第222話悪魔城 思惑


京太達は、ソニア達を待ち、

この場所で、待機している。


この場所に到着してから、悪魔達の襲撃が無いことは、

有難い事ではあるが、

この静けさは、何か、企みがあるような感じがして、不安に駆られてしまう。



京太のその考えは、あながち間違っていない。



悪魔城、最上階にある『魔王の間』の玉座に座るベルゼブは、

『遠見の魔法』が使える者達を、京太の見張りに付けており、

離れた所から、京太を監視しているのだ。


現在、魔王の間にて、監視者の1人から報告を受けているベルゼブ。


その報告の中には、現在の居場所も含まれていた。



「ほぅ・・・・・まだそんな所なのか・・・・・」


「はい、どうやら仲間と合流する為のようです」


「そうか・・・・・それで、奴の正体は、わかったか?」



報告に来た悪魔は、意見を求められた。



「いえ・・・・・正確には・・・申し訳ございません。


 ですが、【イシス】の可能性が高いかと・・・・・」


「イシスか・・・・・」


「はい、イシスと同じ魔法を使っている所を、この目で見ました」


「あの女1人なら、さほど問題には、ならぬが・・・・・・」



ベルゼブの狙いは、今後の対決において、必要となる

京太に憑いている神を探ること。


京太に憑いている神は、報告を聞くに、十中八九、イシスで間違いないだろう。


だが、ベルゼブは、その報告を鵜吞みにはしない。


ベルゼブは、狡猾で、猜疑心さいぎしんが強い。


その為、次の一手を打つ。


「【エウリノーム】」


「はっ」


魔王の間に、姿を現したベルゼブの配下、

『フライナイツ』の指揮官エウリノーム。



「奴らの行動は、把握しているな」


「勿論でございます」


「では、奴らを襲え。


 あの者達を使って、あの男の力を、今一度確認するのだ。


 報告を楽しみにしているぞ」


「必ずや、ご期待に応えましょう」


エウリノームは、そう答えると魔王の間から、姿を消す。



エウリノームが消えた魔王の間。


静けさの中、『コツコツ』響く足音。


1人の女性が姿を見せる。



「ベルゼブ様」


「ニコールか・・・・・」


ニコールは、ベルゼブに寄り添う。


「ベルゼブ様、私も配下を連れて、遊んで来ても、いいかしら?」



ベルゼブは、笑みを零す。



「好きにしろ、但し、死ぬ事は許さん」



「フフフ・・・・・感謝致しますわ」



ニコールは、ベルゼブから離れ、魔王の間を後にした。




一方、ソニア達は、闘技場に残っていた変異した竜魔人達を殲滅した後

京太達と合流していた。


ウルド ツールとラムザニアから、報告を受ける京太。


「そんな竜魔人が、いたんだ」


「ああ、・・・・・だが、これで奴らが増えることは無い」


いつまで続くかわからない戦いに、1つの区切りがついた。



「ありがとう、これで悪魔に、専念できるよ」


「だが、油断は禁物だ」


「わかっている」




話を終えた京太は、1人になって考える。


――なんか、皆を巻き込んでしまったな・・・・・


申し訳無さと同時に、改めて、感謝する京太。


――この戦いが終わったら・・・・・・


頭に過った言葉を、慌てて消去する。




「ああ、駄目だ。


 これって死亡フラグじゃん・・・・・」




1人で、『ブツブツ』言いながら、

コミカルに暴れていた京太だったが、

我に返ると、途端に恥ずかしくなった。




「今の誰にも見られていないよね・・・・・・」



京太の呟きに、返事が無い。


『良かったぁ・・・・・』と、声を上げ、安堵した瞬間。


「なにが良かったの?」


「えっ!?」



そこには、遅れて合流したクオンの姿があった。


当然、エクスの姿もある。



「お兄ちゃん、それで何が良かったの?」


「いや・・・・・」


顔が赤くなる・・・・・。



「お姉ちゃん、主は、『妄想』をしていただけです。


 今は、『賢者タイム』だと思います」



「賢者タイム?」



エクスの暴走発言で、誤解をされる京太。


「何もしていないから、それに賢者タイムでもないから!」


「ですが、顔が赤いという事は、恥ずかしい事をしていた筈です」



勝手に決めつけ、断言するエクス。



「確かに、恥ずかしいと、顔が赤くなることもあるけど、

 それが、賢者タイムとは、限らないから!」



「そうですか・・・・・」


エクスは、つまらなそうな顔をする。


クオンは、賢者タイムについて、考えていた。


――賢者タイムって、なんだろう・・・・・




考え込むクオンに、エクスが声をかける。


「お姉ちゃん、後で教えるので、皆の所に戻りましょう」


「わかった!」


「・・・・・・」


2人は、そそくさと歩き始める。


その後ろを、京太も付いて歩いた。




シールドを張った休憩場所に戻り、皆と合流した京太達。


仲間を集め、今後を話し合おうとした時、

見た事のある集団が姿を現した。




「あれって、ミノタウロスだよね・・・・・」


「そうですけど、・・・・・何か様子がおかしいですね」


ソニアの問いに答えたのはサリー。


「ほう・・・・・あれは・・・・・」


ウルド ツールは、その様子の違いに気が付いた。


「なにやら、『魔人化』されているようですね」


その答えに、京太は険しい表情を見せる。



「それって、変異種みたいに強くなって入るという事かな?」


「ええ、その通りですので、

 油断は禁物です」



ウルド ツールの言葉に頷き、

京太は、シールドを解除した。



段々と距離を詰めるミノタウロスの集団。


その中に、1人の悪魔を発見する。


その悪魔は、小柄で、黒と白の斑模様のドレスを纏い

ミノタウロスの肩に乗っていた。


悪魔は、ミノタウロスの肩に乗ったまま

前に進み出て、京太達と向き合う。



「フフ・・・私は、フライナイツの【フォカロ】よ。


 自己紹介も済ませた事だし、もういいわよね」



勝手に話し、勝手に戦闘を始めようとするフォカロに対し、

アイシャが文句を言う。


「なんじゃ、あのダッサイ服は・・・・・」


「確かに、センスを疑うのぅ・・・・・」



アイシャに続き、ラゴも斑模様のショートドレスに、文句をつけた。


「き、貴様・・・・・」


「まぁ、お主の飼っている牛とお揃いなのは、面白いがの・・・・・」


アイシャは、挑発を繰り返す。


「貴様は、人のドレスに文句を言っているが、

 貴様のドレスは、何なんだ!」


アイシャは、ヒラリと舞う。


「可愛いじゃろ、わらわは色白じゃからのぅ、

 これを脱がす時、京太は、いつも喜んでおるぞ」


意外なところで、被害を受ける京太。


同時に、仲間から、得も言われぬ冷たい視線が集まっている。


――もう止めて・・・・・・お願い・・・・・


1人、精神的ダメージを多大に受けた京太の肩を、ウルド ツールが叩く。


「苦労しているな・・・・・」


京太は、黙って頷いた。


しかし・・・・・


「今度、私もラムザニアで、試して見るよ」


追い打ちをかけるように、ふざけた発言をした。



「試さなくていいから!

 それより・・・・・・」



ウルド ツールは、笑みを浮かべる。


「ハハハ・・・・・もう大丈夫のようだな」



「ああ・・・・・」



2人は、威圧を込めた視線を、フォカロへと向けた。


その視線に、飲み込まれそうになるフォカロだったが、

何かを悟ったように、笑みを漏らす。



「ふ~ん・・・・・

 私が呼ばれた理由が、よ~く分かったわ。


 じゃぁ、相手をしてあげる」



フォカロの合図で、一斉に襲い掛かるミノタウロス。


京太達も、対抗する構えを見せる。


「貴方達の力、私に見せて頂戴」


フォカロが眺める中、京太達と、

魔人化したミノタウロスの集団との戦闘が始まった。

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