第218話悪魔城 闘技場
4人を残し、門を潜った京太達の正面は
明かりも無く、暗闇が広がっていた。
「何も見えないわ・・・・・」
ラム達には、全く見えていないようだが、
京太とラゴ、アイシャには見えている。
暗闇の中に潜む者達の姿。
そして、この場所の全貌も・・・・・
「側から離れないで」
京太の言葉に、ラム達は、警戒を強めた。
その時、部屋の壁に沿って明かりが灯り始めた。
次々に明かりが灯り、この場所の全貌が明らかになる。
目の前の道を、一歩でも進めば、そこは闘技場の中だった。
そして、その闘技場の貴賓席と思える場所に座っている
一組の男女。
その後ろに、護衛らしき4人の悪魔が控えていた。
また、京太達と同じ闘技場内には、
50人の名も無き悪魔達が待機している。
男女の後ろに控えていた護衛の1人。
ライオンの頭を持つ悪魔【アロケル】が前に進み出る。
「これより、昇格の儀式を行う。
あの者達を見事倒した者に、名と名誉を与えよう」
その言葉に反応するように、雄叫びを上げる悪魔達。
次々に、目を赤く光らせ、戦闘態勢へと移行する。
「始め!」
アロケルの合図で、悪魔達は、一斉に動き出した。
「ギャギャッ!」
「ガァァァァァ!!」
雄叫びを上げながら、京太達に迫る。
「皆、行くよ」
聖剣デュランダルは、神気を流され、光を放つ。
京太は、先陣を切り、悪魔達に向かって走る。
その後に、アイシャとラゴが続いた。
そして、その場に残ったマチルダは、ラムとタッグを組み
先手とばかりに、魔法を放つ。
「ホーリーアロー」
闘技場の上空に現れる無数の光の矢。
その矢が、一斉に悪魔達に降り注いだ。
光りの矢に貫かれる悪魔達。
しかし、竜魔人と違い、一撃で消滅した悪魔は、数えるほどしかいない。
だが、十分なダメージは与えた。
マチルダの魔法のおかげで、
悪魔達のもとに辿り着いた京太は、
デュランダルを一振りし、衝撃波を放つ。
切り裂かれる悪魔達。
それでも、地上、空からと、攻撃を仕掛ける悪魔達。
しかし、名も無き悪魔達では、
京太、ラゴ、アイシャの相手にならなかった。
椅子に座り観戦しているベルゼブ。
「やはり、無理がありましたか・・・・・流石ですね・・・・・」
その言葉を聞き、ベルゼブの横に座っている女性【ニコール】が、
笑みを浮かべる。
「嬉しそうですね、ベルゼブ様」
「ああ、復活した甲斐があったよ」
50人の悪魔が消滅した闘技場を見つめるベルゼブは、
新たな命令を下す。
「行け・・・・・」
「はっ!」
ベルゼブの後ろに控えていた4人の悪魔は、
闘技場内へと飛び降りた。
そして、京太の正面に立つ。
アロケルは、告げる。
「我ら、ベルゼブ様の親衛隊。
ベルゼブ様の命により、貴様らの相手をしよう」
アロケルが槍を構えた瞬間、再び、光の矢が降り注ぐ。
しかし、4人の悪魔に、光の矢が、当たることは無かった。
「こんな子供騙しに、誰が当たるというのだ・・・・・」
そう告げたアロケルの手には、光の矢が握られていた。
その矢を、軽々と粉砕するアロケル。
本来、悪魔にとって光属性のものは、猛毒でしかない。
だが、目の前のアロケルは、それに触れ、軽々と粉砕したのだ。
それが、どれほど異常な事なのかを、京太を始め、ラゴもアイシャも理解している。
だからこそ、驚きが隠せなかった。
驚きの表情を見せた京太達に、満更でもない様子のアロケルは、
仲間の悪魔に告げる。
「殺せぇぇぇぇぇ!」
叫ぶアロケル。
動き出す3人の悪魔。
その悪魔に対抗するのは、ラゴとアイシャ。
先に戦闘を始めたのは、ラゴだった。
「貴様は、この私【アンドラス】が相手だ!」
アンドラスの武器は、剣。
血に塗られたような真っ赤な剣だった。
「この剣は、過去に何人もの人族を屠り、血を啜り続けた剣だ。
貴様の血も、この剣が啜ってくれようぞ」
仰々しく語るアンドラスに向けて、ラゴは溜息を吐く。
「御託は、要らぬ。
かかって来い、わらわが遊んでやろう」
「小娘がぁぁぁぁぁ!」
正面から振り下ろされた剣は、
素早く、一撃で体を二つに割る程の威力を持っていた。
ラゴは、そのひと振りを、剣を滑らせて受け流す。
そのままの勢いで、地に突き刺さった剣は、闘技場の地面を割った。
「ほぅ、その力・・・・・生贄にした体が良かったのか、
それとも、媒体に馴染んで、培ったものなのか・・・・・
どちらにしても、代償は同じじゃのぅ」
ラゴは、一気に距離を詰め、剣を持っていた腕を切り落とす。
「グワァァァァァ!」
武器と片腕を失くしたアンドラスは、思わず、後退する。
「き・・・貴様・・・・・」
「代償として、この地上の生き物に近づいてしまうという事は、
それだけ不利な点も多くなるのじゃ」
悪魔は、精神生命体。
本来、出血など、あり得ない。
しかし、アンドラスの傷口からは、出血が続いている。
「ふぁ・・・『ファイヤーボール』」
左の掌に浮かべたファイヤーボールを、右腕の傷口に当てるアンドラス。
「グァァァァァ!・・・・・グヌヌ・・・・・」
傷口を焼く事で、出血を止めようとしているのだ。
「面白い悪魔じゃ、だが・・・・・」
ラゴが、黙って見ている筈がない。
アンドラスの足元は、既に凍り付いていた。
「ウグッ!」
身動きの取れなくなったアンドラスは、
ファイヤーボールを放ち、足元の氷を溶かし始めたが
氷は、一向に溶ける気配を見せない。
それどころか、アンドラスの足元から、氷は体を上り始め、
徐々に侵食し、最後には、全てを凍らせた。
「氷の彫刻の出来上がりだが・・・・
わらわの趣味には、あわぬ」
ラゴは近づき、氷の彫像を砕く。
「さて・・・・・」
戦い終えたラゴは、視線をアイシャに向けた。
アイシャの戦闘は、既に勝敗が決まっていた。
無傷のアイシャは、悪魔に向かって問う。
「降参するのか?」
「グ・・・・・貴様・・・・・」
武器を失くし、体中から血を流す悪魔は、立っているのがやっとの状態。
「そろそろ、終るかのぅ・・・・・」
アイシャが、そう告げると、ライカンスロープ達が一斉に切り掛かる。
首、両腕を切り落とされ、悪魔は倒れた。
「うむ、見事じゃ!」
ライカンスロープ達は、アイシャのもとに集まり、膝をついた。
「「はっ、有難う御座います!」」
そこに、やって来たラゴ。
「貴様、これはどういう事じゃ!」
「ん?姉上か。
見ればわかるじゃろ、わらわの『眷属召喚』で、この者達を呼び寄せたのじゃ。
この者達も、『腕が鈍る』とか言っておったのでのぅ」
4人のライカンスロープ、ナサド、ノーグ、ネラ、ヒムは、
戦いに参加出来た事が嬉しくて、仲間同士で喜んでいる。
その光景を見ると、ラゴは、何も言えなくなった。
「お主は、どうする?
わらわは、京太の所に行くぞ」
「わらわも同行するぞ」
アイシャとラゴは、4人のライカンスロープと共に、歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます