第2702異世界 姉の婚約で、妹はメチャクチャに! 札に書いた願い事はかなうのか? 神殿の言い伝えは本当なの?
「第一王子様は、私ではなく、あのお姉さまを婚約者として、選んだのですか」
驚きました。私は銀髪のギンチヨ、侯爵家の次女です。
姉と第一王子の婚約は、侯爵家として、喜ばしい事であります。
姉と第一王子の二人は、学園の同級生でした。
姉は、金髪の美人で、周りからは優等生に見えています。
でも、姉は、学園を卒業してから、裏で隠れて遊び歩いていることに、私は気が付いています。
多くの令息を誘惑して騙し、ついには、第一王子の気を引くことに成功したようです。
第一王子のことは、詳しく知りませんが、このまま姉が王妃になって、国政は大丈夫なのでしょうか?
男性なんて、信じられない生き物です。
◇
王宮での婚約パーティーに参加しています。
「え? 第一王子様の親友が亡くなられたのですか」
第一王子の親友は、姉から誘惑され騙された令息です。
お話を聞けたらと思っていましたが、叶わなくなってしまいました。
「私の婚約者を侮辱したこの令嬢を追い出せ!」
第一王子が、姉の親友を断罪しました。
彼女は、姉の裏の顔を知っており、彼に再考を進言したようです。
でも、追い出せって? 追放じゃないのですね。
彼は、もしかして、姉に疑問を持っているのでしょうか。親友が亡くなったことに疑問を抱いているのでしょうか。
第一王子は、栗毛のイケメンで、学園時代の成績も良かったはずです。
「ギンチヨ嬢、これからは義兄弟になるのだから、次の休日、一緒に食事へ行かないか」
第二王子のクロガネ様が、私にアプローチしてきました。
彼は、黒髪のイケメンで、学園の同級生です。
「私は、休日も、学生として、学業に専念したいと思います」
「第二王子様は、宿題を終えられたのですか?」
男性を信じられない私は、誘いを断りました。
◇
神殿の図書館で勉強しているときです。
正面にクロガネ様が座って来ました。
「偶然だな、ギンチヨ」
「珍しいですね、第二王子様が図書館に来るなんて」
彼は、王族専用の家庭教師を雇っており、成績優秀で、図書館に来る必要なんて無いはずです。
誰かが、私の行動や好みを、彼に話したのだと思います。
「いま読んでる恋愛小説に分からない単語があるので、調べに来たんだ」
彼のことは警戒していますが、恋愛小説は、私の得意分野です。
「どこですか? その単語はですね……」
「神殿の中でファーストキスをすると、二人は結ばれて、幸せになるという言い伝えがですね……」
しばらく、恋愛小説の話題で盛り上がりました。
彼への警戒心は、解けました。
一緒に図書館を出て、神殿の中、ペガサスの絵が描かれた木の札に、願い事を書いて、下げている場所の前に来ました。
「懐かしいですね、中等部の時に、みんなで願い事を書いて、下げましたね」
「あ、あぁ」
クロガネ様は、生返事です。
「クロガネ様の願い札は、どれです?」
「見るな!」
彼の動きで、どの願い札か、バレバレです。
願い札の表に“宿題が無くなりますように”と、書かれているのが見えました。
これは、隠したくなりますね。
◇
王宮での夜会に呼ばれました。
侯爵家の令嬢、ましてや王妃となる女性の妹として、断ることはできません。
「ギンチヨ嬢、俺と踊ってくれないか」
第二王子のクロガネ様からダンスに誘われました。
彼は、ダンスのリードが上手く、会話も楽しいです。
「楽しかった、バルコニーで少し涼もう」
二人でバルコニーに出ます。
たそがれ時の風が、心地よいです。
「貴女の銀髪は美しいな」
彼が、私の髪を撫でました。
「クロガネ様……」
キスをする雰囲気になってきました。
「王族としての仕事がある、失礼する」
後ろめたい事でもあったのか、彼は逃げました。
「なんなのよ、もう!」
◇
また、王宮のパーティーに呼ばれました。
前回のことがあるので、参加したくはなかったのですが、立場があるので、しぶしぶ参加しています。
第二王子のクロガネ様が見えます。あれから、学園でも避けています。
私がバルコニーへ逃げたら、彼が追って来ました。
「ギンチヨ嬢、先日はすまなかった」
「俺の気持ちを整理したので、もう一度、やり直したい」
え? 彼は、私の肩を掴み、キスする雰囲気になってきました。
「クロガネ様……」
「ここにいたのか」
突然、第一王子がバルコニーへ来ました。
もう少しだったのに……
「先日、第二王子が失礼をした。怒らないでくれ。こいつに、貴女の姉のことを探るように頼んだのは私だ」
「どういうことですか?」
「冷静になって考えてみたら、私は彼女が信じられなくなってきた。こいつは貴女の同級生なので、芝居でデートに誘って、情報を聞き出してもらっていたんだ」
「第二王子様が、芝居で私を誘っていたこと、解りました」
私のこめかみに青筋が立っていると思うのは、気のせいではありませんよね。
「姉の裏の顔は、もうご存じなのでしょ!」
「では、私は、失礼します」
怒って、バルコニーを出ていきます。
「ギンチヨ……」
クロガネ様は、泣きそうな顔です。
「サヨナラです、第二王子様」
そのまま、王宮から出ていきました。
◇
後日、第一王子は、姉との婚約を破棄しました。
王族への不敬と不貞の罪で姉を断罪した後、第一王子は、混乱の責任をとって、王太子の座を返上しました。
私は、図書館で勉強しようとしましたが、一人ボッチだと泣いてしまい、ノートを汚すだけです。
帰ろうと図書館を出て、願い札の前まで来た時です。
「クロガネ様が中等部の時に書いた願い札……」
表に“宿題が無くなりますように”と、願いが書かれています。
ふと、願い札を手に取り、裏を見ました。
「え!」
裏には“ギンチヨ嬢と結ばれますように”と、願いが書いてあるのを見つけました。
「私は、彼を誤解していたのですね」
急いで、彼に会いに行かなければ! 走ります。
あ、神殿の出口に、彼が立っていました。
「ここにいたのか、お願いだ、俺の話を聞いてくれ、先日の誤解を解きたいんだ」
「もう、誤解は解けていますよ、クロガネ様」
彼の瞳は、つやのある黒色で綺麗です。
「俺のプロポーズを受けてくれ、ギンチヨ」
彼は、立ったまま、プロポーズをしました。
「恋愛小説のような、甘い言葉はないのですか?」
彼の胸に飛び込みます。
「俺は、言葉より、行動で示す方が得意なんだ」
私たちは、神殿の中で、ファーストキスをしました。
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あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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