第219話悪魔城 門の死守と援軍

京太は、アロケルと向き合っていた。


ただ、アロケルは息切れを起こし、額から汗を流しているが、

京太は、呼吸すら乱れていなかった。



「実力の違いは、理解出来た筈だよ」


「フーフーフー・・・・・まだだ・・・・・」



再び、槍を手に持ち、襲いかかるアロケル。


しかし、京太は、その槍をも破壊する。


それと同時に、アロケルに一撃を加えた。



「グハァァァァァ!!!」



地面を転がるアロケル。



それを見ていたベルゼブは、アロケルでは、勝てない事を理解する。



――フフフ・・・・・ならば・・・・・



ベルゼブは、思念波を送り、アロケルに問う。


「貴様は、その程度のものだったのだな?


 ならば、最後に忠義を見せよ・・・・・」


この言葉は、『自爆』を意味していた。


己の生命力さえも魔力へと変換し、それを体の中で暴発させるのだ。



アロケルは、再び魔力で槍を生みだすと、京太へと駆け出す。



だが、前回とは違う。


途中で槍を放ち、京太を牽制した。


「ここが貴様の墓場だぁぁぁぁ!」


飛んできた槍を躱した京太に、アロケルが迫る。


そのアロケルの手には、もう1本の槍が握られていた。


「もらったぁぁぁぁぁ!」


アロケルの突き出した槍は、京太を捕らえるかと思われたが、

その攻撃も京太は躱す。


だが、その動きも、アロケルの計算の内、

躱された武器を手放すと、京太に抱き着いた。



「貴様も道連れだぁぁぁぁ!」



魔力暴発を起こす為に、体内に魔力を注ぎ込むアロケルだったが、

ふと、違和感を感じる。


確かに京太に抱き着いた。


そこまでは、理解している。


だが、今は、両腕を失い、地面に横たわっていた。



──私は、あの者に触れ、

  両腕で、しっかりと奴の体を、抑え込んだ・・・筈だ・・・



その先が、思い出せない。


だが、放った魔力は、

どんどん体内に溜まっていく。


そんな状況の中、既に、距離を取り、回避している京太の姿が

アロケルの目に映る。



「キサマァァァァ!!!」



京太に、両腕を斬り落とされ、身動きの取りづらい状態に

ありながらも、必死に立ち上がろうとしていた。


だが、残された時間が、それ程残っておらず

立ち上がると同時に、アロケルが爆発する。


距離を取っていた為、京太に被害はなく

アロケルの自爆攻撃は、空振りに終わった。


京太を倒すどころか、傷を負わせることも出来なかった事に

憤慨しているベルゼブは、ニコールを伴い、その場から去って行った。


貴賓席には、もう誰もいない。


急げば、追いかける事も可能だったかもしれないが

それより、仲間の事を優先して、この場に残ることを選んだ。




対戦を終えていた仲間達が、次々と京太に歩み寄る。


皆の無事を確認できた京太は、安堵の表情を浮かべるが

置いてきた仲間達の事が気がかりで、その表情は、直ぐに消え失せた。


しかし、京太が不安な顔をしていれば、他の仲間達も不安になり

戦いにも、影響するかもしれないので、

再び笑顔を作る。


「皆も無事でよかったよ」


闘技場の探索を終え、出口を発見した京太達は、

迷わず、その先へと進む。


出口を抜けた京太達。


その視界の先には、城が見える。


「あの城に、向かうしかないわね」


「確かに、そうなのだが・・・・・

 京太よ、このまま先にに進んで良いのか?」



アイシャの言いたい事は、わかっている。


未だ、後方で戦っている者達の事だろう。



このまま、あの城に入ってしまえば、合流は難しくなると思う。


京太は、暫く考えた後、仲間を待つ事にした。



「ここで、皆を待とう」


「うむ、わらわも賛成じゃ」



城に続く山道の前で、京太達は、休憩をとる。




その頃、京太達を、先に行かせたソニアとサリーは戦っていた。


「ほんっと、嫌になる程、多いわね」


相変わらず、文句を言いながら剣を振るうソニア。


「うふふ・・・・・ですが、私は、嬉しく思っております」


「えっ、マゾ?・・・・・」


「違いますっ!


 私は、スラムに住む、ホルン家のメイドでしたが、

 京太さんに助けられ、幸せに暮らす事が出来ました。


 ですから、今、京太さんのお力になれている事が嬉しいのです」



 サリーは、ふと、狐人族のノルンの事をを思い出す。


――あの子、元気にやっているかしら・・・・・


過去を思い返すサリーに、襲い掛かる竜魔人。


サリーは、一番近くまで迫っていた竜魔人の首を刎ねた。



「かかって来なさい!」



気合の入ったサリーの掛け声に、ソニアの顔が綻ぶ。



――サリーの言う通りだわ、

  私達、京太に出会ってから、随分変わったものね・・・・・



2人は門を背にして、ボロボロになりながらも戦っていた。



そんな中、ソニア達と同じフロアに到着したウルド ツールとラムザニア。



「ほう・・・・・ここは、竜魔人の巣といったところですか・・・・・」


「貴方、あそこ」


ラムザニアの指が差したところに、ソニアとサリーの姿が見える。



「どうやら、あの門を守っているようですね。


 フフフ・・・・・では、力を貸しましょう」




ウルド ツールは、怪しげな笑みを浮かべながら、眷属を解き放つ。




「行きなさい、でも、あの2人と、あちらの2人は傷付けないように・・・・・・」


ウルド ツールの命令に従い、駆け出す眷属達。



その中には、先程戦った、地竜達の姿もある。


「あらっ!」


「先程、手に入れた地竜を試すには

 丁度良い相手です」


シーサーペント達と眷属となった地竜達は、

背後から竜魔人に襲い掛かる。



ソニアとサリー、エクスとクオン。


この場に4人に加え、

新たに解き放たれた、3体のシーサーペントと10体の地竜が

竜魔人の軍勢に、襲い掛かる。


次々に屠られていく竜魔人。


だが、何故か、数が減らない。


それどころか、時間と共に、竜魔人達は、体制を整え始めた。




以前よりも、強さは感じられない竜魔人達だが

無限に現れ、数の暴力で対抗してくるので、堪ったものではない。



「キリがありませんね」



ウルド ツールは、辺りを見渡し、何かを探し始める。



「ウルドよ、どうしたのじゃ」



「ああ、このフロアの何処かに、

 この者達を生み出している『何か』がある筈なのだが・・・・・・」



「そうか、ならば、我に任せるが良い」



ラムザニアは、ウルド ツールから離れ、その『何か』を探し始めた。



「では、私は、戦力を増加しましょう」



ウルド ツールは、新たに『眷属召喚』をおこなった。


現れるボーンドラグーン。


ボーンドラグーン達は、戦場へと駆け出す。


「これで、時間は稼げるでしょう」


そう言いながら、眷属を見送るウルド ツールだったが、

『眷属召喚』の最後に、ヒョコっと現れた者達に驚いた。



「貴方達・・・・・まさか・・・・・

 確かに範囲内には、いましたが・・・・・」


ウルド ツールが驚くのには、理由がある。


眷属召喚の最後に出て来たのは、宝石にとじ込められていた精霊達。


精霊が対価も無く、召喚に従う事はあり得ない。


ましてや、ウルド ツールが行ったのは、

今迄に回収した、死体などを手足として従わせる『眷属召喚』。



確かに、結界を破壊し、敵を倒した後に、

ウルド ツールは、力を使い、全ての物を回収した。


その中に、例の宝石の欠片も含まれていたのは、承知している。


『回収された』。


それだけの理由で、精霊が従うとは、到底、考えられない。


しかし、ウルド ツールの目の前には、

宝石のかけらを、大切に抱えた4体の精霊の姿がある。


彼らが姿を見せたのには、それなりの理由があった。


その為、眷属召喚で、道が開いた事を利用して

こうして出て来たのだった。


精霊の言葉が、脳裏に響く。


『僕達も、力を貸すよ』


「本当に、宜しいのですね」


ウルド ツールの念押しに、赤い宝石を抱えた精霊は、笑顔で答える。


『僕達は、あの怨念炉の負の副作用で、

 この宝石から、離れられなくなったんだよ・・・・。


  もう元に戻ることも出来ないし・・・・・

  だから、一緒にいてもいいかな?・・・・・・』



この言葉を聞き、ウルド ツールは、理解した。



――この子達も、私と同じ『変異種』になってしまったのですね・・・・・


種族は違えど、ある意味、同種ではある。


ウルドツールは、彼らの願いを叶えることにした。


「そういう事なら、勿論構いませんよ。


 では、これから、宜しくお願いします」




ウルド ツールが、丁寧に挨拶をすると

精霊たちが、光を放った。


――うんっ!


  宜しく!



次々に『宜しく!』とウルド ツールに伝える精霊達。


赤、青、緑、白、4色の精霊は、ウルド ツールの周りを飛び回った後、

戦場に向けて飛び立った。



混戦になっている戦場に辿り着いた精霊達は、それぞれの属性魔法を放つ。



「フレアビーム」


「アイスビーム」


「アースビーム」


「ホーリービーム」



宝石を通して、放たれた4色のビームは、竜魔人達を一掃した。



「中々、頼もしいですね・・・・・」



ご満悦のウルド ツールに、思念波が届く。



「貴方、見つけたわよ・・・・・」



ラムザニアは、竜魔人達を生み出している『何か』を発見したようだ。

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