第6話
それからしばらくしてアキトから連絡があった。来週の月曜日に一緒に猫探しについて行ってくれるらしい。なので私は高校へ行き、中藤からカメラをもう一台貸してもらいに行った。
「先生、もう一台カメラある?」
「え?お前、昔もってなかったっけ?親父さんの高そうなカメラ。あれはないの?」
そう聞かれるとあった気がする。
「確かにあった気がする。ちょっと探してきます。」
そう言って私は家に探しに行った。
家でカメラを探していると高校時代のライブの写真が何枚か出てきた。懐かしいな。としばし眺めていたが、現在の自分を考えるととてもみじめな感じがして見るのをやめた。そしてカメラを再び探した。すると私の部屋の段ボールの中からカメラが出てきた。奥まったところで密閉されていたのでタバコのヤニからも逃れられていた。保存状態は良好。
「よし!これをもって行こう!」
月曜日の朝。アキトの住んでるマンションまで行った。
「川ちゃん、これで行こうや。」
とアキトが出したのは電動キックボードだった。
「え?初めて乗るんだけど。」
「朝っぱらからおっさん二人が自転車乗ってたらなんだか風が悪いだろ?だからこれ。川ちゃんは古いやつでいいかな?」
「ああ、ぜんぜん構わないよ!」
「あ、そうおう。カメラ。アキトはこのカメラ。カラーフィルムが入ってるよ。」
「おお、いいね。取り合えずどこい行けばいい?」
「あの猫は高校か中学校かAさんの実家付近に現れるよ。でも最近は高校で見てないな。」
「じゃあ中学校かAの実家かどちらかか。」
「でも中学校は変質者と間違えられるから、今の時間はAさんの実家付近かな?」
「それじゃあ、そこにいこう。」
そう話してAの実家付近まで行くことにした。
しばらくしてAの実家付近で「ブチ」を見かけた。
「アキトあの猫!あれだよ!」
「おっしゃ!写真撮るぞ!あれ?逃げる!待て!」
「あれ?なんだか今日のブチはおかしいな?」
「ブチって?」
「ああ、あの猫の名前だよ。今日はやたらと逃げる。今までそんなことはなかっただけど。」
「とにかく追いかけよう!」
しばらく追いかけた。2、30分追いかけた。そこでブチは止まり、道の角の上に上がり、
「にゃおーん!にゃおーん!」
と大きな声で鳴いた。なんだか様子がおかしい。
「おい、川ちゃん、ここってもしかして。」
「ああ、アキト。そうなのかもしれない。」
二人が思った場所がAが事故で亡くなった場所だった。二人はカメラでブチを撮った。何枚も撮った。
その後急いで高校へ行き、フィルムの現像をした。カラーフィルムはそのままカメラ屋に出した。
「なぁ、川ちゃん、あそこで写ってたのは何だと思う?」
「俺にも分からないよ。ただ、ブチが撮ってくれって言ってるような気がした。」
「俺もそんな気がした。あの猫は何なんだ?」
「わからない。でも何かAさんの何かと関係する猫だね。」
「とにかくモノクロフィルムをカメラ屋に出してからだね。」
「わかった。取り合えず今日は帰るわ。」
「わかった。ありがとう。」
そう言ってアキトは部室を後にした。
「しかし何が写るんだろう?凄惨な事故のAさんの姿だろうか?」
そう考えると薄ら寒くなった。
そして次の日にモノクロフィルムをカメラ屋に持っていった。
「いらっしゃいませ。昨日は珍しくカラーフィルムを持ってまいられてましたが、今日はやはりモノクロフィルムを持ってこられたのですね。」
「はい。まあ、色々と事情がありましてね。」
「そうなんですね。私はあなたの写真が好きです。おっと、職権乱用ですね。すみません。」
「いえいえ、私に限ってはそれを使ってくれても構いませんよ。」
「そうですか。ありがたいです。またお写真の方、待っています。」
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