第3話 タコ星人の贈り物

「おら! しっかり働け!」


 タコ星人にオカリナで脅され、労働する俺。

 どうやらUFOが墜落した際に、積み荷を周りにぶちまけてしまったみたいだ。

 よくわからんグニョグニョしたものや、小さいけどやたらと重い四角形の箱なんかを拾わさせられている。


 なぜ、俺がこんなことを……。


 謎の物体を拾ってはUFOへと積み込む。

 UFOが透明になったり光ったりするので、とてもやりにくかったが、とにかく指定された場所に置いていく。


「ほれ! あっちにもあるぞ」


 人使いの荒いタコ星人だ。

 あれやこれやと指さして、俺に労働をいるのだ。


 ちょっと休ませて。

 いったん立ち止まると、腰をトントン叩きながら息を整えた。


「時間がないんだ。早くしろ!」


 そんな俺を見て、タコ星人はイキリちらす。

 クソ! いやなやつだ。まるで会社の上司みたいだ。

 強い立場にあるからって、エラソーに指図さしずしやがって。


 ――あれさえなければ。

 タコ星人の持つオカリナを見る。

 たぶん、あれはレーザー銃みたいなものなんだろう。

 なんとかしてあのオカリナを奪えないか。


「サボったらこうだぞ!」

 

 タコ星人は、そのオカリナの先っちょを俺に向けてきた。


「ヒッ!」


 やめて、あぶない。


「ははは、撃つわけないだろ。脅しだよ」


 タコ星人は笑いながら俺に向けていたオカリナを上にそらした。

 バカにしやがって! ムカつく!

 ――が、その瞬間。


 パシュン。

 閃光が夜空に向かって飛んでいった。


「……」

「……」


 え、えええええ!!!

 でちゃってんじゃん!

 ビームでちゃってるじゃん。


「し、しっかり働かないとこうなるってことだぞ!」


 そう言いながらもタコ星人は、安全装置みたいなものをカチャカチャとかけていた。

 コエ~。こいつ別の意味でコエ~。



 それから頑張って働いたおかげか、周囲に散乱していた積み荷はほとんどなくなった。

 あとは目の前にある、四角い大きな箱だけだ。


 ふう、つかれた。

 これを積んだら解放してくれるかな?

「もうお前に用はない!」って撃たれたりしないよな。


 ちらりとタコ星人を見る。

 よくわからない。

 ただ、こちらのことはシッカリと警戒していた。

 オカリナの照準を俺からはずそうとはせず、安全装置みたいなものにも手をかけている。

 くそ~。

 こいつアホっぽいからスキをつけばなんとかなると思っていたが、ちょっと厳しそうだ。


「おい! 最後の一個だ。さっさと運べ!」

 

 だめだ。とてもじゃないが、オカリナは奪えそうにない。

 逃げ出すのも厳しい。背中を撃たれたら一巻の終わりだ。


「グズグズするな! 時間かせぎは許さないぞ!」


 タコ星人はイライラしている。

 ほんとうに急いでいるみたいだ。

 クソ~、どうしようもない。


 チャンスを見いだせないまま、最後の荷物に手をかける。

 チクショー、最後までコキ使われる人生かよ。

 命令されて、荷物を運ばさせられて……って重!

 荷物を持ち上げようとして、あまりの重さに驚いた。

 

「ふぬぬぬぬ」


 ビクともしない。

 地面に固定されてるんじゃないかってぐらい重い。


「すみません、重すぎて持てないです」


 素直に言った。

 さすがに、これはムリだ。


「なんだと!」


 タコ星人は目を吊り上げる。

 でも、怒ってもムリなもんはムリなんですよ。

 そんなレベルの重さじゃない。


 ちなみにだが、タコ星人にもムリだと思う。

 アイツ俺より腕力がないから。

 最初自分でも荷物を運ぼうとしていたけど、たいして重くないものでも、重! って顔してたからね。

 まあ、だからこそ俺は撃たれずにすんでいるのかもしれんが。


「むぅ~、しょうがないな」


 タコ星人はなにやら思案している。

 その後、考えがまとまったのか、俺を見た。


「おい! ワカメ星人!」

「ワカ……」


 どうやら俺のことらしい。


「おまえはなかなか働いてくれた。お礼にその箱をやる」


 え? 箱を?


「横にある赤いマークに手をかざせ。一分ほどで起動するから」


 起動?

 メカ的な何かか?


「使い方は本人に聞け。じゃあな。いろいろ大変だろうけど頑張れよ」


 そう言うと、タコ星人はUFOに乗り込み、飛び去っていった。

 ポツンと残される俺。


 助かったのか……?

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