第226話悪魔城 突入

サイクロプスを破壊し、辿り着いた城門。


もう一度触れてみたが、何の反応も無かった。




「行こうか」




京太は、城門を切り裂く。


崩れ行く門の先には、何も見えない。




――先に進むしかない・・・・・・




先頭を歩く京太。


城門跡を潜った瞬間、何かが体に触れる。


その感触は、シールドを抜けた感触に似ているが、何か違う。




近づくにつれ、全貌が露となる。


見た感じは、只の城だが、

その事が、逆に異様とも思えた。



城に足を踏み入れると、正面のフロアには、左右に続く廊下があった。



フロアの奥には、二階に上がる階段もある。



全員がフロアに入ると、入り口が『スッ』と消えた。



「えっ!何!?」



驚くソニアの声を余所に、空間が歪む。



――やはりここは・・・・・・



京太達は、異次元に取り込まれていたのだ。


空間の歪みから、続々と姿を現すガーゴイル。


だが、先程までのガーゴイルとは、全くの別物だ。




ガーゴイルは、壁からではなく、

空間から突然現れて、攻撃を仕掛ける。


後退すれば、そこに現れ、襲いかかるガーゴイル。


密集陣形で、背後からの攻撃を防ぐ事にした京太達に、

今度は、炎のブレスが襲い掛かる。


しかも、それは、一カ所ではなく、複数個所からの同時攻撃。


狙いもバラバラ。


「負けないんだから!」


マチルダを筆頭に、魔法を使える者達が、敵の攻撃を防ぐ。


それでも、ガーゴイル達は攻撃を続ける。


一発目の炎のブレスが終わると、直ぐに、二発目が放たれた。


三発目、四発目と延々と同じ攻撃を繰り返すガーゴイル。




流石に、この攻撃には、京太の仲間にも疲労が見え始める。



このまま続けば、京太や『神』になった者達は、大丈夫だが、

他の者達は、危険かもしれない。



目の前には、空間から溢れ出たガーゴイル達が、

笑みを漏らしている。


「グゲゲ・・・・・」


ガーゴイルの狙いは、わかっている。


魔力が切れ、『魔法防御』が出来無くなった時を待っているのだ。



そのチャンスを、歪な笑みを浮かべながら、

数を増やし、伺っている。



――絶対に守る!・・・・・・


京太の思いが通じたのか、同じことを思っていたのか、

クオンが、小声で話しかける。



「お兄ちゃん、先に行くね!」



返事を待たず、飛びだしたクオンを、炎のブレスが襲う。


しかし、クオンに、炎のブレスが直撃する寸前、

クオンの後から飛び出したエクスが、クオンに体当たりをして、

炎のブレスを回避させる。


「きゃぁ!」


エクスの体当たりにより、2人は、壁際まで飛んで行ったが

壁への衝突は、何とか回避した。



「エクス?」


体を起こし、話しかけてくるクオンを

ジッと見つめるエクス。


「お姉ちゃん、1人は駄目です。


 いつも一緒です」



不貞腐れるエクス。


助けられたクオンは、エクスの頭を撫でた。



「うん、そうだね。


 一緒に行こう!」



2人へと、振り返るガーゴイル達。



「グギギギギギ・・・・・・」



クオンとエクスも武器を構えると、

ガーゴイル達が、襲い掛かった。



だが、『神』となったクオンの早さは、凄まじく、

ガーゴイル達は、追いつく事が出来ない。



次々に塵と化すガーゴイル。


攻撃が、分散したおかげで、ガーゴイルの攻撃に

隙が生まれる。



「今度は、私」



ラムは、『神の力』を込めた矢を放ち、

炎のブレスを吐くガーゴイル達を、次々と倒す。


炎のブレスが止むと、京太達も攻撃に加わり

ガーゴイルの殲滅にかかる。


だが、ガーゴイル達は、空間を裂き、次々と現れた。



ここでも、きりのない攻撃に、晒される京太達。


せめて、出現場所さえわかればと、よくよく観察していると

あることに気が付いた。



――あ、あれは!!・・・・・



ガーゴイル達が、出現する予兆に気が付いた京太。


「波紋だ!」


水滴が、水に落ちた時と同じように、空間に波紋が広がった後、

ガーゴイルが現れていた。



「波紋が起きた後、あいつ等は、出て来るぞ!」



「ほう・・・・・」



ウルド ツールは、京太の言葉を聞き、空間を観察する。


すると、一瞬だが、視界がぼやけた。


そして、そのぼやけた場所の中心から、ガーゴイルが、姿を見せる。


理解したウルド ツールは、行動に移す。



「なるほど・・・・・これですか」



波紋を見つけたウルド ツールが、その中心に、

剣を振り下ろすと、姿を見せたガーゴイルがあっさりと倒され、波紋も消えた。



「仕掛けがわかれば、簡単なことだな。


 京太殿、先に行かれよ、ここは、任せたまえ」



ウルド ツールは、『召喚』をおこない、仲間を呼び出す。


「さて、波紋から出て来る者達を、倒すのです」



「うん、わかったよ」


「任せて」


「は~い」


「・・・・・うん」



四精霊を筆頭に、所狭しと現れるウルド ツールの眷属達。


競争しているかのように波紋を見つけては、ガーゴイルを倒す。


だが、この状況を作り出している悪魔は、まだ、見つかっていない。


それでも、京太達は、この場をウルド ツールに任せ、階段を駆け上がる。



すると、階段の踊り場に、空間を切り裂き、

突如、1人の悪魔が姿を見せた。





「へぇ~、本当に来たんだ。


 まぁ、僕の狙いは、そこの君じゃなくて、

 君の仲間を減らす事だから・・・・・・」



京太を無視して、京太の仲間を殺すと宣言する悪魔。


「僕に名はありませんが、

 貴方達を・・・・・・」


悪魔の自己紹介を遮るように、風が吹く。


その風は、クオン。



「仲間は、殺させません。


 それは、絶対です!」



人族でありながら、何の迷いも無く『神』を受け入れ、

京太と仲間という家族の為ならば、

わが身を犠牲にすることも辞さないクオン。


先陣を切り、悪魔に襲い掛かったクオンの目には、

恐怖などは無く、ただ、目の前に敵を倒すことだけに、向けられていた。


その姿が、ソニアには、眩しくもあり、悔しくもあった。


――私は、何をしているのだ・・・・・・


ソニアは、持っている魔剣を力強く握る・・・・・。


そんなソニアの気持ちなど、察することなく

お構いなしに、戦いが始まる。


再び、悪魔との戦いに挑むクオンとエクス。


2人に、この場を任せて、階段を駆け上がる京太達。


階段を上がると、左右に通路は無く、奥に扉があるだけ。


「じゃぁ、行くよ」


駆け寄り、その扉に手を掛ける京太。


『グギギギ』っと音を立てながら開いた扉の先には、3つの通路。


しかも、その通路は、それぞれの特性を持っていた。



1つは、氷。


 冬の嵐が吹き荒れる道。




2つ目は、熱。


 灼熱の地獄を現すかのように、道を外れた所には、溶岩が流れていた。




3つ目は、森。


 一歩先も見えない程、木々が生え茂った暗い森には、

 道など見当たらない。




「京太、どうするの?」


デュラが問いかける。


だが、その時、京太の脳裏には、過去の光景が浮かんでいた。



――この場所には、見覚えがある・・・・・・



・・・・・かつて神と悪魔が戦った地。



そこで、思い出す。


この城に入った時の違和感。



「あの感触は・・・・・・」


異空間などではない。


次元を超えて『魔界』に来ていたのだ。


ただ、その事実よりも、『魔界』と地上が繋がってしまっている事に驚愕する。



「こんなに力をつけていたなんて・・・・・」



――でも、それなら・・・・・・



京太も記憶から、理解した。




――全てを網羅しないと先には行けない・・・・・



「京太ぁ~」



デュラの声を聞き、我に返る。



「ごめん、色々思い出していたんだ」



「それで?」



京太は、仲間達に告げる。


この道の全てを網羅しなければいけない事。


ここは、『魔界』だという事。



それを聞いた仲間達は、3つの組に分かれて行動する事にした。



一組目、京太、ソニア、デュラ


二組目、ラム、アイシャ、ラゴ、

三組目、、マチルダ、ラムール、サリー



それぞれの入り口に立ち、挨拶を交わして進む。



だが、全員が進み始めると、目の前の景色が歪む。



「フハハハ・・・・・・


 そんな過去の遺物。


 いつまでも残していると思うのか・・・・・愚かな奴め」



突然聞こえて来た声。



「ベルゼブ!」



京太の声だけが、この場に響いた。



一方、

京太達を見送ったクオンとエクスの前には、

悪魔が、立ち塞がっていた。


「それでは、始めましょうか!」


笑みを浮かべ、そう告げた悪魔と対峙した2人は、

先手を取り、攻撃を仕掛ける。


2人は、片手剣を小さくした物を両手に備えている。


所謂、二刀流だ。


悪魔に接近した2人は、その剣を振る。


1度で、4度の攻撃を繰り出すが、この悪魔を捉える事が出来ない。


悪魔は、接近しても、空間に逃げ込んでしまうのだ。


クオンとエクスが、幾ら攻撃を仕掛けても、

同じことを繰り返すだけで、

悪魔に、致命傷を与えることが出来ない。


「フフフ・・・残念な事ですが、

 僕に掛かれば・・・・・ん?


 もしかして、貴方は、『神』のようですね」


クオンの正体に気が付いた悪魔は、

恍惚とした表情を見せる。


「なんて、運の良い事でしょう。

 

 この僕に、神を倒せる機会が来るなんて・・・・・

 この偉業を達成すれば、

 きっとベルゼブ様も、お喜びになって

 僕に、名を与えてくれるでしょう!」


悪魔の目が、怪しく光る。


同時に、空間を利用して、攻撃を仕掛ける悪魔。


攻撃を仕掛けては、消える。


体は、完全に隠しているので、

クオン達に見えるのは、腕だけ。


現れては、攻撃を仕掛けて消える、

そして、別の場所から、攻撃を仕掛ける。


「ハハハ・・・・・この僕に、攻撃することなど不可能!

 貴方達は、いずれ、この僕に倒されるだけだ!」


勝ち誇ったように告げる悪魔。


確かに、今までのクオンならば、手を焼いたかもしれないが

今のクオンは、神。


動きを止め、オーラを体に纏わせる。


『大気の神シューさん。


 力を貸してください・・・・・』


一気に広がるクオンのオーラ。


それは、下にいるガーゴイルも破壊する。


悪魔は、神を舐めていた。


クオンが放ったオーラにより、悪魔の位置が特定され

次の攻撃が、何処から来るかが、予測できる。


悪魔が、攻撃を仕掛けた。


だが、既に、その攻撃を把握していたクオンにより

悪魔の腕が、斬り落とされる。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


思わず悲鳴を上げ、姿を見せてしまった悪魔に

勝ち目などない。


すかさず攻撃を仕掛けて、倒す。


悪魔との戦いが終わると、ガーゴイル達の出現も止まっており

ウルド ツール達と合流する。


「お兄ちゃんを追いかけるよ」


「ああ、勿論だ」


4人は、京太達の後を追った。



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