第3話〝大塚晃〟は唯我独尊

社内でいちばんの美人を取り逃がして内心で舌打ちをする。

粒揃いは沢山いるが、あれほどの美人を手に入れられないのは惜しい。


よりによってなんであんなデブになんか気があるんだ!

たかがポーション作りが上手いくらいで調子に乗って!

俺様はエクスポーション製作部署の主任、大塚晃だぞ!

ガハハハハ!


俺様がエクスポーションを世に提供してやってるから探索者は安全にダンジョンを巡れてるんだ。そこをわかってねぇバカは何処にでもいるのが不思議だよな。


バカだが美人な望月ヒカリをどうやって手に入れるか。

手に入れた後はどうしてやるか。

いっそ槍込の前で抱いてやるか?

失望するあいつの顔が見ものだぜ!

ブヘヘヘ、想像しただけで興奮してきた。


「では、社内トップ成績を収めた俺様の昇進を祝して〜」


乾杯! アルコールが並々注がれたグラスが打ち合わされてそれぞれの音色を奏でた。


俺に近寄ってくる女達は、全員が俺の遺伝子を欲しがってる。

無理もない。天才の遺伝子は誰だって欲しがるもんだからな。

だから俺は本能の命ずるままに手をつけた。


コレは浮気じゃない。人類が新たなステップを踏むために必要な救済だ。

コレは天命だ。俺という人類のトップが世に蔓延するための足がけなのだ!


その日は飲めや騒げやの大盛り上がりだった。

きていた女と全員寝た二次会は明け方まで続いた。

ホテルから直接出社。

一度体を合わせただけで俺の彼女ヅラしてくる部下達が鬱陶しい。

まだ昨日の酒が鈍痛を誘う。


確か酔い覚ましの薬は確か槍込の研究成果の一つにあったな。

少し拝借していこうとあいつの研究室によると、立ち入り禁止のテープが貼られていた。


「何があったんだ?」

「大塚、どうも槍込が頭から血を流して入院したらしい」

「ダッセェ奴!」


俺はまだ酔いが回ってるのか思いっきり吹き出した。それに対して富野達は不服そうな顔をする。


「それどころじゃないぞ。来週のノルマはどうする?」

「流石に一週間もあれば退院してくるだろ。今は錬金術があるからな」


頭を怪我したくらい、ポーションをつければ治るからな。

今の現代医学には錬金術のバックアップで医療は飛躍的に進化してる。

どれだけ死にかけでも治る秘薬こそエクスポーション、つまり俺の部署の生産物だ!


「それもそうだな」

「そうそう、お前ら心配しすぎなんだよ。そもそもあいつ、うち以外で雇用してもらえる場所なんてないだろ?」

「まぁな」


鷹取も富野も俺と同じ顔をした。

一生あいつをこき使ってやろうと心に決めたみたいだ。


が、社長室で昇進の激励を受けた俺はそこで想定外の報告を受けていた。


「は? 槍込はもう来ない? どうしてです?」

「社内で問題を起こしすぎてるからな。ずっとどう扱おうか頭の片隅に置いていたが、ようやく厄介払いができた。それに君も散々迷惑をかけられたと言っていただろう? 自主退職を促したよ。それで了承してもらえた。コレで我が社の膿は落とし切れた。それにポーションなんて誰でも作れる。君たちの部署から数人もらっても大丈夫だろうか? なぁに、主任が君たちがやればいい」


社長はある意味出世だぞ、と促した。


「あの、それは俺たちが槍込のノルマをやるという事ですか?」

「何か問題があるのかね?」


問題大有りだ!

あいつの薬品がなきゃ俺たちは輝けねぇんだ!

なんとしてでも取り返してやる。

あいつは俺たちの所有物なんだ!

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