第33話 救援依頼と闇ギルド(四/六)



 アタシは鮫丸を振り下ろして、気づく。

 ――このピンク色の髪、めちゃくちゃ硬い!


「なにこれ!? キューティクルやばくね!?」

「秘訣はこだわりのヘアオイルだよぉ♥ あなたみたいなかわちぃ・・・・子の心臓を絞って作るんだぁ♥」

「こっわ!」


 さすがに冗談だと思うケド。


 『こわい』

 『ビシュハーマンって、あのビシュハーマン? 魔女の神秘遺贈の家系の』

 『え!? じゃあ、この子って"人喰い"ビシュハーマンの末裔!?』

 『人喰うの? こわ』


 さすがに冗談であって欲しいんだケド!?


 ヤヨ・ビシュハーマン……ちゃん? の、髪の毛は、ダンジョンスキルによって伸ばされたもの。鮫丸で切断できないのは、魔力の問題だと思う。だったら。


「鮫丸、魔力充填。切れ味強化! もいっちょ、波刃霧ハバキリ! おりゃー!」


 マジチャを消費して、切れ味とオーラを一段階ずつ強化して、もう一度髪の毛に切りかかる。今度は断ち切れた。バラバラに散った髪の毛が、ピンク色の魔力片に砕けて霧散する。


「ありゃりゃ♥ ヤヨの髪の毛、切られちゃったぁ。もうちょっとで絞め殺せたのにぃ」


 解放された荻谷さんがゲホゲホ咳き込む。だいじょぶそ?


「申し訳ありません、出雲――あんまるさん。私が守らないといけない立場ですのに」

「困ったときはお互い様なんで! ……で、これからどうすりゃいいスか? アタシも無事にこの場を切り抜けたいんで、指示をください! あ、もちろん『アタシだけ逃げる』以外で!」


 ヤヨちゃんが、にたにた・・・・笑いながら、また例のアンプルを取り出して、首に打ち込んだ。ぶるり、と震える。

 ……あの緑色の液体、ものすごく嫌な気配がする。で見ればわかる。


「んふぅ♥ 同じ構築ビルドアップ型として、ヤヨも負けられないにぇ♥ 魔力充填、毛量及びクチクラ超強化――おろちモード♥」


 ヤヨちゃんのツインテールが蠢いて絡まり、編まれて、二頭のぶっとい蛇みたいになった。牙もちゃんとあって、造形にこだわりを感じる。……うん、怖い!


 『マジチャの代わりに、魔力溶液を直接からだにブチ込んでるのか?』

 『体に悪そう』

 『あの太さだと、鮫丸でも斬るのが難しそうだな』


「……では、あんまるさん。少しだけ、時間を稼いでください。私のダンジョンスキルは発動が面倒なんです」

「わかりました! 魔力充填、波刃霧・重、マシマシっ!」


 アタシは一歩前に出て、襲い来るおろちに鮫丸をぶつけた。案の定、斬ることは出来ない。鉄線で編みこんだ丸太みたいなモンだし。

 だけど、衝撃波で弾くことはできる。盾役になら、なれる。


「んんー、あんまるちゃんっていうんだね? かわちぃね♥ 殺す!」

「情緒やば」

「ヤヨより若くてかわちぃ・・・・子たちは、みぃんな殺してジュースにしちゃおうね~♥」

「発想もやば!」


 髪蛇を必死に捌くアタシの後ろで、荻谷さんはスーツの懐からボイスレコーダーを取り出してボタンを押し、腕時計を確認した。


「えー、八月二十二日、午後十四時三十二分十五秒。確認ヨシ。使用マナアンプル一本。確認ヨシ。ダンジョンスキル、上長不在により現場判断にて励起及び発動。確認ヨシ。この録音を以って、事後承認を申請いたします――」

「エ゛ッ!? 発動が面倒ってそういう意味!?」

「ヤヨが言うことじゃないけどぉ、もうちょっと規則見直したらぁ?」


 『お役所さぁ』

 『ダンジョン公社がどんどん嫌いになる』

 『荻谷さん、ダイバーに転職しないか?』


 ヤヨちゃんすら呆れ顔になる中、荻谷さんが真面目腐った顔でダンジョンスキルを励起する。


「――【終わらぬ巡礼セイント・ミー・アラウンド】、発動。お待たせしました、出雲さん。そして、残念ですが……、本当のお役所仕事はここからです」



※※※あとがき※※※

暑かったり寒かったりムカつく時期なのだ。

寒暖差に耐え切れず、連日おなかがピーピーで、頭痛もするのだ。

つらいのだ。

だからユーザーフォローやら☆☆☆やらサポーター登録やらでヤんマもんを応援するのだ!(ごく自然な誘導)

(サポーター登録しても特にお届けするマル秘情報みたいなのはない)


おまえらも寝るときは腹を出さずに寝るのだ。


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