第220話悪魔城 変異種

ウルド ツールは、ラムザニアとの合流を目指す。


「この道で、間違いは無さそうですね・・・・・」


ウルドツールは、闘技場の壁に向けて走っている。


そして、壁と衝突するかと思われた瞬間、ウルドツールの姿が消えた。


壁は、幻影のようなもので、その先には、隠し通路があったのだ。


迷いなく、飛び込んだ先は暗闇で、辺りに光はない。


その中を、ウルドツールは進む。


そして、暫く進んだ先に、森に出た。


思念波を辿り、森の中を進んでいくと、洞窟を発見した。


ウルドツールには、わかる。


――ラムザニアは、この先ですか・・・・・・


洞窟の入り口には、獣魔人達の姿がある。



暫く様子を見るつもりだったウルドツールだったが、

思念波にて、ラムザニアから連絡が入った。


――忙しいのなら、こちらは、我が片付けよう・・・・・


ウルドツールは、ラムザニアからの連絡を受け、

早急に合流する事にした。


――急がねば・・・・・


ウルド ツールは、柄にもなく、心配をしている。


ラムザニアとて、シーサーペントの女王。


力も知能もあり、強さも認めている。


しかし、相手は悪魔の一派。


何があるか分からない。


一瞬の隙が、命取りになるのだ。



その為、洞窟の警備をしている獣魔人に、

時間を割くのは、御免被りたい。



ウルド ツールは、飛び出し、一気に間合いを詰めると、

そのまま切り伏せる。


獣魔人の1人、猫魔人の首を刎ね飛ばしたが

その攻撃で、狼魔人は、ウルドツールの存在に気付く。



「侵入者!侵入者だ!」



狼魔人の声は、洞窟の中にも届き、

あっという間に、獣魔人達が集まった。



「言葉は、喋れるようですね・・・・・」



獣魔人達は、赤い目を血走らせている。


そして、合図も無く、ウルド ツールに襲い掛かる。


連携など無く、ただ、力をぶつけるだけの攻撃。


連携も何もない。


ウルド ツールからしてみれば、問題の無い攻撃の筈だった。


だが、紛れていた。


ウルド ツールを倒す為に、潜む3体の鎌鼬の魔人。


風魔法の使い手。


鎌鼬の魔人は、その他の獣魔人に紛れ、密かに、様子を窺っている。



その事に、気が付いていないウルド ツールは、襲いかかる魔人達を倒している。


そんな中、他の魔人達を払い除け、ウルドツールの前で、立ち上がる熊魔人。


熊魔人は、立ち上がり、ウルドツールに向かって

前足を振り下ろした。


「ガァァァァァ!」


ウルド ツールは、その攻撃を躱す。


だが、攻撃は、これで終わりではなかった。


熊魔人の背中に隠れていた鎌鼬の魔人は、

鎌のような両手に、風の魔法を纏わせ、ウルドツールに攻撃を仕掛けた。


「このような手を、隠していたのですか・・・」


近距離からの攻撃だったが、

ウルド ツールは、ギリギリで躱す。


しかし、躱せたのは、最初の攻撃だけで、

続いて放たれた、2体目、3体目の攻撃は、躱す事が出来なかった。



「グッ、グハァ!」



体を切り裂かれ、血を流しながら、吹き飛ばされるウルド ツール。



この状況を、チャンスとみて、一斉に襲い掛かる獣魔人達だが

鎌鼬の魔人達は、顔を歪める。


獲物を横取りされえると思った鎌鼬の魔人達は、声を上げる。


「どけっ、それは、俺たちの獲物だ!


俺達が仕留める!」


ウルドツールに、向かって走る獣魔人達に、その声は届かない。


皆、褒賞が欲しいのだ。


褒賞とは、恩恵であり、

それを受け取れば、全ての力が、上昇する。


弱肉強食の世界では、これ程、有難い褒賞はない。


その為、誰もが必死になるのだ。



横取りをしようとする獣魔人達に

怒りと、苛立ちを覚えた鎌鼬の魔人は、行動に出る。


「もういい!


 まとめて始末してやる!」




3体の鎌鼬の魔人は、『無数の刃』を空に浮かべた。


ここからでは、ウルド ツールの姿は見えない。


だが、鎌鼬の魔人には、関係ない。


狙いは、獣魔人達。


「俺たちの邪魔をした報い、その体で味わえ!!!」


放たれた無数の刃は、逃げ場が無い程の数。


それが、獣魔人達に、襲い掛かったのだ。


次々に倒れる獣魔人達。


1体、2体と倒れて行くと、

段々と、ウルドツールの姿が見えてきた。



しかし、よく見ると、ウルド ツールは、笑みを零している。


「ククク・・・・・この程度で、勝ったとでも思ったのでしょうか・・・・・・」


驚いている鎌鼬の魔人に、話しかけるウルドツールは、

ゆっくりと、体を起こす。


「おかげで、手間が省けました・・・今度は、こちらの番です」


そう告げたウルドツールの体には、傷1つ無かった。


「お、おまえ・・・・・!

 こ、今度こそ、貴様を屠る!」



再び、3体の鎌鼬の魔人が、攻撃を仕掛けようとしたが、

ウルドツールの姿が、見当たらない。


ただ、何時の間にか、辺りに霧がかかっており

視界を悪くしていた。


「畜生、何処に行った!?」



薄暗い中、必死にウルドツールを探す鎌鼬の魔人。


だが、『霧』と化したウルド ツールが、見つかることは無い。


3体の鎌鼬の魔人が、バラバラに探索を始めると

他の獣魔人達と共に、1体、また1体と屠られていく。


「畜生っ!


 何処に行きやがった・・・・・」



鎌鼬の魔人達は、なりふり構わず剣を振るうが、空振りを繰り返すだけ。


そして、最後の1体の心臓に、剣が突き刺さる。



「・・・・・クソッ」



ウルド ツールが、姿を見せる。



「中々でしたよ・・・・・」



「きさ・・・・・」



言葉を発する事も出来ず、倒れた鎌鼬の魔人。



獣魔人が、全滅したのを確認した後、

ウルド ツールは、洞窟の中へと向かった。



洞窟の中は、蜘蛛の糸のようなものが、

周囲に張り巡らされている。


それを、掻き分けながら、ウルド ツールは進む。


掻き分けながら、進んで行くと、


やがて、地面に粘膜の様な物が広がっていた。


「これは、何なのでしょう・・・・・・」


警戒しながら、進んで行くと、

部屋一面に、蜘蛛の巣が張り巡らされている場所に出た。



「・・・・・」



無言で、その部屋を見ていると、

突然、トントンと肩を叩かれる。


思わず、振り返ると、そこにはラムザニアがいた。



「ラムザ・・・・・・」


シィーーーと指でジェスチャーされ、ウルド ツールは黙る。


合流したラムザニアは、小声で話す。


「静かに、ついて来い・・・・・」



頷いて、ついて歩くウルド ツール。


ラムザニアは、粘膜の広がった場所を通り、

蜘蛛の糸のような物を掻き分ける。


そして、一際大きな蜘蛛の巣のような物を払い避けると、

その先には、幾つもの部屋があり、

その地面に、足の踏み場もないほどの、何かが立っていた。



「ほう、これは・・・・・・」



感心するように呟くウルド ツール。



「これは、竜魔人の卵。


 よく見ていて」



ラムザニアの言葉に従い、観察していると、卵が割れ、竜魔人が現れる。


しかし、その姿は、赤子でも子供でもなく、成人した竜魔人だった。


孵化した竜魔人は、そのまま仲間の元に向かって歩く。



「これでは、数が減らない訳ですね」



「そうだ、それに・・・・・」



ラムザニアの視線は、奥の部屋に向いていた。


ウルド ツールも視線を向ける。



すると、壁だと思っていた物が、ゆっくりと動く。



「あれは、なんですか?」



「来るが良い」



ウルド ツールの質問に答える為、場所を移動する。


移動した先で、ウルド ツールが目にしたのは、

異常に膨らんだ腹を持つ、超大型の竜魔人だった。



この竜魔人が、次々に卵を産んでいたのだ。



「こんな化け物が、いたとは・・・・・」




ウルドツールが、その竜魔人を観察していると、

その奥に、壊れた生贄の祭壇があった。



「あれで、呼び出したのか・・・・・」



生贄の祭壇で、造り出した変異種の竜魔人の母。


どれ程の攻撃力を持っているのか、わからない。



「本当に厄介ですね」


「ああ、だが、倒すしかないだろう」



2人が、こうして話をしている間にも、

卵が産み落とされ、孵化をしている。



「では、行くぞ」


ラムザニアの合図で、飛びだす2人。


竜魔人の母は、気にも留めず、卵を産み続けている。


「先に仕掛けるぞ」


ラムザニアは、『ブリザード』を放ち、地面の卵を全て凍らせた。


急激な寒さを纏う、ラムザニアの攻撃に、竜魔人の母は大きく体を揺らす。


「ギャァギャァギャァ!」


不気味な鳴き声は、怒っているように感じる。


ウルドツールは、この隙に接近し、

卵を産みだしていた生殖器を切り落とした。


「ウギャァァァァァッ!!!」


先程以上の叫び声を上げ、ウルドツールに向かって来たが

動きが遅く、容易に躱すことが出来た。



威嚇する竜魔人の母。


だが、他に攻撃の手段が無いのか、

踏み潰しにかかるか、咬みつこうとするだけだった。



「フンッ!

 この程度か・・・・・」




ラムザニアは、竜魔人の母の首を切り落とす為に、飛び上がる。


だが、その瞬間、竜魔人の母の行動に変化が起きた。


ウルド ツールもその事に気付く。


「ラムザニア!」


慌てて声をかけるが、間に合わなかった。


竜魔人の母の首が、180度回転し、ラムザニアを正面に捉えると、

アシッドブレスを放つ。


「ガァァァァァ!」


思いもよらぬ攻撃で、全身に酸を浴びてしまったラムザニア。


上手く着地することも出来ず、地面を転がる。


ウルド ツールは、ラムザニアを急いで抱き起し、

洞窟から脱出をする為に、竜魔人の母への攻撃を諦めて

来た道を引き返す。


全身が、焼け爛れているラムザニア。


息が荒く、危険な状態である事は、見て取れる。



――このままでは、ラムザニアが危ない・・・・・

  早く京太殿の所へ・・・・・


だが、急ぐウルド ツールの邪魔をするかのように

洞窟の出口には、多くの竜魔人達が集まっていた。



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