第230話悪魔城 暗い森『魔界』2

暗い森を、眷属達を使って上手く切り抜けたウルド ツールとアイシャ。




「ここが氷の異空間じゃ、それから、あそこ・・・・・」




アイシャの示した場所は、氷が破壊され、水面が見えていた。




「助かる」




ウルド ツールは、急いで二人を湖の中に沈める。




――ゆっくりと癒してくれ・・・・・




ウルド ツールは、2人が沈んだ水面を眺めていた。



「お主は、これからどうするのじゃ?」



「2人が回復するまで、ここで待つ」




「わかった。


 もう、ここには誰もいないと思うが、気を付けるのじゃぞ」




「ああ、・・・・・」




アイシャは、ウルド ツールと別れ、

再び、森の異空間(暗い森)に向かった。




しかし、森に入る手前で、声をかけられる。


「アイシャ!」


聞き覚えのある声。


アイシャの振り向いた先には、京太の姿があった。



「ごめん、あいつ等に、外まで転移させられて・・・・・

 ところで、他の皆は?」



辺りを見渡す京太。



「・・・・・・」


「アイシャ・・・・・」


アイシャは、無言で抱き着く。


「・・・・・遅いのじゃ」



「うん・・・・・ごめん」



京太は、アイシャの頭を撫でた。


暫く無言で抱き着いていたアイシャだったが、

我に返ったように、話しを始めた。




「そうだ、この先の暗い森で、皆がピンチなのじゃ。


 わらわ達では、相手が強すぎて歯が立たん。


 今、戦っておるのは、ラムとクオンだけじゃ」




「・・・・・他の皆は?」




「マチルダが守っておる。


 だが、それも時間の問題なのじゃ」




「わかった、急ごう」




京太は、アイシャの手を取り、暗い森に飛び込んだ。



京太にとって、初めて入る暗い森。


薄暗く、敵の存在に、気付きにくい結界が張られていることに気付く。



――そういう事か・・・・・



京太は、アイシャの案内に従って、仲間のもとへと急ぐ。


しかし、敵が素直に通してくれる筈もない。




「また、現れたわね、行くよ!」



エルフの集団が、京太とアイシャに襲いかかる。


「京太!」


「大丈夫、わかっているよ『ウインドカッター』」



放たれた魔法に、薄ら笑う。



「馬鹿め、この森で魔法など・・・・・・ウギャァァァァァ!!!」



神の力を纏った京太の魔法を、木々は、吸収出来なかったのだ。



その為、木の枝から飛び降り、襲いかかったエルフ達は、

ウインドカッターの餌食となった。



生き延びたエルフを発見した京太は歩み寄る。


「エルフがなぜここに?」


「傷を負ったエルフが、京太を睨む」



「私をエルフだと・・・・・

 ふざけるな!

 私は、ダークエルフだ!」




褐色の肌、身体に刻まれた紋章。


グラマラスな体形に、露出の多い衣装。




何とか動いた右腕を使い、隠し持っていたナイフで襲いかかる。


だが、京太は、その攻撃を、いとも簡単に躱して、ナイフを取り上げた。



「聞きたい事があるから、少し痛い目に合って貰うよ」



京太は、捕らえたダークエルフをロープで縛り、肩に担ぐ。



「アイシャ、急ごう」


「うむ」


2人は、マチルダ達の元に向かうが、

仲間を取り戻す為に、ダークエルフの襲撃も熾烈を極めた。


肩に担いでいたダークエルフをアイシャに預ける。



「アイシャ、その子をラム達のもとへ」


「了解じゃ!」


京太は、追手と向かい合う。




――エルフに似ていて遣りづらいな・・・・・


  出来るだけ、殺さないようにしよう・・・・・・



ふと出た京太の『甘さ』。


その気持ちが、仲間を窮地に追い込む。



一つ目の監視者の目を通し、

全てを見ているバアルは、この隙を逃さなかった。



――やれ、今だ!・・・・・・



アイシャの肩に担がれていたダークエルフは、魔力を暴走させ、自爆する。


魔力の大爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされるアイシャ。



「アイシャ!!」



甘かった。


あの時、止めを刺しておけば、アイシャも無事だった。


それなのに、エルフに似ているという理由だけで、

『和解出来るかも知れない』と思ってしまったのだ。


京太は、忘れていた。


ここは『魔界』。


悪魔達が、再び世界を破壊する為に創り上げた世界。


――僕は、何を考えているんだ!・・・・・・


京太は、吹き飛ばされたアイシャを追う。


しかし、道を塞ぐダークエルフ達。



「行かせは、しないよ」



「どけっ、お前達の相手なんてしていられるか!」



京太の周りに次々と集まるダークエルフ。


しかし、それは、京太の視線を釘付けにする為の罠。



タイニングを見計らい、

今まで、戦いの様子を見ていたキラーウッドが、

京太に襲い掛かる。



「グフゥ・・・・・」



鞭の様に、しなる枝の攻撃。


誰も、止める事が出来ない。


ダークエルフ達は、そう思った。


しかし、京太は、いとも容易く片手で止める。


「燃えろ」


その言葉一つで、キラーウッドの枝に火が付いた。



「ウギャ、ウギャ、ウギャァァァァァ!」



暴れるキラーウッドの枝が、仲間のキラーウッドにぶつかる。


すると、その火は、そのキラーウッドにも移った。



連鎖で、燃え上がる森。


流石のダークエルフ達も撤退を選ぶしかない。




しかし、京太は、それを許さない。


「ゾーンバインド」


逃げようとしたダークエルフ達の足に、蔦が絡みつく。


「絶対に逃がさない・・・・・」


鬼の様な形相の京太。


その手には、バスケットボール位の炎の玉が、現れている。




「捕虜にするとか、もう考えない・・・・・

 このまま塵と化し、消え失せろ『エクスプロージョン』!」


この大爆発は、ダークエルフだけでなく、

周囲の木々やキラーウッドまでも巻き込き、

辺り一面を焼け野原へと変えた。




京太は、アイシャのもとへと急ぐ。


木の影で倒れていたアイシャは、無残な姿へと変わっており

京太は、言葉を失う。


――アイシャ・・・・・・


目の前のアイシャは、両腕と片足を失くし、

全身に酷い火傷を負っていた。


だが、不死のヴァンパイアだけあって、生きてはいるようだ。


急いで治療をおこなう京太。



『リカバリー』、『ハイヒール』で体の傷は治した。



しかし、精神的ダメージが大きく、未だ、意識を失っており

直ぐには、目を覚まさなかった。



「アイシャ、ごめん・・・・・」



アイシャを抱きしめ、謝罪を繰り返していると

誰かが、近づく気配を感じた。



「誰だ!」


思わず、声を張り上げた京太の前に、現れたのはクオンだった。


「お兄ちゃん・・・・・」


「クオン!」


クオンは、京太に抱き着こうとしたが、

京太の腕に抱かれているアイシャに気付く。



「・・・・・アイシャお姉ちゃん・・・・・」


クオンは、アイシャの頭を撫でる。


「・・・・・・お兄ちゃん、近くにラゴとデュラとエクスもいるんだ。


 わたし、呼んで来るよ」



クオンは、そう言い残して、駆け出した。



「クオン、ありがとう」



京太は、この場に留まる事を決め、結界を張った。




その様子を見ていたバアルは笑う。



「ハハハ・・・・・良い、とても良いぞ。


 亜人の替えなど、幾らでもおるわ。


 何度でも治せ、その代わり、貴様が『堕天』するまで、

 何度でも痛めつけてやる」




バアルは、京太の強さを理解した。


その為、京太の仲間達を狙い、精神的苦痛とダメージを与え、

思考を誘導し、『堕天』させる方法へと切り替えた。


京太を狙わず、その仲間達を狙い、

『ジワジワ』と京太の精神を痛めつける。


この作戦により、京太を追い込んでゆくつもりだ。


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