第9話 しおりんコラボ4

「と、どこまで話しましたっけ?」


雑談が弾みすぎて本題からだいぶ遠ざかってしまった自覚はあるのでゲストに向かって投げかける。


「カチカチスライム君のお祈り厳選のところまででござるな」

「そうだったそうだった。120〜先はそれを応用した形状記憶型カチカチスライム君のレシピがある。それが制作難易度140〜で」

「祈るのでござるな?」

「そうそう。僕のレシピ、基本祈るの前提だから」

「その不屈の精神性こそが……」

「賢者の石への近道だね」


<コメント>

:なんかいい話にもってこうとしてるけど

:途中で出た転送スクロールの話題無かったことにしてない?

:諸外国の掲示板に投げてきた

:おい、これは一体どういう事だ!

:詳しく説明を求める!

:急に荒れ出したな

:その割に母国語でしか掲載されないが?


「あ、うちの配信はバリアフリーだからこっちの言葉で須く翻訳してるよ。僕は翻訳できるけど、全員が全員他国語に明るいわけじゃないからね。僕一人では無理なので奥さんにも協力してもらってます」


<コメント>

:《神籬ホトリ》私がやりました

:謎のハイスペックPC

:それ本当にパソコン?

:パソコンのような何かだと

:《神籬ホトリ》やだなー、個人宅にサーバーがあるくらいですよ

:個人で揃えるもんじゃないでしょ、それ!

:それを管理するのも維持するのも大変そう

:めちゃくちゃネット環境整えてるじゃん

:個人Vの本領発揮か?

:PCスペックが命だし

:それよりも! 論文を出せ! 配信で晒すな!

:お前、ここは初めてか? 肩の力抜けよ

:おま国問題


「荒れてるでござるなぁ。さらっと出てきた制作難易度140に物議が醸し出されてるのでござるか?」

「ううん、きっと運送系。あれやるのはあらゆるところに喧嘩売るから個人的に使うだけにとどめてる」

「作れなくてもレシピだけは共有して置きたいって人は多いから」

「他人の褌で相撲をとって何が面白いのやら」

「あっちの人は箔付けに命をかけてるでござるからなぁ」

「僕たちには関係のないことだね」

「然り」


という事で次の質問。


「次はー……セカンドジョブのお悩み相談でござるな」

「あー、100超えたら次は何を取るかの問題があるもんね。僕は鍛治を取ったけど、そこからは自分が何をしたいかに寄るかな?」

「ミコト様は鍛治に何を見出したんでござるか?」

「しおりんさんは錬成ってスキル知ってる?」

「鉱石から金属を取り出すスキルでござるな?」

「実はあれで取り出したい金属があった。丁度熟練度100の時にその壁にぶち当たってね。周りでそのことに気がついている人がいなくて、それで仕方なく取った」

「それってここでお話ししていい話題でござるか?」

「全然大丈夫だよ。それを話す上で以前僕が公開したレシピに炸裂玉というのがあるんだが」

「モンスター駆除用の爆弾でござったな」

「うん、あれでダンジョンの壁を破壊できることはもうご存知のことだと思うけど、隠し通路に見知らぬ採掘場があり、そこで採れた金属をなんとかして加工したかった」

「は?」


<コメント>

:待て待て待て

:急にぶっ込んできたな

:え、あれ? 不壊と呼ばれてるダンジョンの壁壊せんの?

:新事実

:しおりんもそら「は?」って言うわ

:隠し通路とかあるんだ

:謎の金属、気になります!


「あ、気になる? 調べた結果アダマンタイトっていう鉱石で」


<コメント>

:はい、ダウトー

:そこから取れるんだ、アダマンタイト

:それってクッソ硬くてクッソ重い金属ですよね?

:硬すぎて錬成無理って言われる筆頭


「鍛治レベル99まで上げて漸く錬成できたからね。でも不純物だらけでさ。そこは溶解液に漬け込んでアダマンタイト塊を作るよね?」

「あの溶解液、アダマンタイトですら溶かすでござるか?」

「オリハルコンも溶かすよ?」

「マジモンの取扱注意レシピではござらんか!」

「錬金術では制作難易度15だけどねー」

「鍛治熟練度99で漸く錬成できるものをこっちでは制作難易度15で安定出来るのでござるか?」

「そう、それが僕が錬金術にハマる理由でさ。でも残念、溶解液が溶かせるのは錬成済みの金属に限るんだ。だから間に鍛治は絶対に必要なんだよ」

「ほぇー」


<コメント>

:嘘だぞ、絶対これミコト様だから気づいたやつだぞ

:表に出しちゃいけないレシピだったんか?

:それはそれで草

:一個もダンジョン素材使われてなくて笑う

:本当になんでそれに至れたんだよ


「偶然って怖いよね」


<コメント>

:この男、全部偶然で片付けるつもりだぞ

:無理がある

:外国ニキ達黙っちゃった

:きっと今頃鍛治連盟と組んで炸裂玉と溶解液作ってる頃

:あっちのダンジョン荒れるぞー

:異議申し立てよりも利益を優先したか


「海外のオリハルコンは環境極悪と呼ばれてるハワイ諸島にあるアビス深層で発見されたよ。うちの探索班はもう行きたくないって言ってた」


<コメント>

:所在地明かしてええのか?

:分かってても行きたくないやつ

:深層に行って帰ってきた証拠があれば提出しろ


「お忍びで行ったから無理でしょ。それに現地調達でオリハルコン回してもらってたから彼らも心底参ってたみたいだし。なのでうちの近所に目印つけて、いつでも帰宅できるように配慮して帰還用の転送スクロール渡して帰ってきてもらった。帰ってきた時、若干人間辞めてたけど、ポーションで治療してなんとか人間に戻ってくれたよ。それ以降、アビスは懲り懲りって二度と引き受けてくれなくなっちゃったんだ」

「あの、ご友人なのでござるよな?」

「友人というより、お互いに利害が一致した上で協力してもらってる契約者だよ? アビスは人間性を保てなくなる魔境だから、行くなら相応の覚悟がいるよねって話。ちなみに素材はもうないから作れって言われてもできないよ?」


<コメント>

:キング達、苦労してたんだな

:そりゃ労力に見合わないわ

:人間辞めるって物理的にだったんかよ

:精神的にはもう辞めてるだろ! いい加減にしろ!

:アビスに比べたらフェニックス戦はまだマシだったんやなって

:でも装備パクるだろあいつ?

:流石にオリハルコンでは戦わんだろ

:もしオリハルコンで戦ってたら?

:合唱


「オリハルコンとアダマンタイトを合わせた合金が出来たからね、彼らにはその武器を使って貰ってるよ。転送装置と紐付けした腕輪で保管。手元から離れたら腕輪に送還、再度使うときは召喚するから盗まれないってわけ!」


<コメント>

:は?

:は?

:は?

:はぁああああああああああああ!?


「またビックリドッキリアイテムが出てきたでござるな」

「認証システムなんてどこにでもあるでしょ? それを装備一式でやってみたんだ」

「本当にミコト様は雲の上のお方でござるな」

「そんなことないよ、僕はどこにでもいる普通の錬金術師だよ」

「絶対に在野にはいない唯一無二の錬金術師でござる。これははっきりと断言致しましょう」

「照れる」


<コメント>

:絶対誉めてないぞ

:キング達が装備無くさない理由それか

:アダマンタイトとオリハルコンって何それ強そう

:それってどうやって結合させたんですか?

:単体で完成されてるモンくっつけるな

:難易度凄そう


「え、上級融合」


<コメント>

:こう考えると、錬金術の融合ってぶっ壊れでは?

:既存野菜でダンジョンモンスターやし、そらぶっ壊れよ

:これは確率5%なのも納得

:使えない代名詞だと思ってスルーしてたやつ涙拭けよ


そうだよ、融合はすごいんだ。

だからみんなも融合を使おう!


この後、外国ニキ達の異議申し立てが殺到してコラボどころじゃなくなったので解散。パソコンのメール通知がパンクしたのでしばらく配信はお休みすることになった。


なんだよこのことくらいで。みんな騒ぎすぎなんだよなー。

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