第16話 白夜極光コラボ1
大塚君がどうしてもとせがむので、今回を機にちょいと企業向けレクチャーをあの三人に頼んでみると、全員から渋い顔をされた。
「いやぁ、あの映像見せた上で手の内晒すのはちょっと」
「絶対俺たちに抗議のメッセージくる奴だろ? 嫌だよ」
「どのみち駆り出されるのも時間の問題だが、お前の頼み、あるいはどれくらいのサポートを受けてのミッションかを知らせるいい機会かもな」
なんだかんだこれ以上被害を出したくないという三人組。
僕の家族のためとあらば協力してくれるんだから、やはり持つべきは優れた探索者仲間だよね。
「と、いう事で、今回は僕と契約してくれた三人がきてくれていました。皆さん、拍手!」
<コメント>
:わーーーー
:88888888
:いつも以上に唐突で草
:本当にキングさん居るやん
:ガイウス様!
:トール様も居るわ!
「やー、この三人が揃うのって久しぶりじゃない?」
「いや、割としょっちゅう顔を突き合わせてるぞ?」
「そうそう、誰かさんの依頼でしょっちゅうな」
「フェニックスとはもうやり合いたくないっす」
<コメント>
:誰の依頼なんでしょうねぇ
:すぐ目の前にいる人かもよ?
:えー、誰だろ?(すっとぼけ)
「誰だろうなー。全く身に覚えがありませんね! とはいえ今日の趣旨は誰が悪いとかではありません。誰でも簡単(とは言ってない)! オリハルコン採掘レクチャー! 始めていきたいと思います。流石に現場に直行するのは控えさせていただきますが、現場で探索者たちがどう立ち回るのかのお話だけでも聞かせてもらえたらなって」
<コメント>
:あ、それ興味ある!
:行くなって釘刺しておきながらオリハルコン採掘レクチャーするのか(呆れ)
:結局行けても持って帰れなきゃ意味ないもんな
:それなんよ
:それを加味した上で行かせる人出てきたらどうすんだよ!
:責任取れんのかー?
「責任って? 家に勝手に入り込んだ人の処罰に責任を取らせるって事ですか? 人の庭に植ってる桃やキノコを勝手に持ち出した人にも同じことが言えると思います。皆さんなら勝手に持ち出したもので食中毒を起こした責任を取れ! って言われたらどうしますか?」
<コメント>
:それは自業自得やろ
:人の庭のもの盗むのはギルティ
:アビスはミコト様のものだった!?
:草
:誰のものでもないやろ
「はい! なので我が家に勝手に侵入し、何か起きた場合の責任は忍び込んだ人に帰属するということでお願いします」
「こんな奴の家に忍び込もうとするとか、命知らずにも程があるぞ?」
<コメント>
:ミコト様言われてるじゃん
:実際取扱危険物の宝庫だし
:それって本人以外には危険物ってだけでしょ?
「普通に持ち出し禁止のものもそこら辺に置いてあるよね」
「なんで片付けないんだ?」
「その位置にないとモヤモヤするんだよ。だから奥さんにも出入り禁止の開かずの間が我が家にはいくつかある」
<コメント>
:おい!
:埃積もってそう
:新築なのにもう開かずの間が!?
:この錬金キチめ
:ゴミ屋敷かな?
:もしも置いてあったとしても、持ち出していい理由にならないからな
:ほんそれ
:隙あらば・持ち出してみて・アビス行き
:嫌な俳句読むな!
:実際そうなんですが、それは……
「自宅に侵入されたらそれはもう僕の落ち度だね。でもウチ、家から出るのは認証システム採用してるから」
「なんだそれ?」
「え? 許可なく入ってる人が居たらカメラが作動して警察に連絡するんだ。生命体かどうかはサーモグラフィーでチェックしてさ。ほら、持ち出されたらやばい素材やら薬品やらあるから」
「俺たちのは勿論あるよな?」
「うん、家に上げる時に渡した水に含まれてるから」
「あの水……そんなトリックがあったのか」
「まぁね。一応疲労とか持病とかそういうのを全回復させる効果もあるし、悪いことばかりじゃないでしょ? ちなみに予備はない。僕がその場で作って、あまりは全部飲んじゃう」
「それ、お前が出張とかしたら詰むんじゃ?」
「このレシピは熟練度90で作れるので、奥さんや子供も作れるよ」
「は?」
<コメント>
:ホトりん、いつの間にそんな熟練度上げたんだ?
:待って養子に入れた子、そんなに優秀だったの!?
「そりゃ毎日エクスポーションの品質Sを作ってりゃ上がるよ。あれは家族での共同作業だからね」
「企業向けのポーション、お前一人で作ってたわけじゃないんだな?」
「僕はそれでいいけど、奥さんが引き留めるんだ。あれは結構無理した結果だからねぇ」
「週2万だっけか?」
「君達に贈呈してた時よりかは気持ち頑張って作ってた」
<コメント>
:キング達、急に黙りこくったな
:普通はその数ワンオペで出来ないんよ
「いや、これに関しては言い訳させて欲しい。俺たちはコイツに薬品量を請求したことは一度もない。な?」
「ないよ。でも毎回綺麗に使ってくるから、結構ギリギリなのかなって気持ち毎回増やしてた」
「いや、感謝はしてる。むしろあれありきで討伐達成が当たり前になってたからな。正直お前以外の薬品は使う気になれなくてさ」
「ははは、そりゃどうも。と、話が脱線しちゃったね。今日の趣旨は我が家の防衛装置じゃなく、アビスでの行動指針、持ち込むべきアイテムを体験したもの達に聞いていくことだよ」
<コメント>
:いよ! 待ってました
:果たして聞いたからと持ち帰れるか?
:聞くまでわかんないだろ?
「という事でキング、よろしく」
「ああ、ここからはトール、ガイウスと交代交代で喋る。まずは俺から」
キングは行軍する上で必要な装備を語った。
一週間の行軍でポーション類は最高級品を最低でも一万個は持っていくことを語った。普通にアビス入り口から降りていくだけでそれくらいは消費するとのことだ。
直接真深層向かうのはお勧めしないらしい。
その理由は、呪いには慣れが必要という事だった。
一層の頭痛は平衡感覚、二層は五感の消失。
三層は知識の喪失、四層は神経の喪失
五層が人間性の喪失と、徐々に人ではない何かにされていくのだそうだ。
人の形を維持できなくなる。
ある意味で化け物の力を得るのだが、急に体に羽が生えても空は飛べないように、慣れてからが本番らしい。
もしこの段階を飛び越えていきなり深層に飛び込めば、この呪いが同時に襲ってくるようだ。そんな状態で深層のモンスターを相手取るのはSSランクダンジョンに手ぶらで飛び込むような自殺行為らしい。知らんけど。
その上で一層一層がバカみたいに広く、呪いを付与された状態で移動しなきゃならない。そこにモンスターが襲ってこられて全滅……が過去の歴史が証明済み。
未だ生きて戻ってきた人間がいない事からアビスと呼ばれ、畏怖され続けている場所だ。
よもやチームで行って、無事帰ってきた事が知られたのは前回の放送が発端。
情報を求めてるそうにモンスターのドロップ品を送ったら大層喜んでいた。
追加発注していいかという相談はやんわりと断らせてもらったよ。
こっちとしては捨てるに捨てられない粗大ゴミを捨てただけだからね。
<コメント>
:ぐえーー
:呪いが同時とかエグすぎんだろ
:ちなみに呪いの克服は一週間で出来るもんなの?
「答えを言うなら、一層を克服するごとに一週間だ。最低でも六週間、連続で潜り続けるくらいの覚悟が試される」
<コメント>
:一足跳びでの獲得は無理かー
:逆に準備さえ出来てれば直接乗り込むこともできると?
「可能だが、行きたくはないな。ブランクがあるし」
「え、まさかコラボしたから行けとか言わないっすよね? 冗談じゃないっすよ」
「ははは、流石に準備してないのに突然送り込まれるなんて……ないよな?」
「あー、突然は無理な感じ? 物のついでにさ」
「無理に決まってんだろ!」
「正気か?」
「きっと正気じゃないっす」
<コメント>
:見事にハモったな
:誰も行きたくなくて草
:Sランクが行きたくない場所に行かされた人がいるらしいですよ?
:SNSでアビスとオリハルコンがトレンド入りしてるんよ
:明らかにこの配信が発端だろ
:みんな暇なんだなー
:これは自殺スポット待ったなしだわ
:せめて人として死にたい人多そう
:死にたいのにプライドだけ高くて草
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます