第5話
嗅いだことのある生臭い香り。
そして 横たわる君。
何度頭の中で違う生き方を想像した事だろう…
でもこれは現実。
そう… "僕が君を壊した" という現実。
「ねぇ… 痛い…?」
「ねぇ… 苦しい…?」
そう言いながら逃げ惑う君に対して僕がおこした事。
これは君が僕をバカにしたのが悪い。
その結果がこれなのだ。
「そんなに耳も手首もして…」
「痛くねぇの…?」
そんなふうに聞くのだから、
"なら同じになればいい"と僕は考えてしまった。
君はもういない。
分からない人には分からせればいい。
そう思って… そう考えて…
僕は君に刃物をさした…
大丈夫。きっと、大丈夫。
バレることはない。
だって君は元々存在してはいけない人間なのだから。
灰皿の上にはさっき消した煙草。
部屋に充満する、煙草と血腥い香り。
大丈夫。
もうすぐ始末屋が来る。
そして、インターフォンがなり、
君はブルーシートに包まれ運ばれて行った。
と同時に僕は報酬を受け取る。
どんな最終処分を知らない。
ただ僕は"仕事"をしただけ。
別に君の事を 愛してた 訳では無い。
そうして僕はその事実を消し去るために、
また1つ僕自身に慣れた手つきで傷を手首につける。
そして…
"腕に滴る赤い鮮血"
君の血腥い匂いを僕の鮮血の匂いで書き換え、僕は得体の知れない虚無感に苛まれる。
この虚無感がある限り、
僕は得体の知れないなにかに生かされ続けてる。
そうして僕は、僕の鮮血が僕の腕から落ちないうちに包帯を巻き直してその部屋を出るのだ。
僕は殺し屋。
依頼を受け、相手を殺し、回収されたのを確認し、報酬をもらい、その場を後にする。
生きる意味がわからない僕だからこそできる仕事だと聞かされてる。
そうして僕は、また、人の多いネオン街を歩き重い扉を開ける。
「いらっしゃい…」
痛みと鮮血と… 理緒 @Rio_0817
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