第一章 魔獣の森 (4)

 朝目覚めると、せっかく方法を覚えたのに自分自身を鑑定していないことに思い至って試してみる。

ありもと こうへい(十二歳)能力…………状態:良好》

 と出る。スキルとかも知りたいと念じてもう一度鑑定。

《有元 航平(十二歳)能力…………火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法、時空間魔法、無属性魔法、剣術、収納魔法、遠見魔法、鑑定魔法、探知魔法、結界魔法、生活魔法……状態:良好》

 剣術とか持ってたんだ。たしか神が剣もなんちゃらとか言ってたからそれでかな。レベルとかは無いのかと鑑定するも変わらず。HPとかMPとかステータスも見たいと念じるも表記は変わらない。

 その辺は数値化出来ないのか鑑定のレベルというか習熟度が足りないのか、これは鑑定を積極的に使って習熟度を上げてみようと思う。何か変わるかもしれない。

 でもアレだな、習熟度とか結構早く上がる気がする。再度鑑定。

《有元 航平(十二歳)能力…………火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法、時空間魔法、無属性魔法、剣術、収納魔法、遠見魔法、鑑定魔法、探知魔法、結界魔法、生活魔法……状態:良好……創造神のお詫び》

 あっ何か出てきた。創造神のお詫び……あの神は創造神だったのか。お詫びって……。結局、何がどうなって死んだのか分からんし……。まぁ、良いか。考えてもしょうがない。

 さてと今日はどうするか……東から太陽が昇るとしてゴリラと熊の戦いを見たのは南だな。今日は北に行ってみようか。

 朝食をとったあとは北に向かう。もちろん、あちこち鑑定しながらだ。二㎞ほどで道っぽいところを通過。そのまま北へと進む。

 大体五㎞ほど歩いたところで森が切れる。目の前には崖の壁。見上げると絶壁が三百mぐらいの高さでそびつ。

 右を見ても左を見ても崖の壁。

 この辺の地理がよく分からない。今度木にでも登るかな? 何か考えよう。

 崖を鑑定。

《銅鉱石》

 とか出る。他の場所も鑑定。

《鉄鉱石》《石英》《石灰石》《銀》《すずいし》《石炭》《ダイヤモンド》

 とか色々見つかる。あと少量だがミスリルもあった。ファンタジー素材だ。

 それぞれ少量を土魔法でなんとか取り出して収納していく。何かには使えるだろう。

 さて帰ろう。

 我が家に帰ると周辺がどうなっているのか気になった。やはり木に登る?

 う~ん、と少し考えてそうだとひらめいた。外に出て結界を水平に出す。それにあぐらをかき、座る。

 さてさて上手くいくかな? と結界を動かす。

 おおおお! 動いた! 地面から高さ一mほどで前後左右に動かすことが出来た。結界すごく便利な子。

 よし、では上昇だ。とゆっくりと上昇していく。正面は南だ。

 巨木の高さを超えてさらに十mほど上空に昇る。どうやら薄い膜を抜けたようだ。

 ああ、これは絶景だ。目の前には森、森、森が果てしなく続く。左右もそうだ。後ろを振り向くと山がある。高さは……雲も突き抜けているほどだ。とても高い。それが左右に延々と広がる。

 もう少し高度を上げて南や東や西を見るが、人里はおろか草原も無い森、森、森だ。

 結界を降下させて降りる。

 先ほど見た光景を思い出す。どれほど行けば他の人に会えるのだろうか? そうするには森を抜けるしかない。外にはあの熊やゴリラがいる。何か方法を考えなければならない。結界に乗っていくのも良いが、空を飛ぶ魔獣にでも出くわしたら最後だ。

 もう少し、魔法の習熟を図り、熊やゴリラを倒せるようになろう。そうすれば肉も食べられる。


 それから毎日色々と試した。身体強化や切り傷程度なら水魔法や光魔法で治せるようになったし攻撃魔法も増えた。

 でもまだ熊やゴリラどもには太刀打ち出来ないだろう。

 生活環境も改善した。石英を砕きけいしゃを作り、草を焼き灰を作り、石灰石を砕いて、それらを結界に入れて火魔法で熱する。少しずつ溶けていき、混ざったところで結界を真四角の容器にして上から別の結界で潰してならす。冷えたら結界を解くとそこにあるのはいたがら。もちろん、それほど綺麗ではないが、光が入り雨風を通さなければ良い。それを複数枚作り我が家の窓に付ける。

 だいぶ生活水準が上がった。

 他にも結界の型でガラスのコップや皿を作り、鉄を溶かして鍋やフライパンを作った。包丁もね。

 結界で機械ハンマーを再現して無属性魔法でつかみ、鉄をたたく。それで伸ばして形を整え、包丁などを作成。

 大豆からは油を絞り大豆油を抽出。これでいたものを作って食べたりと色々やった。

 ガラス瓶にリンゴを入れて発酵させて酵母を作り、小麦をいてパンを焼いてみたりと食生活も少しずつ改善させる。


 そんなこんなで一年がち、十三歳となった。

 肉が食べたい。タンパク質は大豆でれるが、肉が食いたい。

 そういえば、熊とゴリラを鑑定してみた。自分の中でランクを下はG-から上はSSS+までと定義してみたら、熊はSSSでゴリラはSSS-だった。これは当分ここから出られないな。ゴリラはマイナスが付いているけど集団だしな。無理。Gよどこにいる? 一歩出たら最高クラスの魔獣とか勘弁してくれ。

 あああ、コツコツと能力を伸ばしていくしかないな。


 最近、この生活に少し飽きてきたかもしれない。季節は変わらない。一定だ。毎日毎日、特訓ばかり。

 スマホがあればな……。無い物は無い。

 暇つぶしに何か作るかな……。何を作ろうか……結界で絶壁の少し上の方まで調べて色々と材料は増えた。

 石炭とか硝石とか硫黄とかマグネシウムとかボーキサイト、黒鉛とかね。レアメタルとかもあったけど使いようがない。金も出たし各種宝石類もあった。粘土も各種あった。陶石もあった。

 今作れそうなのは黒色火薬とかかな? でも作っても魔法があるしね。

 出来れば魔導具とか作ってみたいけど作り方が分からない。

「材料がそろっていて今作れそうな物は……よし、あれを作ってみよう」

 収納から木片を取り出すと結界でミキサーを再現して粉々にする。それを結界の鍋で煮る。繊維までほぐれたところで結界で枠を作り繊維を入れる。

 水だけ透過するようにして結界で上から圧縮。乾いたら結界を解いてと……。

 粗いけど紙が出来た。

 次に黒鉛と粘土を使って鉛筆の芯を作る。それを木で挟んで圧着。ナイフで削って鉛筆の完成。

 日記でも書くかな。

 紙はA4サイズで七十枚。鉛筆は五本作成。木を無属性魔法の旋盤で削り、鉛筆のキャップを作成。良い出来だ。

 試しに少し鉛筆で紙に書いてみる。少し引っ掛かりはあるが許容範囲だ。だが紙の色が気になる。なんとかならないかと考えて、土魔法で鉱石のみを取り出したことを思い出して、紙に手を当てて色を指定して水魔法を掛ける。

 くすみがポロポロと落ちると紙は白くなった。成功だ。残りの紙にも水魔法を掛けて白くした。

 魔法万歳だな。

 物作りが終わってしまった。次は何をしようか……。

 そうだなと自分の服を見る。少し汚れているな……。光魔法を使おう。

 紫外線で汚れを落とすイメージで魔法を発動。ピカッと光り、光が収まると全身が綺麗になった。体がスッキリした。

 我が家の室内もこの光魔法で綺麗にした。良いな。う~ん、この魔法はクリーンと呼ぶことにした。これも異世界あるある魔法の一つだと思う。せっけんの香りとかつけられないかな? それは無理か。

 この日は時空間魔法に挑戦だ。転移を試してみた。目視出来る範囲でその場から目視した場所へと転移をイメージして魔法を発動。一瞬で視界が切り替わる。

 成功だ。

 今度は我が家から目視できない場所へと移動する。そこから我が家の前に転移を試みるも発動せず。

 う~ん、何かが足りない。なんだろうか。

 ふと、思いつく。

 探知魔法を発動。我が家の前まで探知範囲を広げる。そして行きたい場所をイメージする。魔法を発動すると、一瞬で視界が切り替わる。うん、我が家の前だ。

 成功した。

 これからは探知魔法の範囲を広げる特訓もしよう。出来れば十~三十㎞とか転移出来ると便利だろう。これからの課題だね。

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