第2話 打ち明けるわよ

「ねえミレナ」

「は、はい! ま、また名前を! な、なんでしょう?」

 いちいちそんなにビビらないでほしい。


 私は向き直してミレナを見つめる。

 ミレナは何を言われるのかとおどおどしているようだ。


「ミレナ。ごめんなさい」

 私は精いっぱいの謝罪をした。


「おおおおおおおおお嬢さま?! どうされたんですか?! やめてください、どうしちゃったんですか、本当に」

「今までのことをちゃんと謝ろうと思って。私、あなたに、いえ、あなただけではないわね、みんなに謝らなくてはいけないわ。いままで本当にごめんなさい。ミレナ、あなたは最後まで、最後まで私の側にいてくれて」

「なな、なな、なんのことでしょう? お嬢様。メイドはお嬢様に付き従うのが役目でございます」

 そう言うミレナの顔は青ざめて見える。


 今にも倒れそうだ。

 私は彼女の手を取り両手で包み込むように握り、その手を額に押し当てるようにした。


 この国では最上級の謝罪を意味する動作だ。

 前世ではやったことはないけど。


 しかし、私の行動は予想外だったようで、ミレナは戸惑っている様子だった。

 だけどもう、これ以上自分の気持ちを隠すことはできそうもない。

 前世では、処刑されるその時まで私を唯一人として扱ってくれたミレナのことを考えると涙がこぼれてきた。


 私はミレナの手を握ったまま続ける。


 ミレナは顔を真っ赤にしてあわあわとしている。

 そして少し落ち着いたところでもう一度口を開いた。


「ねえ、ミレナ。今から話ことは誰にも言わないでおいて。私とあなただけの秘密にしてくれる?」

「も、もちろんです!」

「ありがとう。あのね、実は私……」

 私が全てを告白すると、ミレナの目からは大粒の涙が溢れ出してきた。


「ああ、なんてこと。お嬢様、それはお辛い思いをなされましたね」

 信じてくれているのだろうか?


 ミレナならわかってもらえる気がする。

 私のことをいつも見ていてくれたのだもの。


「お嬢様。それでは処刑を回避するために出来ることをやっていきましょう!」

「え?」

「せっかくその状況を体験されて戻られたんです! これはきっと神様がやり直せって言ってくださってるんですよ!」


「そ、そうかしら?」

「そうです!」

 なんか違う気もするけど……。


 それにしてもミレナがこんなに元気になるなんて思わなかった。

 これから大変なことになりそうな予感しかしないけど、今はただ、ミレナと一緒に頑張ろうと心に誓った。


「ありがとう、ミレナ。そうよね、わかっているなら回避できるわよね!」

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