饕餮が誰もいない背後を振り返って、むずがるように震えた。
「……逃げたな」
「マジ? なんだったん、いまのふたり」
「さてな」
聞くとしたら俺ではなく荻谷さんだが、その荻谷さんはというと。
「……なるほど。縦断型モンスターの異界障壁に、ワープ系の上位スキルを併用して、反転した異界の反発力で無理やり別のダンジョンに跳んでいるのですか。どこか、個人所有のリポップダンジョンをアジトにしているのでしょうね」
疲れた顔で、ぶつぶつなにか呟いている。ふむ。やはり、なにかウラがあるらしい。
「あんまる。俺も荻谷さん……、というか、ダンジョン公社には聞きたいこともあるが、配信を終えてからにしよう」
「配信後? リスナーさんに説明せんの?」
「後日、整理してからのほうがいい。言えること、言えないこと、いろいろあるだろうからな」
『高校生に気を遣われるダンジョン公社さんさぁ』
『ご意見フォームに苦情入れようとしたら本名と住所と電話番号要求されたわ』
『うーんお役所w』
配信中に荻谷さんを問い詰めて、晒上げたいわけではない。そういうのは『迷宮見廻組』らしくないだろう。それに。
「本来の目的が目の前にいる。忘れたわけじゃないだろう?」
「もちろんっ、忘れてないよ!」
あんまるが俺の腕から飛び降りて、妖刀鮫丸の切っ先を饕餮に向けた。
饕餮の一つ目が、俺達を睨みつける。
「疲労はどうだ」
「アタシはまだまだ元気だよん☆ マジチャも5万以上残ってるし」
「なら、予定通りやるぞ」
前に出る。
階層縦断型モンスターには、妖刀鮫丸のような高火力のダンジョンスキルがいちばん効く。ミノタウロス戦と同じように、トドメはあんまるに決めてもらう。
俺は回避盾に過ぎない。だが、長クナイでモンスターを刺激し、タゲを取り続けるのは、少々むずかしいと知った。ゆえに。
「【
『お!』
『きた!』
『待ってた!』
足元の影から取り出すのは、俺の身長ほどの長さを持つ両刃の刃物。
迷宮産の素材で鍛え上げられた、硬さと軽さを併せ持ち、対魔術式を付与されたエンチャント・ニンジャ・ウェポン――。
「――巨クナイだ」
『は? 大剣では?』
『大剣じゃん』
『どう見ても大剣』
「大剣ではない。巨クナイだ」
『大剣だろ』
『大剣です』
『段蔵くん、たまにアホになるよね』
「アホではない。巨クナイだと言って――」
饕餮が俺に向かって突進してきたので、訂正はあとにしよう。
※※※あとがき※※※
たくさんの応援レビューやコメント、ありがとうございますなのだ。
現時点で荻谷さん(ダンジョン公社)に聞きたいことを募集するのだ。
読者さん目線で気になる点がどこなのかを知りたいのだ。
現状、
・あのアンプルなんスか
・闇ギルドがいるって知ってたんスか
・あいつらなんか企んでるんスか
・彼氏いるんスか
等の質問をする予定なのだ。
ご協力お願いしますなのだ。
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