第25話 また変なのが……
次はラディじゃがいもだ。
茎を握ってソイヤと引くと、大粒のジャガイモがゴロゴロととれた。
「おお~!」
「負けませんよ~」
ショーグンと二人で収穫しまくる。
あっという間にカゴがいくつも満杯になった。
大豊作だな。
初めての農業しては、驚くべきほどの成果である。
「うおおおお」
「おい! ショーグン。全部取らなくていいぞ。売れる量には限界があるからな」
全部とっても売り切れない。
ある程度は畑に残しておいて、売れたら順次収穫していく形にしないと鮮度が落ちる。
今の俺の販売ルートでは売れる量に限りがあるのだ。
「うおおおおおお!」
「おい! 聞けって!!」
だが、そんな俺の声は届いていないようだ。
ショーグンは、がむしゃらにジャガイモを収穫している。
……まあ、いいか。
どうせジャガイモは日陰で乾燥させなきゃならんしな。
保存も効くし、全部収穫しても問題ないか。
逆に雨でも降ったらメンドウなことになる。
濡れてるとき収獲したら腐っちゃうからな。
晴れが数日続いたあと収穫するのがジャガイモの基本だ。
そんなかんなで、その後も収穫していき、ひとまず作業は終わった。
なかなかの収穫量である。
売るのを考えると、少し怖くなってしまう。
まあ、それはなるようにしかならんか。
さて、今回栽培した作物。
商品に出来るものと出来ないものにはっきり分かれた。
まず、できる方。
ラディだいこん、ラディにんじん、ラディじゃがいも、ラディバナナの四つだ。
これらは、おおむね期待通りの育ち方をしてくれた。
逆にダメだったのはラディもろこし、ラディトマト、ラディナス、ラディピーマンだ。
見た目が気持ち悪い、実がならない、小さい、形がいびつなど、正直イマイチだった。
商品として出荷できない、廃棄処分となる。
品種改良。やっぱり掛け合わせる系統が違うと、上手くいかないのかもしれない。
ラディッシュは根菜類。土の中のものが収穫物になる。
ダメだった四つは、いずれも地上部に実をつけるもの。
根菜類は根菜類とかけあわせるのが、結局のところ無難だってことか。
とはいえ例外もある。
一番最初に作ったラディバナナがそうだ。
地上部に実をつけるが、そんなことはお構いなしに育ってくれた。
喜んでいいのか悪いのか。
イレギュラーな育ち方をするものが多いと予想がしくいんだよなあ。
何を育てるか片っ端から試すしかなくなってしまう。
まさにラディスイカとラディかぼちゃがそうだ。
この二つについては、出荷するのをちょっとためらってる。
いや、育ちはいいのよ。
しっかりした実を、ちゃんとつけてくれた。
ただ、見た目がなあ。
これ食うの? むしろ食われるんじゃね? って感じなのだ。
中央に大きな実があり、その実を乗せるかのように数枚の葉っぱが広がる。
そして、その下からは、まるで手のような二本の短く太いツルが伸びているのだ。
このツルがスイカとカボチャのなごりなんだろうけど、見た目は完全にモンスターだよな。
火が弱点なタイプの。
今にも実が割れて、でっかい口になりそうだ。
これ、売り物になるかぁ?
思えば芽が出たときからおかしかった。
葉っぱが次々と出る。それはいい。
だがその後、真ん中に大きな花が咲いたのだ。
スイカもカボチャもツル性の植物。
ツルをいくつも伸ばしていき、その途中にいくつも花を咲かせる。そして、それが実になっていく。
ようは一つの株で複数実がなるわけだな。
だが、ラディスイカとラディカボチャはぜんぜん違う育ち方だ。真ん中にドでかい実を一つつけるだけ。
茎もツルもさほど伸びない。
……これ食べる勇気ねえぞ。
いや、実そのものは完全にスイカとカボチャなのよ。
収獲してしまえばまったく分からない。
でも畑で見ればもうモンスター。
ツタで獲物をとらえて、パクリ! ってしそうなのよ。
「へ~、これがスイカなんですねー。とっても美味しそうです!」
隣ではショーグンがのんきなことを言っている。
おまえは気楽でいいなあ。
食ったところでどうせメカだもんな。
腹をこわすでもなく、死ぬわけでもなく。
味さえ良ければそれで……。
――いや、ちょっと待て。
美味しそう?
ショーグンが?
これまでカラスノエンドウとつゆくさを食べるのを拒否してきたショーグンだ。
食べられるにも関わらず、食べようとしなかった。
考えられる理由としては食用じゃないから。
逆に食用のものは初めて見る食物でも、
これはもしや、食用かどうか判断する機能がショーグンについているのでは?
そのショーグンが美味しそうと言っている。
じゃあ、これは問題なく食べられるんじゃないか?
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