第二章 城塞都市リンドルンガ (7)

 今日は朝から図書館へと行く。宿を出て中央広場まで歩く。少し遅めに出たので道は人であふれている。

 なんとか辿たどり着き図書館の中へと入る。

 扉が閉まった瞬間、外の音が消えた。図書館の中はシーンと静まり返り、外とは別世界のように感じる。通路をぐ進むと受付だ。

 ギルドプレートを見せて銀貨一枚と大銅貨一枚を払う。

 受付横の扉を開けるとそこは大きな本棚が所狭しと並び、蔵書の数もかなりの量だと分かる。他に人はいないようだ。

 中にもカウンターがあり忙しく職員が動き回っている。

 これはどこに目当ての本があるのか分からんな。と思いカウンターに行き、魔導具関連の本がある場所を聞くと職員が案内してくれた。

「ここからここまでが魔導具関連となります。あと錬金術は向かいの棚にありますので必要であればご確認ください」

 職員はお辞儀をしてカウンターへと戻っていく。

 まずは魔法陣に関する本を探す。えーと、あったあった。と、一冊持って閲覧席に座る。

 紋様を纏めた紙を横に置いて重複しないように確かめながら書き写していく。もちろん、無属性魔法で。

 時間が過ぎるのは早い。昼食もとらずに調べ続けてもう夕方だ。

 明日も来ようかな。と席を立ち本を戻す。帰りに受付で銀貨一枚を返してもらい宿へと帰る。

 まだ使いたい紋様は見つかっていない。明日も頑張ろう。


 翌日も朝から図書館。

 慣れたものでドンドンと内容を確認しながら紋様を書き写していく。もう既にA4の紙で三十枚分ある。残りの用紙は四十枚。足りるかな?

 足りなくなったら明日は聖域に行き、パンを焼くのと野菜や果物採取、紙の作成かな。

 この日も昼食もとらずに調べ続けた。最後は職員に「もう閉めます」と言われて慌てて帰ったほどだ。

 う~ん、まだ魔導具関連の本はある。調べられたのは魔導具関連のうちの四十%ほどだ。目当ての紋様はまだ見つけられないが、いくつか組み合わせることで似たような効果は再現出来そうだ。本命が見つからなかったらそれで代用するつもりだ。

 残りの紙も少なくなってきたので、明日は聖域だ。


 翌朝、聖域へと転移。朝食をとったらストック用にパンを焼く。今回はバーガーバンズも大量に焼く。それが終われば採取。

 昼食をとったら午後は紙作り。今回は大きく作って最後に裁断する。

 一枚目を作っている時に、ふと思う。書いていた時、引っ掛かりが気になったし厚みもかさり気になった。ふむふむ。

 結界で上下に大きなローラーを再現する。隙間を調整しつつ何回か通すとかなり表面がツルツルとなり薄くなった。これは良い。

 流れ作業でローラーをいくつも設置し、紙を流すと自動でいくつものローラーを通るようにした。

 あっと言う間に完成。後はまとめて風魔法の刃と無属性魔法で裁断して終わり。時間があったので厚紙も作り紙を纏めて最後に革で装丁して完成。これを六冊作った。挟んである紙はそれぞれ百枚。これで足りるね。余った紙はメモ用紙だな。それでも九十枚はあるが。

 今度は気軽に使えるけいせんが引かれたノートでも作るかな。


 翌日は朝から図書館。

 直接、自作で装丁した本に書き込もうと思ったが、あとで分類した方が使いやすいと思い直し、メモ用の紙に書いていく。

 途中、未解読の魔法陣の中から面白い魔法陣を見つけ出した。

 状態保存の魔法陣だ。

 解読が進んでいない古代書が並んだ棚から選んだ本に記されていたが、鑑定で読めるようだった。

 これはタイムリーだ。清書が終わったら使ってみよう。楽しくなってきた。

 夕方になって残りの分量を見るともう終わりそうだ。明日からはまた狩りと採取の日々に戻る。まだお金に余裕があると言ってもいつ何があるか分からないからね。

 帰りに雑貨屋さんに寄って店主とお話。話の流れでもし未解読の本があったら手に入れてほしいとお願いしたら、かなり安く手に入るらしい。古代語で書かれた書物は解読が進まず、遺跡から発見されても物好きが買うか、えは良いので飾るだけのために買うとかで値段は安いのだとか。

 それは良いことを聞いた。積極的に手に入れよう。鑑定様々だ。

 ふと疑問に思う。他に鑑定持ちはいないのかと……。


 翌日、ギルドでミリーさんに狩りの再開の報告がてら聞いてみる。

「鑑定持ちですか? いますよ。特に商人とか学者さんに多いですね」

 古代語について聞く。

「それが、鑑定スキルでは古代語が鑑定出来ないらしいですよ」

 そうなんだ……。俺、紋様も古代語も鑑定出来るのだけど……あれか、創造神のお詫びのお陰か?

 まぁ、それしかないよね。それでも紋様というか魔法陣が未だに解読出来ていない物が多い理由は分かった。

 午後、まだ早い時間だが狩りを終わらせる。今日の収穫はボアが七匹にディアが九匹。充分だ。

 上空を鳥の魔獣が優雅に飛んでいる。あれはたしかビッグバードだな。遠いけど鑑定。なんとか鑑定成功。

《ビッグバード(G+)………結構いける》

 なんか鑑定さん近頃砕け過ぎてないか? まあ良いのだがね。狩るか、とビッグバードの進行方向に結界を生成。届いた。

 ゴンッという音とともにビッグバードが完全にピヨって墜落。墜落中に結界で捕獲。引き寄せてとどめを刺す。

 成功成功。

 血抜きをして解体。羽をむしるのがメンドクサイ。内臓は今回は捨てる。胸肉ともも肉のみを持ち帰る。他は廃棄。ああ、骨は持ち帰ろう。とりガラ鶏ガラ。デカいけどね。ビッグバードだけに。

 冒険者ギルドで換金が終わり、宿への帰りに雑貨屋さんへと寄ってワインを買おうとしたら、年齢を尋ねられた。そういえばこの国の成人年齢を把握していなかったと思い、恐る恐る十五歳だと答えると、「ちょうど成人年齢だから大丈夫だね」と言われた。危なかった……。ちなみに白ワインはないらしい。瓶というよりかめだね。大きい。でも安い。収納収納。

 宿の部屋に戻るとジャガイモを出してかたくりを錬金術で抽出精製。簡単便利、錬金術。イメージで出来ちゃう。有能だ。

 デカいビッグバードの腿肉を出して切り分ける。塩、胡椒をしてみ込んだら片栗粉をまぶす。醤油、蜂蜜、赤ワインで照り焼きソースを作り、魔導コンロを出してフライパンを熱していく。火加減はコンロとフライパンの間に結界を挟み、熱の伝導率を調整。

 皮目から焼き、火を通して裏返す。丁度良いところで照り焼きソースを掛けて絡めて出来上がりだ。

 バーガーバンズをナイフで横からカット。レタスと薄切りの玉ねぎを載せて上からマヨネーズを掛ける。その上に照り焼きチキンも載せてバンズで挟めば完成。

 あ~腹減った~。さて実食!

「!」

 美味いよ美味い。ああ、涙が出るね。鑑定の「結構いける」に納得だ。美味い。

 少しだが異世界も悪くないかなと思える。



   ~試し読みはここまでとなります。続きは書籍版でお楽しみください!~

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