第7話

そうして1週間が経ち、写真の現像ができた。急いでカメラ屋に取りにいった。


「これがお客様さんの写真で間違いないですね?凄いですね?合成ですか?」


「え?あ、はい。ちょっと友達とモノクロで撮れるか試してみたんです。」


「ああ、そうなんですね。はい、どうぞ。」


「ありがとうございます。


私はその写真をマジマジと見た。カラーフィルムには何も写ってはなかった。モノクロ写真を見て「え?」って思った。それはAが翼を携え空に舞う写真だった。とても神々しい。こんな写真を誰が信じてくれるだろうか。恐らくアキトなら信じてもらえるだろう。アキトに連絡を入れた。


「アキト、ちょっとヤバめの写真が撮れたんだが、見に来てくれないか?」


「ちょっと仕込みがあるから店まで持ってきてくれ。」


「分かった。」


そうしてアキトの店に行った。アキトの店はこじんまりしているが、そこはお客でごった返すほど人気の店だ。まだ仕込み中だから客はいなかった。


「こんな写真ができたんだが、どう思う?」


「え?マジか!これはすげーな!いや、芸術だな!これみんなに見せようぜ!」


「いやいや、誰が信じると思う?こんな写真。」


「川ちゃん、俺とお前が撮ったんだ。俺という証人がいる。大丈夫だ。」


「そうか。それならどうやって見せる?いちいち見せて回るのも大変だよ?」


「同窓会だ。同窓会を開いて皆に見せよう。」


「なるほど。」


「川ちゃんが以前持ってた学年の名簿を使って、各実家にDMを送ろう。もちろん、俺と川ちゃんの電話番号を載せてな。」


「分かった。その辺の手配は俺がするよ。」


そうして同窓会の準備が着々と進められた。店はミキちゃんが働いてる店になった。


人数は30名ほど集まった。


そうして同窓会が始まった。


皆程よく飲んで、お酒が入ってきたころ、アキトが


「みんな注目!これがAの最新の写真だよ!」


と言って皆にAの写真を見せた。そして一連の話をみんなにした。


「え?嘘でしょ?猫がAちゃんなの?」


と特にAと近しい友達がとても驚いていた。そんな時、ヒロキが


「アキト、お前までAを侮辱する気か!」


「そうじゃない。俺が証人だ。この写真を見ろ。」


とAが昇天する写真を見せた。


「こんな写真普通に撮れると思うか?そして川ちゃんの横に俺はいた。それがこの写真だ。」


「う、嘘だろ?Aーーーーーーーーーーー!」


ヒロキはその場で泣き崩れた。


「どんな写真なの?」


とみんなも興味深々だった。ヒロキはその写真を渡した。


「え?嘘、あの現場の写真?何これ?翼が生えて空に浮いてる!Aちゃんは天国へと旅立ったのね!」


と涙する者がさらに増えた。するとミキちゃんが


「あのAちゃんが写ってる沖縄の場所で集合写真撮らない?猫を捕まえて持っていって。そしたら思い出の場所でAちゃんと集合写真が撮れると思う。」


なるほど。そういう発想は私にはなかった。


「それは名案かもね。しかし猫がすんなりと捕まるかどうかだよ。嫌がる猫を無理やり連れているのもなんだし。代わりにもAさんの猫だよ?」


「一応やってみてよ。一番慣れてるのが川ちゃんでしょ?もしかしたら捕まえられるかも。」


「う~ん。でもどうなんだろ?Aさんだとしたらほぼほぼ接点ないしな...。まぁ、やってみるよ。」


「それよりみんな、今日は飲もうよ!」


とアキトが場を盛り上げた。


「さて、みなさん、宴もたけなわ。もしよろしければline交換しませんか?」


とアキトが言い、皆とlineを交換していた。そして同窓会は終わった。その中での沖縄行の話はなんだか具体化しそうな話だった。


それから次の日、二日酔いで体が動かなかった。でも案外みんな写真のこと受け入れていくれるもんなんだな、と思った。それはアキトがいるせいでもあるんだなとも思った。今日はひとまずウコンの力でも飲んでゆっくりしよう。


そして翌日。またカメラをもってブチを探し回った。だが、どこに行っても見当たらなかった。高校も、中学校も、Aの実家付近も。どこに行ったんだろう?それかもうAが思い残すことなく消えていったのかもしれないのかな?とも思った。私の写真へのモチベーションが下がってしまった。あとは頭に残っている範囲ではあのAが最後に撮られた沖縄の場所で写真を撮ることだった。ブチがいなくてもそこを撮るという考え自体は元々あった。だから沖縄には行こうと思ってた。


そこでみんなにブチが見つからないことをアキト経由で話した。そうするとブチがいなくてもいいからそこで集合写真を撮りたいとのことだった。

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