第21話 バナナの売れ行きと、これからの戦略

 道の駅におさめたバナナだが、けっこう売れた。

 ほぼ完売と言っていいぐらいである。


 とはいえ、初日はあまり売れなかった。

 商品を手にとる人こそ多かったが、大半がそのまま棚に戻していたのだ。

 たぶん、生産者の俺に信用がないからだろう。

 しかし、初日より二日目、二日目より三日目といった感じで、日を追うごとにバナナは多く売れていった。

 おそらくリピーターだ。食べてみて美味しかったから、また買ってくれたんだ。

 母も大量に買う人が増えていったと言っていたから、予想は合っているに違いない。


 この大量買い、味もそうだが値段が大きい。

 俺は相場よりかなり値を低く設定した。

 とにかく実績を作りたかったから、儲けは少なくてもたくさん売れる方を選択したのだ。

 安けりゃ試しに買ってみようと思う人も多い。それで旨けりゃ次はもっと多く買う。

 思った通りだ。

 予想が的中して喜ばしい限りだ。


 初期投資とランニングコストが低いからこそとれた戦略だな。

 でも、バナナ以外はこうはいかない。

 というのも、道の駅では生産者が価格を自由に設定できる。できるが、あまり周囲との価格差があると反感を持たれるのだ。

 そんな安くされちゃあ自分の作物が売れないってな。


 都会なら、そんなやつほっときゃいいんだけど、田舎はそうもいかない。

 近所とのつながりがなにより重視されるのが田舎だ。なんともメンドクサイ。


 幸い、ここらではバナナを生産している農家はいなかった。

 気候の関係だ。バナナは二十度以下では育たず、五度を下回ると枯れる。一年を通して温暖な気候が求められるんだ。

 バナナの生産は年単位でかかる。ハウスにしてまで育てようと思うやつはこの辺にはいないのだ。


 しかし、これからはそうはいかないだろう。

 皆が売っているような作物も販売していく予定だからだ。

 相場よりちょっと安い価格で、ベテラン農家と味で勝負していかなきゃならない。

 けっこう厳しい戦いになると思う。

 やっぱり道の駅以外の販売方法も考えていかなきゃいけないな。


 あとはそうだなあ。

 バナナと同様、気候の関係で育てられない作物を狙っていくのも手だな。ラディッシュで栽培速度を上げてやれば、気温が変化する前に収穫できる。

 これなら道の駅で安売りできる。


 また、栽培が難しく、希少価値がある作物。

 このあたりもねらい目だろう。

 だからこそ、雑草とのかけ合わせが重要なんだ。

 手間暇かかる作物が勝手にポコポコできたら最高だろ?

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