第5話
さて、クドクドと脱線してしまったがそろそろセーラとの決着をつけるとしよう。
結局のところ説明するよりも実際にぶっ倒すのが一番分かりやすいからな。
「さあ来いセーラ! わらわを殺す気でもういっちょ!」
「何度目のもう一度だみゃ。一向に終わらんミャ」
「そうツレないことを言うな、ジャムよ」
「シャムだミャ! セーラ、あのちんちくりん魔王を倒しちゃえ!」
「だ、だからあたしには無理だって……」
「
「あーもう! やるけどさぁ!」
ふむ、ずさんな攻撃だ。
やはり多少煽っても同じか。
何度目の完敗だろうな、セーラよ。
所詮そなたは手短に殺すのが上手いだけで、戦いが上手いわけじゃなかったんだ。
今まで戦った時を止める者たちの中でも最弱だ。
「セーラよ、目に見える現実だけに頼り過ぎだ」
「!?」
「そなたが今まで刺していたわらわは……ただの残像だ」
「分身を作っていたのね……」
「違うよ、分身じゃない。残像だ」
「同じじゃないのかミャ?」
「別物さ。わらわは呪文が使えないから分身なんて作れないよ」
「魔王なのに魔法が使えないのぉ?」
今まで影が薄かった魔法使いのマカが口を挟んだ。
確かに魔法に精通する者からしたら魔王のクセに魔法が使えないなんて冗談に聞こえるだろう。
うむ。実は使える。
いや、使えるけどあえて使わないでいる。
なんでかって?
殴ったほうが早いし楽だからな。
「魔法が使えない……ということは、まだあたしにも勝ち目はある!?」
「お、いいぞセーラよ。目に闘志が湧いているぞ。今ならわらわに勝てるかも!?」
「マクセル、お願い!」
「
「そうこなくっちゃなぁ!」
いいぞ、こういう展開は大好きだよ。
けどなセーラ、わらわを倒せるまで続けるつもりか?
ちょっとワクワクしたが、わらわは気変わりが早いんだ。
やっぱりそろそろ終わりにしよう。
(やれるわ! 魔法が使われてこないって分かれば、多少無理な攻撃しても反撃が怖くない! それに今まで刺してたのは残像ってことは、恐らく背後あたりに本体がッ!)
永遠のような一瞬が終わり、時が動き出す。
セーラは今までよりも深く攻撃をしたようだが、攻撃に力を入れすぎてバランスを崩しよろけた。
その無防備な背中には、”止まった時の中で負った致命傷”が無情にも敗北を語っていた。
……時が止まる直前の数瞬でわらわは凄まじい勢いでセーラの方へと近づいた。
あまりの速さに光が追いつかず、わらわが元いた場所には
臆病なセーラはわらわが残像を残して”後ろへ避ける”と思ったようだが、わらわはいつも”差し違いを覚悟で突進”していたのだ。
セーラはこれまでの人生で幾度も幾度も、決して動かぬ敵を最小限の時間で始末したのであろう。
それを裏付けるようにキレイに必殺の急所を狙ってくる悪癖がある。
その悪癖はどこを狙ってるか敵に伝え、僅かな覚悟を持って懐へ入り込まれたら破綻する攻撃であった。
要するに度胸比べでこちらが大差をつければ、わらわでなくとも誰でも勝てるのだ。
「ゴホッ……う、うああ!」
「セーラ! な、なんて深手だ!」
「言っただろう? 殺す気で来ないと死ぬと」
「セーラちゃんがやられるだなんて想定外だわ!」
「マクセル、早く手当をするミャ!」
「よし、
深手を負って横たわったセーラに手をかざしてマクセルが回復魔法のような事をしている!
バカめ、今お前たちは誰を相手にしてると思ってるのだ。
魔王だぞ!
勝ちにこだわる魔王だぞ!
そんな隙まみれでチンタラと回復に専念してるとな……
お前たちの背後からな……
応援しちゃうからな!
「おい、気をしっかり持たぬかセーラ!!」
「ぬぅ! 俺の耳元でデカい声出すな!!」
「あーーー! 回復魔法を外してるぞマクセル! ちゃんと死ぬ気で助けぬかァ! 死ぬぞ!」
「お、おう! ヒール!」
「ヘッタクソだなおぬし! そんな土手っ腹に手をかざしてヒールしても止血が間に合わんわ!」
「そうなのか!?」
「ホレ! ちゃんと手を傷口に突っ込む!」
「あっ、あっ、アァー!」
マクセルの腕を掴んでセーラの傷口へと押し込む。するとマクセルは情けなくアーアー言いながら動悸が激しくなった。そのせいでヒールも疎かに。なんて無能じゃ。
セーラはセーラでマクセルの手を傷口に突っ込まれても「マ、マクセルがあたしの中に……」とかほざいて痛がるどころか喜んでいる。
こいつわらわの攻撃をモロに食らったのにタフなヤツだな……!
「うう、セーラの中はなんて熱いんだ……」
「ほら、ここでヒール! こうしてダイレクトに回復をかけねばホントに生死に関わるぞ」
「分かった。|
「うんうん、これで大丈夫。よかったのぅおぬしら、わらわが親切で博識で最強だから命拾いしたな」
「そもそもお前がやったんだミャ」
「やっぱり魔王は滅ぶべきね」
「本当にそうだろうか? 俺は……」
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