第12話
「ではお言葉に甘えて四人で行かせてもらう!
「よしっ、今度は仕留め損ねない!」
「なんじゃい、結局マクセルが号令を掛けるのは同じかい」
最初に戦ったときと大して変わらぬ行動に少なからず落胆を覚える。
しかしそんなわらわの気持ちは良い意味で裏切られた。
そう。
セーラの攻撃がわらわに当たったのだ!
小娘でも扱いやすいであろう小振りな剣が!
わらわの高貴で最強で麗しき身体に!
ブッスブッスと!
刺さっておる!
「い、いたたたた! なんじゃこりゃあ」
「みゃあ〜、ちょっと引くほど刺しまくってるにゃ」
「セーラちゃんが急所を捨ててメッタ刺しにするのは初めてねぇ」
「あの人は時を止めても反撃してきますから。見境なくやんなきゃ」
「よし、よくやったセーラ。
「セーラちゃんの覚悟で吹っ切れたわぁ」
今度はマカか。
セーラは思いもよらずエグい攻撃してきたから面食らってしまったが、ナイトクラスタはさすがに手の変えようがないから気負わなくていいだろう。
しかし痛むな。
乱雑に刺しまくってくれてひどいじゃないか。
わらわは最強だが無敵じゃないんだぞ。
これ全部急所に当たってたら普通に死んどるわ。たぶん。うむ。
「まったく。しかしナイトクラスタなぞわらわに効か……」
「
「……天術!? ぬぅっまずい!」
「おいマカ、正体がバレるみゃ」
マカの魔法に何か嫌な予感がしたので、咄嗟に身を翻して避ける。
するとわらわのいた場所を禍々しい光が焼き払った。間一髪じゃ。
なんで人間のクセに天界の呪文である天術を扱えるのだ。
魔法使いと言ったって人間の使えぬ魔法は撃てないはずだろうに!
それにマカよ。
おまえ1ターンに2回攻撃したな!
いーけないんだ、いけないんだ!
セーラに言ってやろ!
「おい! 今マカは連続で2回攻撃したぞ! これダメなんじゃないのか!?」
「ナイトクラスタで本来魔王さんは56ターン動けない……んです。あまりにタフなので動けちゃってますけど」
「56ターン動けない……!?」
「そうよぉ。サラッと私の
「そ、そうか、じゃあ仕方ないな……」
なんだか納得いかないが、56ターン動かずにただ攻撃を耐えるだけなのはつまらないし合わせておこう。
しかし魔天之聖か。
………………。
か、かっこいい。
わらわもそういう技、ほしい!
できればマカの技みたいに漢字四文字で、読み方もすごそうなのほしい!
読み方……
あれ、そういえばさっきの技……
たしかマガミトロニオスって……
「魔王が油断している!
「よしきた! スキありニャ!」
「ねえセーラちゃん、私の必殺技ってそんな避けやすいかしら」
「そんなことありませんよ! ただこっちじゃ初めて使ったから体が慣れてないのでしょう」
マガミトロニオスという言葉に想いを馳せていたら、シャムが連続でワープしながら引っかきまくってきた。
……いや、ただワープしているだけではない!
なんとシャムは地面を蹴り上げて加速した瞬間にワープし、その速度を維持したまま再びワープ先で地面を蹴り加速している!
最初はせいぜい時速100キロくらいだった。
しかし右に左に前後にと不規則にワープして加速を続けたシャムは……
わらわの愛くるしい慧眼でも捉え損ねるほどの速さになっている。
というか、風切り音と動きが合わなくなってきたのじゃ。
わらわこの現象知っておる。
マッハじゃ! これマッハ超えてるのじゃ!
すごいのう。はやいのう。
「フシャアアアアア!」
「うぐっ普通に痛いのじゃ」
「フシャア! ウゥゥ」
「うぬぅ!」
「ガードしても無駄ニャ! ツメだから!」
「ぎゃあ、めちゃバリバリ引っ掻いてくる」
「にゃにゃにゃあご!」
「俺たちからはシャムが早すぎてカマイタチのようにしか見えん」
ずたずたに引っかきまくり、ようやくシャムが息切れをしたところで向こうのターンが終わった。
本気になると思ったよりも強いではないか。
ではこちらもそなたたちに合わせるのはやめよう。
少々は本気で行くとするかの。
ふっふっふ、こわいか?
こわいだろうよ!
だってそなたらに合わせたパンチですら、一撃で瀕死になる攻撃だったからな!
………………。
すまん言い過ぎた。
実際は割りとガチじゃった。
まあともかく、動きをあえてニブらせてはいた。
うむ。
わらわ、強いよ?
「さてようやくわらわのターンかな」
「そうだ。めいっぱい狙いをつけて必殺の気持ちでこい」
「よく言うのう。まあそうさせてもらうけども」
「……セーラちゃん、分かってるわねぇ」
「はい。魔王は本気みたいですから」
「ボクたちもなかなか嫌なヤツだミャ〜」
では行くぞ!
この身一つで天下を統べた者の剛拳を味わうがいい!
今から繰り出す技はわらわの奥の手の中でも最弱である。
だが!
その最弱の技にお前たちはおののくであろう!
何故ならば……
ホントに最弱だから────!
「喰らえぃッ! 必殺!」
「
「せいッッッッッ!」
「うみゃあ! ジャンプして……」
「やばいわぁ、天井をぶっ叩いて落としてきた!」
「み、み、みなさん! あれを!」
「そうだったミャ! やるみゃ!」
「ほう、何をしてくれるのかな」
この城は土の王が一級品の素材で建てた。
自慢の天井は
そんなものがドカドカと降ってきたらひとたまりもあるまい。
が、やつらは急に何かを発した。
ふっふっふ、それでよい。
こんな最弱の技でよもやダメージを与えられるとは思っておらんわ。
だって土の王の仇討ちのために考えといた技だからな。
あんま強くなくていいのじゃ。
どちらかと言うと、この後出す技で天井が邪魔だから考えた技だし。
………………。
「って、しまった!」
「土の王がもういないのに、城を壊したら誰が直すんじゃい!」
「あらぁ!!」
「魔王が油断したみゃ!」
「みなさん行きますよ!」
「
「
「
三人娘が大仰な技を叫ぶと、
まるで戦いとは無縁のような温かい光が、
わらわの身体を容赦なく焼き払った。
あっ、これはちょっとヤバい!
あち! あちち!
あついのじゃ! 火の王がガチった時よりあついのじゃ!
人んちの中でなんちゅう技をしてくれるのじゃ!
城が燃えたらおぬしらも直すのを手伝えよ!
……って、城は全然被害を受けてないのじゃ。
ならまあ、いっか。
………………。
あ、あついよ〜。たすけて〜。
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