第227話悪魔城 異空間『魔界』での戦い

ベルゼブの声が消え、暫くすると、京太の目の前が黒一色に染まる。


――なにっ!・・・・・


突然の出来事に、抵抗することが出来ない。


暫くすると、京太の目に光りが戻ったが、

そこは、先程迄の場所ではなく、森の中だった。




「ここは・・・・・・」




見た事のある景色。


京太は、『アビスの奥に巣くう者』との対決した場所へと戻っていたのだ。


「僕は、追放されたのか・・・」


そう思うと直ぐに、魔法を使って

周囲を探索したが、仲間の姿は見当たらない。


――もしかして、僕だけ・・・・・・

  なら、早く、戻らないと・・・・・


京太は、悪魔城に向けて飛び立つ。




その頃、仲間達も、それぞれの場所に飛ばされていた。




真っ暗な世界から、視界を取り戻したラム、マチルダ、ソニア、サリー、

ラムールの5人。


先程決めたチームなど、関係なく飛ばされたようだ。


そこに、背後から何かが近づく。


思わず武器を構えたが、よく見ると、ウルド ツールとラムザニアだった。


「2人とも、どうしたの?

 クオンとエクスは?」


 ラムの問いに応えるラムザニア。


「我らにも分からぬ。


 先程までは、4人で居たのだが、

 あの扉を開けたら、暗闇に包まれ

 気がついたら、我らだけが、ここに居たのだ」


ラム達と同じだった。


ウルド ツール達と合流して、歩いてると

周囲の温度が上がり始め、自然と汗を掻く。


「これ、暑すぎない?」


思わず愚痴を漏らすソニアに、

皆も同意する。


止まらない汗。


思わず服を脱ぎたくなるが

ここは、戦地。


そんな事は、出来ない。


我慢しながら、先に進むと

暑さの正体が、見えて来る。



「なんだ、これは・・・・・・」


目の前に広がるマグマの海。


先の見えないフロア。



そして・・・・・


マグマの海を泳ぐ『フレイムドラゴン』と空を泳ぐ『マンイーター』。



マンイーターは、ラム達を発見すると、口を開け、襲いかかる。



「ちっ、休む暇無しかよっ!」



愚痴を溢しながらも、マンイーターの攻撃を躱し、

三又の槍で突くラムール。


だが、その皮膚が、攻撃を受け付けない。


「げっ!


 刺さらねえ!」



ラムールの槍では、傷1つ付かなかった。


それは、他の武器を持つ者達でも同じ。


ソニアの持つ魔剣でも、傷をつける程度。


唯一対抗出来たのは、神の力を込めたラムの矢だけだった。



だが、ウルド ツールは、諦めていない。


もう一つの攻撃方法を思いつく。



「『水の魔法』なら何とかなるかも、しれませんね」


「えっ!」



「ソニア殿の魔剣は、『氷』。


 それで傷がついたのであれば、やってみる価値はあると思います」



「わかったわ」



マチルダは、複数のウオーターボムを放ち、

マンイーターの攻撃を防ぐと同時に、爆発によるダメージを狙った。


結果として、直撃を受けたマンイーターがマグマの海に沈んだのだ。


「間違いないみたいね」


「では、我等の出番だな」


ラムザニア、ラムール、ウルド ツールが前に進み出る。


『ウオーターカッター』


『アイスランス』


『ウオーターボム』


3人から、次々と放たれる『水魔法』にマンイーター達は、

マグマの海に沈む。


マンイータ達を屠ると

満を持したかのように、全貌を現すフレイムドラゴン。


鎌首をもたげ、ラム達を睨む。


「シャァァァァァーーーーーー」


掠れたような叫び声を上げるフレイムドラゴン。


その声は、不快感と共に、体を縛る。


「う・・・・・」


「ぐ・・・・・」


身動きの取れなくなった仲間達。


――えっ!どうなっているの?・・・・・・


驚いているラムは、神。


その為、全く効果がなかったのだ。


それでも、フレイムドラゴンは、笑みを浮かべる。


次の瞬間、フレイムドラゴンは、

ラムを放置し、身動きの出来ない者達に牙を剥く。


「させないっ!」


フレイムドラゴンの攻撃を、ラムは弓を射って防ぐ。


フレイムドラゴンは、嫌らしく、身動きの出来ない者達ばかりを狙い

ラムに、先手を取らせない。


そんな中、少しだけ動けるようになったマチルダが、

『防音結界』を張る。



――これで、あの攻撃は防げる・・・・・でも・・・・・



マチルダの中には、後悔があった。


京太から『神』の話を聞いた時、マチルダは、内心、喜んだ。


しかし、後から仲間になった事や、イライザという姉の事を思い、

『神』になる事を後回しにした。


しかし、今となっては、あの時、素直に受けていれば、

この状況も変わっていたのではと、後悔していた。


――受ければ良かったかな・・・・・


そう考えてしまうマチルダだが、諦めたわけではない。


──人の身でも、やれることはある!・・・・・


危険な賭けではあるが、他に手立ては、浮かばなかった。



――みんなは守る!・・・・・・



ゆっくりと右手を伸ばす。


静かに・・・・・気付かれないように・・・・・


仲間を守る結界を張る。


そして・・・・・


――今!・・・・・


「ビックウエーブ!!!」


ラムの背後から、突如現れる『大津波』。


ラムとの攻防で、口を開いたままのフレイムドラゴンは、

その水に抗えず、体内に流し込まれる。


マグマにも、大量の水が流し込まれた為

大量の水蒸気が発生して、轟音と共に水蒸気爆発を起こした。


当然それは、周囲のマグマだけでなく

フレイムドラゴンの体内でも、同じことが起こっており

徐々に、体が膨らみ始め、

限界を迎えると、跡形もなく吹き飛ぶ。


全てが、吹き飛ぶ中でも、

京太の仲間達は、マチルダ張った結界のおかげで被害はない。


全てが収まった後、思わずラムが呟く。


「これ・・・・・なんなのよ・・・・・」


大爆発せいで、

ラム達の前には、何も残っていなかったのだ。



水蒸気爆発の威力は、魔界の『異空間』であったにも拘らず

悪魔城をも、震わせていた。



「今のは、何だ!」


声を荒げるベルゼブ。


「はっ、敵の攻撃の余波かと・・・・・」


「そんな事はわかっている。


 状況を話せ!」


荒れるベルゼブの前に、姿を見せるバアル。


「ベルゼブ様、先程の衝撃は、奴らの魔法です。


 ですが、ご安心を、

 『マグマの異空間』は、破壊されましたが、『氷の異空間』は順調です。


 それに、あの男は、既に悪魔城から追放いたしましたので・・・・・」


「そうか、あの男を追放したのか」


ベルゼブは、ニヤリと笑う。


「『もう1つの間は、どうなっておるのだ?」


「『森の異空間』でしたら、

 アモンと『ダークエルフ』が待機しておりますので

 何も問題ないかと・・・・・・」




「うむ。


 よいか、あの男のいない内に、あ奴の仲間を殺せ!


 そして、後悔させるのだ!」



ベルゼブの声に反応するように、森がざわつく。




その頃、『氷の異空間』に放り込まれた

アイシャ、ラゴ、デュラと

遅れて現れたクオン、エクスの5人がいた。




目の前には、降りしきる雪。


凍り付いた湖。


その奥には氷山。



迫って来る敵は、雪だるま。


奴らの攻撃は、単純で、特攻のみ。



だが、少しでも雪だるまに触れると、

そこから凍り付いてしまうのだ。


続々と押し寄せる雪だるま。



「これ、どうするのじゃ!」


「わらわに聞くでない!」


空から攻撃を仕掛ける5人。


アイシャがデュラを抱き、クオンがエクスを抱いている。


ラゴは単独。



当初、5人は、地上で戦っていた。


しかし、雪崩の様に押し寄せた雪だるまに、

成す統べなく、空へと逃げたのだ。


そして現在、地上は、雪だるまに埋め尽くされていた。



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