幕間 ランコムの回想
ハグル王国の特殊任務部隊の中央管理室の室長室で、ランコムは明るい茶色の髪を指で後ろに
ランコムとクロエの出会いはランコムの若手工作員時代に
茶色の髪と目。記憶に残るような飛び抜けた美しさも醜さもない。
「あの子、もしかしたら向いてるかも」
そう思って彼女の両親に「貴族の屋敷で使用人を探している。あの子を預けないか」と持ちかけた。両親は見知らぬ若い男の提案を一度は断ったが、生活が苦しかったらしく、金額を提示したらすぐに受け入れた。
クロエが養成所に入ってから、ランコムはまめにクロエの話し相手になった。クロエは任務に就けば高い報酬が得られると知ると、自ら進んで養成所の課題に取り組んだ。やがてクロエはメキメキと頭角を現し、十五歳で仕事を始めると五年もしないうちに成績でトップに躍り出た。
ランコムはある日、クロエの家族の死を知った。彼女は大きな仕事の最中だった。
クロエは家族思いだ。今、平常心を失われたら困る。だから家族の死を告げなかった。
しかしクロエの腕を必要とする仕事は次から次へという状態で、家族のことを伝えられずにいるうちにクロエは体調を崩し始めた。その上ランコムの結婚話が出た後はどんどん痩せていった。
クロエにしばらく休養を取らせたが、休養し始めてすぐにクロエは失踪してしまった。
どうやら
波が荒く、潮の流れが速い場所だったからか、クロエの遺体はいまだに見つからない。
『風に飛ばされた帽子を取ろうとして落ちたようだ』と上の人は判断したようだが、ランコムはクロエの死には納得できなかった。彼女は精神的にとても強い女性だっただけでなく、用心深い性格だったからだ。
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