第二章 城塞都市リンドルンガ (5)

 海がダメなら米は? ということで翌日に朝から食料品店に行くと、

「ライシィのことかな? それは一度入ってきたが、今は無いな」

「ちゅっ、注文出来ます?」

「無理だな。東国から流れてきたんだが、そっちは長いこと紛争中でな。無理だ」

 ああ、神はいないのか? いるのは知っているけど。

 ダメだ、立ち直れない。

 気分を変えて醤油が出来たんだからとも作る。塩を多く入れ過ぎたのか赤味噌になった。

 味噌が出来たということで味噌汁を作る。

 魚の骨を焼いてを取る。そこにキャベツを入れて煮込み、味噌を入れて完成だ。

 あ~これも良いなぁ。ほっこりする味だ。

 いつか、いつの日にか海へと行ってやる。絶対だ。


 数日間、黙々と狩りと採取を続けていたらEランクになった。

「坊主、お前Eランクになったんだろ?」

「はい、なりました」

「なら、これを読め」

 買取カウンターでおっちゃんに冊子を渡される。

「これは?」

「周辺の簡単な地図と狩れる魔獣と使える部位が書いてある。そろそろ他の魔獣を狩れ」

「う~ん、何が良いですか?」

「ほら、ここに書いてあるアサルトボアとホーンディアだな。どちらもそんなに強くねえ。Fランク魔獣だ。だがな、お前と違って他の奴らはパーティーを組んでいるだろ。もちろん、収納なんてスキルもねえ。Fランクの安い魔獣なんて狩りゃしないわけだ。そこでお前だ。収納持ちでFランクを単独で狩れる腕前だ、頼む。アサルトボアとホーンディアは意外と需要があるんだが現在は在庫がねえんだよ。少し色つけても良いから狩ってきてくれ」

「そうですね。分かりました」

「そうか! やってくれるか」

 背中をバシバシと叩かれる。

 痛いんだけど……。


 翌日はおっちゃんに頼まれたとおり、アサルトボアとホーンディアを狩りに行く。この二種は森の浅い場所で単独で活動していて、慎重な性格なのか冒険者パーティーが近づくと逃げていく、と昨日貰った冊子に書いてあった。

 狩る方法としてはわなを推奨とあったが、今回は直接攻撃で何とかしてみる。まぁ、ボア系はね。上位種で慣れているからね。問題ないだろう。

 鹿系は今回初めてだが、前世では知り合いに狩猟に連れていかれて猟銃で鹿を狩り、解体してジビエ料理を地元の猟友会の方達と食べた記憶がある。意外と美味かった。

 まぁ、何とかなるだろう。

 冊子に書いてあると思われる周辺に到着。探知探知。いるな、いる。

 久しぶりに光学迷彩、消音、消臭を使って近づいていく。いたいた。

 アサルトボアだ。

 ボアの足元に落とし穴を作成。落ちる。消音の結界を上からかぶせて穴の中を水魔法の水で満たしていく。

 十分経過。どうやら死んだようだ。水を魔法で消す。喉を切って血抜き。水魔法も使う。内臓を取り出して穴の中に捨てる。解体はギルドにやってもらおう。収納して次だ。

 あまり狩られていないせいか、かなりの数がいる。ここまででアサルトボア三匹とホーンディア二匹だ。まだ昼にもなっていない。

 昼食を早めに済ませて狩りを再開。帰るまでに追加でアサルトボアが二匹、ホーンディアが二匹狩れた。

 合計でボア五匹のディア四匹になる。

 今日のところはここまでで帰ろう。

 城塞都市についてギルドへと到着。おっちゃんがいる買取カウンターへと行く。

「坊主、どうだった?」

「獲れましたよ。ボアが五匹にディアが四匹です」

「おお、そうか! ここでは出すのは無理だな。裏へ回ってくれ」

 と言われてギルドの裏へと回る。

「ここに出してくれ」

 収納からボア五匹、ディア四匹を出す。

「おお、状態が良いな。血抜きも問題ねぇ。中で待っててくれ。査定する」

 しばらくカウンター前で待っていると、大きめの銀貨を渡される。

「待たせたな。今回の査定は両方とも一頭二万リルだ。合計で十八万リルになる。大銀貨一枚と銀貨八枚だな」

 これで十八万リルか、しばらくしたら価格は下がるかもしれないが良いな。

 当分は続けよう。


 半月もボアとディアを毎日十匹ずつ狩り続けたら十日目で買取価格が十八万から十四万に下がり、半月経った今は十二万リルまで下がった。それでもまだ実入りは良いと思う。

 なぜか冒険者ランクもDランクになった。受付のミリーさんいわく、毎日こんな数を納品する冒険者はいないと言う。

 結構お金が溜まってきたので、今日はお休みにする。聞いたら魔導具店なんて店があるらしく行ってみることにした。

 教えてもらった店の前に到着すると魔導具店というのは怪しい感じの店かと思っていたら、前世の家電量販店みたいに明るく整然と魔導具が並んでいる。

 店内を見て回る。店員はニコニコして立っている。

 魔導具の前には値段と簡単な説明が書いてある。どれもお高い。形はあまり良いとは言えない。全部に言えることだが魔法陣がしで構造もシンプルだ。

 どれも魔法陣の真ん中に魔石がめられていて、魔法陣が魔石から魔力を取り出して機能するようだ。機能も中途半端で洗練されていない。

 鑑定で分かったのは魔法陣は粘土と魔石を粉状にした物が溝に埋められて魔法陣を形成している。

 書かれている記号も分かった、鑑定で紋様の機能が分かる。

 もしかしたら自分で作れそうだ。

 いくつかの魔導具を実演してもらった。コンロのような魔導具は火の調節が出来ないので貴族のお屋敷ではコンロの魔導具を複数置いて使い分けているようだ。

 水が出る水筒。生活魔法の飲水があるので使い所が限られる。他にもあったが微妙なので割愛。

 聞いたら材料自体は雑貨屋さんでもそろえられるとか。ただ魔法陣を刻むのが難しいのと魔石を粉状にして粘土に混ぜ込む配合などが難しいとか。

 まぁ、この辺も鑑定で分かったのだが。

 魔導具に興味が湧いたので何か本が無いか聞いてみたが、この都市にあるとしたら図書館か雑貨屋さんに少しあるようだ。

 ありそうな雑貨屋さんを教えてもらい行ってみる。

 雑貨屋さんに入ると色々なものが置いてある。奥に行くと豪華なケースがあり装丁の立派な本が並ぶ。みんな高そうだ。

 値段を聞くと最低価格は金貨一枚からとなっていた。買えない。

 ふと横に目を移すと何やらワゴンの中に装丁が汚れていたり破損したりしている本が無造作に入れられている。

 聞くと状態の悪い本が数多くあるのだと言う。一律銀貨二枚。

 確認すると同じ本が二、三冊入っている。その中からいくつか手に取り中を確認すると、どこかの学校のテキストのようだ。小学生レベルから高校レベルの物まで様々だ。中にまとめて置いてあるものを手に取ると、それは魔導具・錬金術のテキストだった。

 初級のテキストであまり厚くはない。他にも関係する本がいくつかあり、魔導具・錬金術のテキスト三冊とこの国の歴史書一冊、程度のよい物を選び購入。

 良い暇つぶしが買えたな。明日はギルドで図書館の場所とかを聞こう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る