第7話
ナイトクラスタ……
この技はとても強力であった。
よく分からんが全ての状態異常をまとめて掛けてくる技らしいからな。
そんなの初めて聞いた。我が右腕ですらそんな便利な呪文は覚えてなかったし。
世の中は広いな。うむ。
「ナイトクラスタよ、永遠なれ……」
「ふぅ、お手上げよ。私の最強技がちっとも効いてない。こんなのインチキね」
「いやマカよ、まだわらわとおぬしの戦いは1ターン目とやらが終わっただけだろう? 何を諦めているのだ」
「あー無理。私勝てない戦いはしない主義」
ほっほっほ。
なかなか利口ではないか。
その主義は長生きすることに直結するから大事にせい。
わらわも勝てない戦いはしない主義ぞよ。そのおかげでこうして魔物の頂点に数千年も居座っておるのだし。
まあわらわの場合は勝てない戦いをしないのではなく……
誰と戦っても負けない主義なんだけどな!
というか負けず嫌いなんだよ!
だからそちらに戦意がないなら好機と見なす!
「ぬわっはっはっは! では次のターンはこちらからいくとしよう! 覚悟せい!」
「今度こそ本性を表したな魔王!」
「めんど。まあマヒとかは効かないけど攻撃低下なんかは効いてる場合あるし、やるわよぉ」
なにっ、そういう場合があるのか。
それはちょっとまずい。
わらわは負ける戦いは嫌じゃあ。
でもここで振り上げた拳を引っ込めると勝ち負け以前に”王の矜持”が……。
うむぅー。
し、仕方あるまい。
とりあえずこのターンは様子見のパンチじゃ。
どええええええええい!!
「オラァ!」
「ぐふ!」
「大丈夫かマカ!」
「な、なんて
「なんか様子見で死にかけておる」
「死ぬなーーーー! マカ、しっかりしろー!」
「みゃああああん! 死んじゃヤダみゃあああ」
「そうだ死ぬなマカ! わらわとの戦いは始まったばかりではないか!」
「あ、あの、皆落ち着いて……とりあえずヒールすればいいんじゃ……」
のうセーラ、おぬし空気を読め。
とりあえずヒール、じゃと?
そんなぬくもりのない事を言うのか?
………………。
さすがはさっきまで死にかけてた身じゃないか。
よく考えたらその通りじゃ!
感傷に流されて泣く暇があったら、回復すればいいじゃないか!
お前、うちの四天王にならんか?
特別に土の王の席をあげるぞよ。
「くそぅ、打撃だから傷口がない! これじゃダイレクトヒールできない!」
「みゃああああん! マカが死ぬにゃ」
「ぐふ。とりあえず普通にヒール掛けて」
「で、でもヒールは致命傷レベルのダメージには回復が追いつきません。あくまで延命しか……」
「ふむ! このターンはそちらは回復に費やす、ということでいいのかな!?」
「魔王さん今忙しいんです! あ、あ、あたしたちの邪魔しないで!」
「ご、ごめん」
なんじゃいなんじゃい。
そんなに怒んなくてもいいじゃろセーラ。
そもそもターン制がどうのこうのって言ったのはお前たちのほうだぞ。
わらわは相手のルールに従って、その上で勝利するのが曇りなき勝利だと思ってるから、よくわからんターンとやらにも深く突っ込まなかったのに……
ぷんぷん!
その気になれば貴様ら血祭りなんだぞ!
くそう、くそう。
「ムスッ」
「カヒュー、カヒュー」
「……なあ魔王。こういう時はどう処置すればいい?」
「ちょっとマクセル、敵に助言を乞うなんて」
「どけ。なっとらん。マカはわらわのパンチで恐らく
「にゃんかヤバそうだミャ」
「ヤバいどころかほっとくと数分後には心室細動により確実に死ぬだろう」
「え、そんなに私ヤバいの!? ぐ、ぐふ!」
同時に呼吸の乱れも見られるから肺にも少なからず強打の影響が出ているだろう。
ふふ、我ながら様子見で殺人的なパンチを出したものよ。
もしナイトクラスタで攻撃低下してなかったらマカはミンチより酷い惨状になっていたかもしれん。
しかしどうしたものかな。これを治すには電気で心臓にショックを与えて正常化するのがいいのだが。
わらわは滅多なことでは魔法は使わない主義だし、こやつらは時止めとかワープ以外に技が使えるのかわからんし。
まあでもとりあえず解決策を教えてやるか。
こんなので死なれたら寝覚めが悪いし、なにより本気の相手を倒してこそ真の勝利だからな。
「この中に電撃魔法を使える人はおりますかー」
「厶……なんだかキャビンアテンダントみたいだな」
「キャビンアテンダントってにゃんにゃ?」
「いや、なんでもない。ところで魔王よ、電撃魔法はこのマカしか扱えないのだが……」
「ぴくぴく」
「え、マジ?」
………‥……。
マカよ、永遠なれ──────!!
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