第二章 城塞都市リンドルンガ (4)
この日はお金に少し余裕が出来たのでパンを作りたいし聖域にも行きたい。
まずはマッドボアの魔石を収納から出して自分の魔力に入れ替えて宿の部屋に置いておく。
そして転移しよう。ああ、聖域にある魔石を感じられるよ。転移。
一瞬で視界が切り替わり懐かしい我が家に到着する。まぁそれほど日は
まずはパン作り。これもサクッと完成。久しぶりに野菜類と果物を採取。もちろん、生命の実も一つ齧りながら残らず採取する。
そうだそうだとクリーンを掛けた器を出して、その中に昨日採取した麹カビを入れる。軽く
さて実験だ。器を結界で覆う。
時空間魔法を意識して発酵促進と念じる。ああ、なんということでしょう。見る見ると炒った小麦が白い菌に覆われていく。出来た。麦麹の完成だ。ぐふふ。
よしよし、次だ次。大豆を洗って水につける。これも時空間魔法で
それらと麦麹を混ぜ合わせて塩水を入れる。もろみの完成。そして結界で包み込んで発酵促進! ハハハハ! ポコポコとなって、少しずつ量が減ってきた。
量がだいぶ減ったところで完成だ。
結界で覆ったまま、その下に容器を置く。そして結界内を上から圧縮。結界下部に極小の穴をいくつも開けるともろみが絞られて醤油が滴り落ちてくる。少し濁ってしまったが許容範囲だ。
醤油を一舐め。
「美味い!」
絞った醤油に八十度ぐらいの温度で二十分程度火を入れる。はい、完成だ。これで発酵は止まるし長持ちする。なぜか風味も良くなる。
これでカツル!
もろみはとっておく。これは酒のツマミとしてもよし、米が見つかれば炊いたご飯に載せて食べるもよし。楽しみだ。米はどこだ?
もう昼過ぎだ。昼食をとったら宿の部屋へと戻り、そのまま宿を出る。
食料品を売っている店に行くとそら豆っぽいのが売っていたので購入。鑑定結果はこちら。
《ソリラ豆(そら豆)…………食べられる》
いつの間にか異世界の名前が前に来ている。まぁ良いか。
食料品店のオヤジから毎日早朝に東門の広場で市がたっていると聞く。これは行かねば。
さてと暇なので冒険者ギルドに行くと何やら騒がしい。誰かが何か
立て込んでいるようなので帰ろうかと思えば、知らない奴に指を差される。
「商会長あいつです!」
「何! お前かクレアに失礼なことをしたのは!」
こいつは見たことあるぞ。初日に絡んできた三人のうちの一人だ。
「おい、ギルドマスター! こいつの冒険者の資格を
「なんでそんなことをしなければならない?」
ギルドマスターは
「何! ギルドは我が商会に逆らうのか!」
「ああ? おい! たかが辺境の商会ごときがギルドに
「ふん! ギルドごとき造作もないわ」
「そうかそうか、よかろう。トルド商会と言ったか? 我がギルドはそのトルド商会からの一切の依頼を受け付けない。これは全ギルドへと通達する」
「ふん、あとで吠え面かくなよ」
そう言って立ち去ろうとすると、男が駆け込んでくる。
「商会長! 大変です」
「何だ! どうした」
「こ、これを」
男は紙を手渡す。
「な。何だと! バカな!」
それを見たトルド商会長は急いで出ていく。
とりあえず訳も分からず買取カウンターへ行ってみるとギルドマスターに肩を叩かれる。
うん、分からん。
翌日、耳にしたことはこうだ。トルド商会は各所で横暴な振る舞いをしてギルドからは依頼拒否、領主様からは領内での商いの禁止、追放を命じられた。
自業自得だな。
その話も実は朝の市で聞いた。市は盛況で色々な食材や物が所狭しと売られていた。
チーズとか牛乳? とか蜂蜜もあったので購入。砂糖は高過ぎて見送り。お金を
この日も採取と狩りをして過ごす。幾日かして冒険者ギルドに行く。
「おい、聞いたか。この都市から王都方面へ向かう街道でゴブリンの群れが出たってよ」
「ゴブリンごとき大丈夫だろ」
「それがな、かなりの群れだったらしくてな。移動中の商会の集団を襲って、商会の奴らは全滅だとさ」
「? どうやったら商会の集団が全滅するんだ? それほどのゴブリンの群れだったのか? あっ! もしかしてゴブリンキングがいたのか!」
「落ち着け。そうじゃねぇ。ほらアレだ例の商会だ。はぐれの冒険者崩れを護衛にしてたらしいが、ゴブリンの集団にあった途端に商会を見捨てて逃亡したらしい」
「ああ、トルド商会か」
「おい声がでけえよ」
なんて話を耳にした。何か御
え~と、ホーンラビットは飽きてしまった。他の動物性タンパク質を摂りたい。ということで川の場所を教えてもらった。
はい、現在向かっている。
食料品店のオヤジに川魚は需要はあるが近づいた人を襲う魔魚が多くて誰も獲りに行かないと聞いている。これは豊漁の予感。
さて川に到着した。キラキラと
ピチャンと魚が跳ねる。
川の中に大きな結界の箱を作成。水だけ透過させながら引き上げる。
おお! ぴちぴちした魚が大量だ。
うん? キモい魚がいるな。と鑑定、
《ピラニー(G-)魔魚…………不味い》
もう一尾鑑定する。
《バスニー(G)魔魚…………ペッ! ペッ! 激不味》
何か鑑定さんもお断りな感じ。
《イナワ…………食べられる》
《ヤナメ…………食べられる》
《マネス…………食べられる》
他にはこの三種が食べられそうで、全部で二十尾ほど……魔魚は二種合計百十八尾とか。
魔魚だらけだ。これでは誰も川魚を獲りに来ないのも
結界の条件変更。川の中にもう一つ結界の箱を作り、食べられる魚だけ透過。うん、出来た。
残った魔魚は討伐。
何回か繰り返して獲れた食べられる魚は四十四尾で全て締めた。釣りに連れ出してくれた上司よありがとう。ここで役に立った……討伐した魔魚は三百二尾。
さてお昼だ。
もういいか? もう少しだ。
ああ、もういいよね。大丈夫そうだ。一尾を手に取り背からガブリ。
ああああ、美味い! 遠火で焼いた魚は香ばしく、そして身がプリッとしている。味は悪くない。川魚特有の臭みも無い。
美味いぞ。
そして醤油を少し垂らしてガブリ……ああぁ。まさに至高。美味すぎる。
何かが
これは魔魚を
刺身。美味いだろうなぁ。そうだわさびが無い。これは海に行く前に探さねばならない。
城塞都市に戻りギルドへと行く。
「え? 海は遠いの」
「はい、海に向かうには、北以外へ行くしかないのですが、いずれの方向も最低でも三カ国越えて行かなければならないです。それも敵対国家の場合は通行も出来ません」
と受付のミリーさんに冷たく言われる。
「はぁ~」
肩を落として宿へと帰る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます