第170話 セーブポイント(腋)
ゆらりと。
何かに突き動かされるように、俺はアンジェリカの服に手をかけた。
パーカーの裾をまくり上げ、するすると肌を露出させていく。
「……お父さん、息荒い……」
見事にくびれたウエストライン。縦線を一本走らせたようなヘソ。豊満な乳房が作り出す、深い谷間。
いつ見てもアンジェリカの体は、完璧な造形美を誇っている。
もしも神がいるとしたら、何を考えてここまで美しい肉体を作ったのだろうか? 自分でこっそり楽しむために、観賞用に作ったんだろうか? つまり神様のエロ画像フォルダから飛び出してきたのが、アンジェリカなんだろうか? 保存形式はJPEGか? PNG形式と違って赤色が劣化しやすいので、この色素が抜けたかのような色白っぷりも頷ける。
「上書き保存しすぎたのか」
支離滅裂なことを呟きながら、まくり上げたパーカーの裾を丸めて、バストの上部に引っかける。
「……んっ……」
水色のブラジャーも、汗でてらてら光る腋も、完全に丸見えとなってしまった。
むき出しの肌から漂う少女の香りが、残り僅かな理性をさらに溶かしていく。もはやここにいるのは人間の中元ではなく、獣の中元だ。
俺は動物の本能に身を任せ、アンジェリカの生腋に顔を寄せる。
綺麗なもんだ。
真っ白な皮膚には浅い皺が数本あるだけで、毛穴一つ見当たらない。剃刀で丁寧で処理したからって、こうはなるまい。
きっとアンジェリカは、元々腋毛が生えない体質なのだろう。
なのに汗腺の方はきちんと発達しているらしく、こうして見ている間にも、プツプツと汗の雫が増えていく。
「おいおい、見られて濡らしてるのか?」
「……はっ、恥ずかしいこと言わないで下さい……」
かあっ……と頬を赤く染めて、アンジェリカは横を向いた。途端、腋から背中に向かって、つう……と腋汗が伝い落ちる。
まるで滴り落ちる肉汁だ。
もう、我慢できない。
できるわけがない。
「アンジェ……!」
俺はアンジェリカの腋に、ずぷりと舌を差し込んだ。
娘の腋ヴァージンを奪い取った瞬間だった。
「……は、あ……っ! ……くすぐったい……っ」
じわりと舌に広がる、アンジェリカの味。塩っぽい人肌に、甘ったるい思春期少女の風味がブレンドされた、至上の御馳走。
――美味い。
これなら、いつまでも舐めていられる。今まで舐めなかったのが不思議なくらいだ。いっそ主食にしてもいいいほどだろう。米離れ上等、俺にはアンジェリカの腋田んぼがある、と農家の皆さんに怒られそうな思考が脳裏をよぎる。農家っていうか全人類に怒られそうな思考だが、そんなことより今は腋汗だ。
「アンジェ……!」
「お父さん……!」
「アンジェ、アンジェ……!」
「お父さん、お父さん……!」
「腋汗、腋汗……!」
「名前呼んでください!」
ちろちろと舌先を動かし、上から下へと腋汗をすくい取っていく。皺の一本一本まで、あますことなく舌でなぞる。
もう、俺は人ではなかった。美処女の腋蜜を吸う、一匹の蝶だった。
唇を腋汗で湿らせ、喉を腋汗で潤す。人間世界ではとうてい許されない、禁断の快楽に脳が打ち震える。
「……ん……ふっ……」
よほどくすぐったいのだろう。
アンジェリカは声を押し殺して、身悶えていた。
敏感な体質なくせに、嫌がることなく俺に体をさらけ出し、ペロペロさせているのだと思うと、愛おしさが込み上げてくる。
「そうかアンジェ。やっとわかったよ」
「……え……?」
「お前は俺に、腋を舐めさせるために生まれてきたんだな」
「絶対違うと思います」
アンジェリカにしては珍しく、吐き捨てるような口調だった。凄く可愛かった。ご褒美だった。もっとやってほしかった。
完全に人として駄目になっているのを自覚しつつも、俺は腋舐めを続ける。
れろれろと腋一面を舌で濡らし、唾液で糸を引くまでしゃぶり尽くし、すっかり汗の味がしなくなったところで――口を離した。
「……ぅ……ふぅ……。……終わったんですか?」
「ああ。次は反対側だ」
「ですよねー」
アンジェリカは呆れたような声を発して寝返りを打ち、左半身を向ける。
わざわざ反対側の腋を舐めやすくしてくれたのである。
本当に孝行娘である。
「……私、お父さんがこんな変態さんだなんて思いませんでした……」
【パーティーメンバー、神聖巫女アンジェリカの好感度が100上昇しました】
アンジェリカの左腋に舌を差し込み、こちらの腋処女も散らす。
【パーティーメンバー、神聖巫女アンジェリカの好感度が200上昇しました】
「女の子の腋汗をすするのが好きだなんて……こんなのもう、私にしかお父さんの相手は務まらないじゃないですか……。他の女の子なら、ドン引きですもんね。私が一生お傍にいて、ペロペロさせてあげるしかないですよね……?」
【パーティーメンバー、神聖巫女アンジェリカの好感度が300上昇しました】
変態なのはお前も一緒だろ。なんでこのシチュエーションで好感度が上がるんだか。
俺は腋の下で小さく笑いながら、存分にアンジェリカを味わった。
官能的で、それでいて幸福感に溢れた、満たされた時間だった。
「――さて」
アンジェリカから顔を離し、綾子ちゃんの方を向く。
腋しゃぶりに夢中になるあまり、すっかり手首を抑えるのは忘れていたのだが、綾子ちゃんに逃げ出すそぶりはない。口元に両手を当て、湿った目で俺を見つめているだけだ。
濡れた黒い瞳が語りかける。――私のも舐めて下さい。べろんべろん舐めて下さい。
「ああ、わかってる。ちゃんと伝わったよ」
「……え?」
「綾子ちゃんも舐めてほしいんだよな?」
「……違います。マニアックすぎて、ついていけないって思ったんです」
「なるほど、左腋から舐めてほしいんだな」
「聞いて下さい!」
俺は綾子ちゃんの言動を全て無視し、服の裾に手をかけた。楚々としたデザインのハイネックブラウスを、蹂躙するかのようにまくり上げ、胸の上に引っかける。
大人びたデザインの黒いブラジャーと、それに包まれた豊かな膨らみが露になった。谷間の間にかなり汗をかいている。
「……あの……どうせ舐めるなら、胸の汗を……」
「……」
俺は乳房に左手を伸ばし、鷲掴みにした。
「そ、そうです。触るなら胸にして下さい……!」
そして、腋舐めの邪魔にならないよう、横にどかす。
続いて右手で腕を持ち上げ、腋が見えやすいようにする。
「なんで!?」
中元さんの好きなEカップですよ!? どうしてこっちにしないんですか!? と無意味な抗議を続ける綾子ちゃんを横目で見ながら、腋に鼻先を近付けた。
綾子ちゃんの腋。
白い皮膚は羞恥に染まり、ほんのりとピンクがかって見える。
まるで桃だ。
腋から胸の付け根にかけての、広い範囲が汗で濡れており、汁っ気も申し分なし。果汁だ。これは桃色の皮膚から溢れ出した果汁なのだ。
こんなの、美味いに決まってるじゃないか。
俺は迷うことなく、綾子ちゃんの腋に吸い付いた。
「あっ」
……ジュウウウゥー……ッ。
と音を立て、搾り取るように腋汗を吸う。
はみはみと甘噛みし、刺激を与えることも忘れない。こうすれば汗が増える気がしたのだ。
「ふあああー! く、くすぐった……!」
綾子ちゃんにしては珍しく、動揺しているらしい。凄まじい勢いで足をバタつかせている。
何かと危ない少女だが、人の心は残っていたようだ。腋ロストヴァージンの時は、さすがにしおらしくなるらしい。
「……頑張って処理してるみたいだけど、毛穴は結構あるな」
「……!」
「アンジェと違って、放っとくとボーボーになっちゃうタイプか」
「……もう、許して下さい……」
綾子ちゃんは胸まで真っ赤になり、涙目になっている。
なんてこった。
この子は腋を舐めるだけで大人しくさせられるのか!
もっと早く気付けば良かった! でもこんな特殊な弱点に早めに気付いてたらそいつ人間じゃねえわ! ならこれでいいのか!
「……うう……ふぅ……っ」
俺はアンジェリカより塩っ気の強い腋汗を舐めながら、慰めの言葉をかける。
「気にするなよ。見た目は完全に無毛なんだからさ。腋毛の生えない体質の子とは、差が出るってだけの話だ」
「……もう、お嫁にいけません……」
「大丈夫、この味ならどこの家庭にも需要があると思うぜ」
「……腋汗が家庭の味になるなら、この国は終わりです……」
疲れた体に染み渡る、塩飴のような癒し効果。
アンジェリカの腋汗が蜜ならば、綾子ちゃんのそれはスポーツ飲料だ。舐めれば舐めるほど、全身に力が湧いてくるのを感じる。
これはもう、両腋に回復スポットを設置しているようなものだ。
舐めるだけでHPとMPが全快し、疲れた冒険者に活力を与える、女神の泉――
「そうか。綾子ちゃんの腋は、セーブポイントだったんだな」
「……意味がわかりません……」
俺は綾子ちゃんの腋奥に舌を差し込み、それから腕を下ろさせて、体温計のように舌を挟み込んでもらった。
少女のぬくもりが、優しく舌肉を包み込む。
アンジェリカを舐めて疲労した舌の筋肉が、見る見る回復していくのがわかる。
俺は無我夢中で、腕と腋の隙間に舌の抜き差しを繰り返した。
入れては抜き、抜いては入れ、少女の腋肉を堪能する。
その間、綾子ちゃんは微動だにしなかったが、好感度が下がったというシステムメッセージは表示されなかったため、悪くは思われていないはずだ。
「……ふう」
すっかり粘っこくなった腋から下を引き抜き、息をつく。
「そろそろ限界だな」
俺は倒れ込むようにして突っ伏し、枕に顔を埋めた。
舌の疲れは取れたが、気力の方は使い果たした感がある。
アンジェリカも綾子ちゃんも眠そうだし、ここらが潮時だろう。
「……満足しましたか?」
「ああ。ありがとう、二人とも。必ずこの責任は取る」
「……責任?」
アンジェリカは困惑したような声で言った。
「俺は二人の処女を奪い取ったんだ。近親相姦の罪を犯した。この十字架は一生背負う。……何があっても、お前らを守り抜く」
「……あの、お父さん。格好いい台詞を言ってるところを申し訳ないんですけど……」
「なんだ?」
「腋に処女はありませんし、私達に血の繋がりはないから、近親相姦でもなんでもないですよ?」
「……ん、そうか。張り切りすぎてちょっとよくわかんなくなってたわ」
「腋の下を舐められて、くすぐったくなっただけなんですから、こんなのえっちじゃないですし」
「なるほど……言われてみればちっとも性行為ではないな。合法すぎる。合法の中の合法だ。超合法だわ」
とんでもなく卑猥な行為に及んだ気がしていたが、どうやら俺達はまだ健全な領域にいるらしい。
ようは腋の下を舌でくすぐっただけだし。
全年齢ってやつだ。
余裕のセーフだ。
俺は安心感に包まれながら、睡魔に身を委ねた。
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