第225話悪魔城 城門到着

ラムに続き、クオンが『神』を受け入れた。



クオンは、今まで魔法が使えなかったが、今は風の魔法と

補助魔法を使える。



その中でもアイテムボックスが使えることに、大喜びをしている。


「お兄ちゃん、これがあれば、荷物一杯持てるよね」


「そうだね・・・・・ん?」



クオンは、両手を前に出している。


「何か、頂戴」


クオンの横に、エクスも並ぶ。


「・・・・・・」


京太は、アイテムボックスから、魔物や魔獣の肉と果物を取り出す。


「これでいい?」


「ありがとう!


 でも、薬草も欲しいな」



――確かに持たせて置いた方が良いかも・・・・・



京太が、薬草を取り出していると、ラムも近づく。


そして、クオンと一緒に、アイテムボックスの中に、

京太の取り出したアイテムを収納した。


「お兄ちゃん、ありがとう!」


クオンとエクスは、満足して京太から離れたが

ラムは残っている。



「ねぇ、京太。


 『神』になった事は、秘密にした方が良いの?」



「ん?」



「ミーシャや里の人達に、教えた方が良いのか悩んでいるの」



「確かに、そうだね。


 ミーシャに関しては、問題無いよ。


 でも、里の全員に話す事に関しては、ミーシャとも相談した方が良いかもね。


 僕としては、2人の気持ちを尊重するよ」



「ありがとう、そうするわ」



ラムは、納得をして、その場から去った。




辺りを見渡す京太。


皆は、それぞれに集まって、話をしている。


――もう少し待つか・・・・・


戦闘の疲れも考えて、暫くここで休む事に決めた。




その頃、ベルゼブは、情報を持ち帰った悪魔からの報告を受けていた。



「【カイム】、貴様の見て来た事を話せ」



「はい、2人目の『神』を発見致しました」


「やはりか・・・・・・」


ベルゼブは、京太の他にも、『神』が紛れ込んでいると考えていた。



――やはり、たった一人の神の仕業では、なかったのだな・・・・・



カイムの持ち帰った情報は、ラムが『神』になったところまで。



クオンが『神』になった事は知らない。


それに、悪魔達は、神が滅び、全てを京太に託された事も知らないのだ。



もし、この事実を知っていれば、慎重な作戦を取らず、

もっと大胆な行動に出て、京太達を苦しめる事になっていただろう。


しかし、それは、あくまでも想像でしかない。


現実は、今の、この状態。


神が隠れていたと思い込んでいたベルゼブは、玉座から立ち上がる。



――ククク・・・・上出来だ・・・・・歓迎してやろう・・・・・



ベルゼブは、高らかに宣言をする。



「奴らの為に、歓迎会を開こうではないか!


 盛大にもてなせ!


 遠慮は無用だ!


 この地は、我等のものとなるのだ!」




魔王の間の宣言により、

魔王の間に集まっていた者達の歓喜の声が響く。



「「「魔王様、万歳!」」」


「「「この地を我等のものに!」」」



士気を高めたそれぞれが、戦いに赴く為、魔王の間を後にする。


1人、魔王の間に残ったベルゼブは、玉座に腰をかける。



「さて、神は、ここまで来れるかな・・・・・ククク・・・・・」






その頃、京太達も動き始めていた。


勿論行く先は、魔王城。




遠くに見える魔王城に向けて、一本道を進む。



やはり、途中で魔物や魔獣の襲撃を受けたが、

先行するクオンとエクスに倒されていた。



クオンは、戦闘を通して、自身の体の感覚を調べている。



――やっぱり、神になると違うんだ・・・・・・



今迄以上の身体能力。


魔法の力。


未だに全力は、出し切れていないが、感覚は掴めつつあった。





そして、遂に悪魔城の入り口に立った。



禍々しさを隠さない巨大な門。


その横に、門番のように埋まっている『サイクロプス』。




「あれは、動くのですか?」




マチルダの質問に答えるアイシャ。




「多分そうであろう・・・・・


 あの門に触れると、動き出すのではないのか?」




「じゃぁ、行って来るね!」




飛び出す、クオンとエクス。


京太達も、戦いに備える。


「戦闘態勢!」


京太の一言で、皆が武器を手にした。


「いっくよ~、えい!」


2人が同時に門を触る。


すると、サイクロプスではなく、門に描かれていた絵が襲いかかった。



「ニャァァァァァ!」



勿論、ターゲットは、クオンとエクス。



門から飛び出した2体の猫の化け物は


目が3つ、足が6本あった。


化け猫の狙いは、クオンとエクス。


だが、2人だけに任せず、京太達も動き出す。




しかし、唸りを上げ、突如、サイクロプス達が動き出した。


壁を崩しながら、前に進み出る2体のサイクロプス。


ゆっくりと大きな目を開く。


「こっちは、任せて!」


ラムが言葉と同時に魔法を放つ。


『ブランチアーム』


『神力』を込めた枝が、サイクロプスに襲い掛かる。


両腕に絡みつき、動きを止めると

無防備になった1つしかない目に、突き刺さった。


「グワァァァァァ!」



叫び声と共に、サイクロプスは轟音を響かせ、地面に倒れ込む。


ラムの攻撃は続く。


痛みから、悶えているサイクロプスに、

『神力』の篭った枝枝が、容赦なく、突き刺さり、

花々を飾るフラワーマットのような状態になる。


それでも、必死に抵抗をみせるサイクロプスだったが、

時と共に、その力も弱くなっていく。


すると、サイクロプスに、突き刺さっている枝枝は、

魔力、血液、生命力の全てを養分に変え、

芽吹き、花を咲かせた。



木々の養分となったサイクロプスは、土へと還った。


戦っていたサイクロプスの姿は、もうない。


自身の放った魔法の威力に、驚きを隠せないラム。


豊穣を司る大地の神ハピ。


それは、恵みを与える反面、大地に宿す、全てのものを

無へと帰す力も持っている。


農作物など、恵みを与えるのもハピ。


飢饉などで、大地の作物を無に帰すのもハピ。



全ては、大地に力を与える為。


人間の利益など、関係ない。


万物の生命の神こそが、ハピなのだ。


その事実を改めて、実感したラムは、

この事実を、里に伝えるべきかを、真剣に考えた。





神の力を使い、勝利を手にしたラムとは違い、

もう一つのグループは、苦戦を強いられていた。



目を狙うが、両腕で隠すサイクロプス。


その態勢のまま、突撃を敢行してくる。


「ウガァ!」


「散開!」


サイクロプスの経路から、京太達は離れた。


しかし、前が見えていないサイクロプスは、そのまま突撃。


大木にぶつかり、止まる。



「ウ、ウガァァァ!!」



怒ったように振り返るサイクロプスは、

防御を緩める。


その瞬間を、京太達は、見逃さない。



――今だ!・・・・・・



ソニアとサリーが、腕を切り落としにかかる。


しかし、かすり傷が出来た程度で、

ダメージを与えたとは、言い難い。


「えっ!?」



ソニアの剣は、魔剣。


その力には、自信があった。


しかし、目の前のサイクロプスには、ダメージすら与えられない。


サリーの攻撃も、同じ結果。


「嘘でしょ・・・・・なんで・・・・・」



小さな傷しか、つける事が出来ない状況では、

ソニア達に、成す統べは無い。


困惑しているソニア達の状況を見て、サイクロプスは、

自分に傷をつけれない事を理解した。


その為、笑顔を見せる。


「ウガァ」


笑みを見せているサイクロプスは、

攻撃に転じる為に、こん棒を振りかざす。



しかし、サイクロプスを倒したラムが、遠方から矢を射る。


気が付いたサイクロプスは、慌ててこん棒で目を隠したが

放たれた矢は、こん棒を貫き、目も貫いた。


これには、ラムも驚いた。


――これも、神の力なの・・・・・・


驚きながらも、2体目を倒したラムをそのままにして、

クオンとエクスの援護に向かった京太達だったが




既に、戦闘は終わっており、

アイテムボックスに、化け猫の死体を放り込むクオンとエクスの姿があった。




「あ、終ったんだね・・・・・」



『神の力』を見せつけたラムとクオン。


『眷属』としての力を持っても、役に立たなかったソニアとサリー。



この戦いが、ソニアの気持ちを、『神化』へとかたむかせる。


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