第一章 魔獣の森 (6)
翌日から色々と試してみた。二日間で何とかそれらしいことが出来るようになった。やり方としてはまぁ、結界を体の表面に
これは常時発動して習熟を図ろう。
そういえば収納魔法だけど、容量無限で時間経過もないっぽい。
時間経過と容量が知りたくて、毎日採れる食料をなるべく収納してきた。鉱石類も一週間に一度は採掘している。もう二年分だ。かなりの量が収納されているがいっぱいになる気配が無い。
生命の実はあまりにも便利なので毎日欠かさず収穫し、今では毎日木を丸坊主にしている。収納数は千個を軽く超えている。途中で気がついたら食べているが、もちろんまだ増えるだろう。野菜や果物はどれだけ採ったかもう分からないくらいだ。
去年、自分の中で少しの間ブームだった陶器作りで作った皿やカップ、
これでもなるべく失敗作は処分、とはいってもただ単純に埋めているだけだが、翌日には無くなっているから不思議だ。
武器もいくつか作った。西洋剣各種や刀にナイフなどの他に
ああ、ここから抜け出したい。冒険したい。魔導具とか作ってみたい。でもハーレムは勘弁。若い時のトラウマがね。今は十四歳だけどもね。もちろん、彼女がいた時期もあったしそれなりの経験もあるけどね。色々とあったのよ。色々とね。思い出したら悲しくなってきた。ぐすん。
まぁ、それよりも異世界ライフが大事だ。
今日は猪狩りだ。魔力も結界で隠して光学迷彩と消音を掛ける。のんびりと猪を探す。はい、反応あり。ゆっくりと近づいていく。うん、穴を作って、ハイ、落ちた。穴の上に消音を展開。はい、水、ハイ、氷にして十分待つ。
穴に近づき氷を解除して猪を収納。穴を埋める。それでは転移と思ったところで探知に反応。南から何か近づいてくる。バキバキという音とともに熊公が現れた。鼻をクンクンさせるとこっちを見た。ヤバイ。見た目もヤバイ。腕が六本とかキモい。
転移。
結界の境界の前に転移してすぐに結界内に入る。ヤベェ、あいつこっち見やがった。匂いか? 何か対策が必要だな。そういえば最近は匂い対策してなかったな。反省だ。
闇魔法で何とかならないかな? 明日試してみよう。
翌日、闇魔法で匂い対策が出来るかやってみたらあっさり成功。影の中に隠れるとか出来ないかな? うん? それは影魔法? 分からん。
闇魔法って色々隠すのに向いているのね。他にどんなことが出来るかな? 少し考えよう。
それから色々と試行錯誤して闇魔法で夜目が利くようになった。夜でもバッチリ見える。始めは夜目は入ってくる光を増幅するから光魔法だと思って試したら目から光が出たのは内緒。
認識阻害というか存在や動きを分かりづらくすることも闇魔法で出来た。これに光学迷彩を合わせると
闇魔法はこんなもんかな? 狩りがやりやすくなった。夜の狩りはしないけどね。
あと、狩りの最中に鑑定してたら
食生活も胡椒のお陰で料理の味が引き締まりさらに向上した。これも狩りの度に収納している。
あとは砂糖も欲しいな。
南にあるかな? サトウキビとかね。ちっ熊公がいやがるぜ。全く迷惑な熊だ。いつかギタンギタンにしてやる。
さて十五歳になった。一生この結界の中で過ごすのだろうか? たしかに俺はあまり人付き合いが得意な方ではないが、そんな俺でも人恋しくなってきた。周りに出る魔獣はSSSとかでストレスが
朝食でもとるかと家から出ると……。
「えっ、グリフォン?」
生命の実を取って食べているグリフォンがいる。どうして結界内に入れる? すかさず鑑定。
《グリフォン(ランク鑑定不可)…………食べられる……とても美味》
えっ? 食べられるの? とても美味? 違うそこじゃない、ランク鑑定不可って俺はたしか最高でSSS+としたはずだ。それがランク鑑定不可……。
グリフォンがこちらに顔を向ける。ムシャムシャと生命の実を食べている。目が合った。
何やら頭に言葉が響く。
《人間》
「はっ、へっ……」
《人間、聞こえてないのか?》
「え、ふ、は?」
《だからお主だ》
「お、俺ですか?」
あ~逃げたい。
《そうだ、なぜお主はここに入れる》
「こ、ここにですか?」
《そうだ、神の聖域にだ》
「え~と長くなりますが」
グリフォンに説明……すると笑われた。
《カハハハ、そうかそうか難儀であったのう》
「え、ええ、あの神様、こちらの話を全然聞かずに次々に勝手に決めて一瞬で消えましたからね。今度会ったらガツンと言ってやりたいです」
《ああ、そういえば何千年か前に会った時も言いたいことだけ言って去っていったのう》
グリフォンは遠い目をする。
「会ったことがあるんですか?」
《これでも神の
「神の眷属ですか?」
《そうだ神の眷属だ。他にも神の眷属は三体いる。一体はワシと同じグリフォンだ。他の二体はドラゴンだ。エンシェントドラゴンだな。エンシェントドラゴンはワシらより強いがの》
「はぁ、そうなんですね」
《聖域から出たことがあるのか?》
「はい、少し出ました。その時にデカいゴリラと腕の多い熊と遭遇しましたよ。何とか無事に逃げられましたが」
《よく無事だったのう》
「ええ、何とか」
《北へは行ったか?》
「はい、崖まで」
《その上は?》
「行っていません」
《そうかよかったのう。あの上にはベヒモスが数頭いるぞ。ワシよりは弱いがそこらにいる六本腕の熊よりもかなり強いぞ》
「えっ!」
《それにの、崖の上の山の雲が掛かっている上にも属性
ああ、鼻水が出た。崖の上に行かなくてよかったぁ。これからももちろん行かない。
《そうじゃ、ここで会ったのも何かの縁じゃ。この森の南の森を越えたところにある人族のいる場所の近くまで連れていってやろうか?》
「えっ! 良いんですか?」
《良い良い》
ああ~と思い出す。この我が家にも思い入れが出来たなと。
《どうしたのじゃ?》
「えっと、もうこの場所には戻れないのかと思いまして」
《うむ、お主は転移が出来るか?》
「出来ますが、最大でも探知範囲が限界でして」
《そうか、お主はワイバーンクラスの魔石は持っておるか?》
「はい、あります」
そう言って収納から取り出す。
《おお、それならばの、それに無属性魔法で自分の魔力を満たすのじゃ》
「無属性魔法で?」
《そうじゃ》
言われたとおりに無属性魔法で自分の魔力を流し込む。始めは少し抵抗があったが、徐々に自分の魔力が侵透していき、緑の魔石から無色透明な魔石となった。
《お主、筋が良いの。それを家にでも置いておくのじゃよ。それが目印となってどんなに遠くからでも転移が出来るはずじゃ。それにの、その魔力純度なら百年は持つのう》
グリフォンは目を細める。
「そうなんですか? 分かりました」
我が家に入って部屋の机の上に魔石を置き、外から転移を使ってみるとたしかに魔石を感じられる。
《では行くか?》
「はい」
《準備は良いのか?》
「はい、全て収納に入っています」
《そうか》
グリフォンが
「よろしくお願いします」
そう言って乗る。背中が凄く広いし目線が高い。
《ではいくぞ》
グリフォンが羽ばたくと、あっという間に上空に到達する。そこから眺める景色はまさに圧巻だった。
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