第17話 白夜極光コラボ2

やんわりとオリハルコン取りに行けないかと頼んでみてもダメだった。

そんなぁ。大塚君に大見得切っちゃったんだよね。

どうにかして入手したいなぁ。

あ、そうだ!


「ねぇねぇ、呪いの効果見てて思ったんだけど、僕の常用してるポーション類も同じ効果あると思うんだけど飲んでみてよ」

「藪から棒になんの相談だよ。もっと事前に前振りしろよお前」

「だって、どうしてもオリハルコン欲しいから。もしこれが訓練になるんなら、こっちだって提供できるしさ、どう?」

「まぁ、多少の耐性はあるし、飲んでみても……ウボァー!!」


コップに入れた意識拡張ポーションを一気に飲み干したキングは、その場で卒倒した。手足をぴくぴくさせながら口から泡を吹いている。

多少耐性を持ってたところでこんなもんか。


<コメント>

:軽いお願いで劇薬飲ますな!

:キングーーーー!!

:死んだ!?


「死んでないよ。今頃いろんな感情が爆発して整理しきれなくなってる頃かな?」


<コメント>

:ミコト様はこれ飲んでよく平気っすね

:まじで常用してた人の耐性ときたら

:これをしおりんが飲んでたってほんとぉ?

:新しい扉開いたらしいぞ

:あの精強なSランクが卒倒するってどんな劇物だよ!

:キングー!

:呪い耐性あるキングが一発でダウンしたぞ!?

:草

:これワンチャンミコト様も探索行けるんじゃね?


いやー、僕は戦闘力が皆無だから。きっと足手纏いになると思うよ。

と、言うわけでさらに二つコップを用意し、ガイウスとトールに手渡す。


「はい、二人の分もご用意したよ。グッといって」

「いや、これ飲むのはちょっと」

「俺たちの中で一番耐性のあるキングがこの様なのに飲めってか?」

「僕も飲むからさ。さぁさぁ」

「よし、じゃあせーので行くぞ!」


三人で見つめ合い、せーので一気に呷る。

そして僕以外が卒倒する。

ウケる。


「これぐらいでグロッキーになるとか不甲斐ないなぁ」


僕は一気に飲み干して、二人はコップの半分も飲まずに卒倒してる。


<コメント>

:ミコト様、なんで平気なん?


「平気ではないが、慣れだな。僕はさらにここから並列思考ポーションを服用する」


<コメント>

:そっちもヤバそうな香りするんですがそれは


「まぁ、熟練度200の入門みたいなもんだから。意識拡張ポーションでダウンしてる程度で服用はお勧めできないかなー」

「ぐぅ、ぉおおお! 耐えたぁ!」


<コメント>

:キングおはよう

:耐えれてないです

:みっともなく泡吹いて寝てましたよ?

:だいたい三分くらい?

:モンスターの前では殺されても文句のない隙だったわ


「まぁそう言うなよ。それで、どう? 呪い対策になりそう?」

「呪いが可愛く思えるぞ。一〜三層の対策には良さそうだ」

「じゃあ次はこいつだ」

「絶対体に良くないやつだろこれ!」


コップの中には玉虫色の発光した液体が注がれている。

ほんのり微炭酸で、シュワシュワとコップの縁に泡がはじけている。


「グッといって」

「ええい、ままよ!」


キングは発光した液体をゴッゴッと勢いよく飲みきり、白目をむいて顔面から床に倒れた。南無。


<コメント>

:キングーーーーー!!

:やっぱりこうなったか

:人類には早すぎた薬品

:呪いのスペシャリストが卒倒する薬品とは?


「僕はかれこれ10年世話になってるが?」

「ぐぉおおあ! 耐えた!」

「んぉお、はぁああ……何分経ったっすか? まだ手足が痺れてるっす」

「おはよう二人とも。ダウンしてた時間はおおよそ5分かな? キングは3分で起きたよ」

「二分のタイムロスか。何回死んでたと思う?」

「数えきれないほどっすね。三層〜はとにかく数が多いっすから」


<コメント>

:ここにきて新情報

:さっきから悲報しかねーだろ! いい加減にしろ!

:アビスがマジアビスな件!

:私、アビス内のモンスターについて知りたいです!


呪いの耐性で大体の検証ができたので、モンスターの生態講座が始まった。

案の定、既存のモンスターが可愛く見えるレベルの凶悪さが際立った。

羽の生えたライオンが、カメレオンのように擬態して、群れで襲いかかってくるなどなど。


中には人間をみみずの友達か何かと思ってる馬鹿でかい鳥が、餌としてヒナに分け与えるなど様々だ。


特に厄介なのが上空へと連れ去られる事態。

呪いというのは降りる際にはなんともないが、戦闘中に上に上がると突然襲いかかる悪夢の総称。

空を飛ぶモンスターが特に多い三層では何かと頭痛の種らしい。


なお、呪いの効果がエグくなる四層、五層にもこの手の類がわんさか居るとか。

例のオリハルコンが好物のモンスターも馬鹿でかい蝙蝠だというのだから、まさに地獄に相応しい場所なんだとか。


<コメント>

:それに手足麻痺した状態で挑むのか

:三層、前後不覚になってるのに上空に拉致されるのえぐい

:でかい鳥とか、餌にされそう

:実際されてる件

:人骨いっぱいありそうな鳥の巣ですね

:そもそも、そこで積んでるようじゃオリハルコンも無理なんだが?

:三層でも有用な鉱石とか取れないんですか!?


「なくもない、がこいつは納得しなかったな」

「ああ、オリハルコン以外いらないって言ってたな」

「だって実験に耐えられそうな金属が、オリハルコン以外ないんだもん」


<コメント>

:もん、じゃねーんだわ

:可愛く言っても許される場所じゃないです

:ここに潜ってみようと思う奴がいるのが稀なのがよくわかる地獄絵図

:え、こんな場所に小銭欲しさに行くの?

:オリハルコンを小銭って言うな!

:実力がなきゃ小銭にもならんぞ?

:自殺志願者しか立候補しねーだろ、こんな場所


ちなみに一層からダイヤモンド、二層はミスリル銀、三層はダマスカス鋼、四層がアダマンタイト、五層がオリハルコンだ。まだ下があるみたいな話は聞いたが、それ以外は特に予定になかったので頼んでないからね。

本人たちも帰りたいって言ってたし。


「一応、一層からダイヤモンドが掘れるけど、誰も近寄らない理由がこれだね。近いうちに町ができるのも時間の問題だろうけど」


<コメント>

:ダイヤかー、命犠牲にして得られる金額考えたら損失しかねーな


「二層はミスリル銀、三層ではダマスカス鋼。アダマンタイトは四層だな」


<コメント>

:なるほど!

:ダイヤだけなら行く価値ないが

:ミスリル銀かー、悩む

:魔法使いは欲しそう

:なお、Bランクダンジョンでも採掘可能

:じゃあBランクでええかー

:わざわざこんな危険な場所に行く意味とは?

:オリハルコンしかねーだろ!

:オリハルコン掘るために、道中でお金稼ぎ

:早よ街作って!

:作ったところで人集まるんか? これ


「でもこのやばい薬、耐えられるように慣れば案外アビスで戦えるぞ?」

「え、マジ?」

「お前は両方飲んで普通ならワンチャンあるが、どうする?」


なんか急に熱烈オファーが来た。

えー、どうしよっかなぁ。奥さんには行くの禁じられてるし。


「俺たちは本当は行きたくないが、お前がついてきてくれるんなら、行ってやってもいい」

「なるほど!」


オリハルコンは確実に欲しいし行くことに。

装備は手持ちのやつで、ポーションは僕がその場で作ることでなんとかする。

なお、配信カメラで採掘の様子とモンスターの死闘はバッチリ取れたので撮れ高だった。


なんだ、呪いと言ってもこの程度だったら今度散歩がてらに拾いにこようかな?


そんなこんなで僕はオリハルコンを手に入れ、大塚君は無限収納タイプのナプキンを手に入れた。


ヒカリには散々怒られたけど、たまに散歩しに行くって言ったら呆れるかなぁ?

だなんて思ってると……


「聖さん、やっぱり子供作りましょう!」

「え、うん」


お互い忙しいのに、子供が欲しいと言われた。

まだ大塚君を嫁に出してないのに早くないか? と思わなくもないが、お互いにいい年だ。ヒカリの体力の問題もあるし、その日から妊活を始めた。


あと政府に呪い訓練用に意識拡張ポーション、並列思考ポーションが100本ずつ売れた。あの配信見て人数が100人集まったのか。

危険だとわかってても、そこに旨みがあれば人は頑張れるんだなぁ。


それとも一介の研究職である僕が行けたからいけるやろぐらいの気持ちで居るのかな? だったら勘違いしないで欲しいが、僕は特殊な訓練を受けている。世界で一番熟練度が高い錬金術師であることを忘れてないかな?

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