第215話悪魔城

ベルゼブが去ると、生き残っていたデスバードも後を追った。


そのおかげで、この場所に、敵の姿は無くなっている。



京太達は、この時間を利用して、休憩に入った。



「お兄ちゃん。


 ここって転移の鏡は、使えないの?」


クオンの言葉に従い、転移の鏡を取り出して、魔力を流してみた。




「あっ!


 ・・・・・・使える」



クオンは、喜びながら京太に聞く。



「何処に繋げたの?」


「屋敷」



「お兄ちゃん、私、お風呂に入りたい」



「うん、行っておいで」



クオンは、エクスの手を引き、転移の鏡を潜った。



「なら、私も・・・・・」



クオン達に続き、皆が転移の鏡を潜り、屋敷へと戻って行く。



――これで、皆も少しは、休憩出来そうだ・・・・・・



そう思いながら、京太は、転移の鏡の横に腰を下ろした。






初めて京太の屋敷に入った者達。


ウルド ツール、ラムザニア、ラムール。


待機していたメイドに従い、風呂場に案内される。




「人族の屋敷なんて、初めて来たぜ」



キョロキョロするラムール。



「恥ずかしいから、そのような態度を、見せるでない」



「でもよ姉さん。


 こんな経験、中々出来ないぜ」




その後も、キョロキョロする事を止めないラムールを引き連れ

メイドは、風呂場に向かって進む。



「こちらをご利用くださいませ」



3人は、男女に分かれて、風呂に入った。




その後、皆は食堂にて食事を摂り、休憩をしている。




「姉さん、人族の飯も、中々美味いな」



「わかっておる。


 だから、ウルドに頼むのじゃ」



「・・・・・」



ウルドは先手を打ち、京太に食料の提供を頼んでいたので、

黙っている。



その後、食堂でプリンを出した事で、ひと悶着あったが、

偶然居合わせたエヴィータ王妃が間に入り、

今後の提供を約束した事で、騒ぎは収まった。



転移の鏡を使い、再びバーレンに戻って来た仲間達。



ウルド ツールは、京太の横に腰を下ろす。



「・・・・・京太殿」



「ん?」



「屋敷で騒ぎを起こした。


 すまない・・・・・」



――!!!



京太は立ち上がり、転移の鏡を潜る。


屋敷に戻った京太は、スミスとエヴィータ王妃から

『プリン争奪戦』の話を聞き、溜息を吐いた。




――そんな事か・・・・・




バーレンに戻って来た京太は、ウルド ツールに

改めて、プリンも用意することを伝えた。



ただ、その話を、小耳に挟んだラムールが、

喜び、騒ぎ過ぎた為に、ラムザニアに、殴られて

吹き飛ばされていた。




休憩を終えた京太達が、山頂を目指して歩き始めた時、

再び、地が唸り始めた。


唸り声に似た響きの中、目指した山頂に、何かが現れる。


土の中から、ゆっくりと現れる建物。


地の揺れと共に、徐々に、姿を見せる。


そして、振動が収まると、

山頂には、何とも言えない雰囲気を醸し出している城が、現れていた。



「悪魔城が、なぜここに・・・・・」



京太は、神の記憶の中にあった城が、目の前に出現したことで確信する。



──この世界を、新たな悪魔達の住処にするつもりなんだ・・・・・

  そんなの、許さない!・・・・・


京太は、仲間達と共に、山頂の悪魔城を目指して進む。



山には、人が通れるような道は、見当たらない。


仕方なく、斜面を登る京太達だったが、

その間、敵が襲って来ることも無く、姿も見えない。



しかし、山の中腹に差し掛かった時、木が切り倒され、

道らしきものが作られていた。


罠かも知れないが、覚悟を決めた京太達は、その道を進む。


暫く進むと、巨大な門が現れた。


「なにこれ・・・・・」


門に近づくが、何も起きない。



京太が、門に触れてみる。


すると、京太達を迎い入れるように、門が開いた。




――罠・・・・・だろうな・・・・・


  でも・・・・・



「先に進もう」



意を決して門の中に入る京太達。


中は、広い洞窟で、その先は、見えない。



全員が入ると、突然門が閉まり、

明かりが灯る。




「待っていましたよ。


 さぁ、ゲームを楽しみましょう」



何処からともなく聞こえて来た声に

京太達は、警戒を強めた。



静かな洞窟の中に突如、響く竜の嘶き。


姿を現したのは、悪魔に魅入られた5体の地竜。



通常の地竜より大きく、肌の色も違い、禍々しさを醸し出している。


そして、その地竜の後ろには、悪魔が控えていた。



「先陣を任せて下さったベルゼブ様に、感謝を・・・・・

 我が名は【パズ】、貴様らには、恐怖と絶望を味わって頂こう」




パズは、京太達に地竜をけしかける。



紫の息を吐きながら、襲い来る地竜。


散開し、攻撃を躱した京太達。


だが、ソニア、サリー、ラムが膝をつく。



「・・・・・これ、何?」



地竜の息は、麻痺性の毒を含んでいたのだ。


地竜は呼吸をする度に、その毒をまき散らしていた。



京太も、その事に気付き、助けに向かおうと思うが

ソニア達との間には、地竜が立ち塞がっている。



――これ、厄介だな・・・・・・



そう思っている間にも、新たな被害者がでた。


クオンも毒の影響を受けてしまい、

膝をついている。



「お姉ちゃん!」



エクスは、クオンを抱きかかえ、岩陰へ向かって走る。


2人を地竜が追いかけた為、ソニア達を助ける隙が出来た。


京太は、3人と合流すると、『シールド』で囲い、

『デポイズン』を唱え、毒を抜く。


3人の体調は、回復したが

毒を抜いても、直ぐには、動くことは出来ない為、

この場で待機してもらう。


「ここから出ないで」


京太は、そう言い残し、今度は、クオンの元へと走った。


だが、またしても、地竜が、京太の妨害をする。


尻尾を振り回して攻撃を仕掛けて来る地竜。


その攻撃を躱した京太は、叫ぶ。


「デュラ!」


「はぁ~い」


気の抜けるような返事をしたデュラは、聖剣デュランダルへと変化し

京太の手に収まる。


その光景に、嫉妬を覚えるラゴとは反対に、

エクスは、それどころではなかった。


クオンに迫る、地竜の攻撃を防ぐことに

力を注いでいるのだ。


防御に徹しているエクスのもとに

ラゴが、援軍として、加勢する。


「あ奴に、良い思いは、させぬ!」


嫉妬の矛先が、地竜へと向かい

むきになって、地竜に切り掛かる。


その様子に、驚く京太。


「・・・・・どうしたの?」


嫉妬の事など知らない京太が、見ていると

ラゴに対抗心を持つアイシャも、攻撃に加わった。


――姉には、負けぬ・・・・・


過剰戦力な攻撃を受けた地竜は、

物言わぬ肉塊と化した。




おかげで、クオンを救助し、完治させることが出来たのだが、

ある程度の耐性を持っているソニア達が、

いとも容易く、毒に侵されたことで、

変異した者達の力を知る事となり

今後の戦いにおいて、警戒を強める事となった。



京太が、クオンを助けてから数分後・・・・・・

残りの地竜は、細切れになっていた。


「こんな事が・・・・・」



驚くパズの後ろに現れる、ウルド ツール。



「どうやら、怒らせてはいけない方を、怒らせたようですね」



突然、後ろから、話しかけられたパズは、驚きを隠せない。



「貴様、いつの間に!」



慌てて距離を取る。


しかし、再び、背後から声をかけられた。



「愚かとしか、言いようがないのぅ・・・・・」



「なっ!」



この言葉に、怒りを覚え、振り返ろうとしたが、

不意に、ラムザニアの剣が、心臓に突き刺さり、パズの動きを止めた。



回復し、動けるようになったソニア達は、

ウルド ツールとラムザニアのもとに歩み寄る。


「お疲れ様」


京太の労いの言葉に、フッと息を吐くウルド ツール。


「この程度で、疲れる事はない」


京太は安堵し、辺りを見渡したその時に、気付いた。



――あれっ、マチルダ!・・・・・・



マチルダのもとに、京太は向かおうとするが

マチルダは、すぐそこにいた。



「マチルダは、平気だったの?」


「私は、光の魔法が使えますから、自分で癒していました」



「そうでした・・・・・」



眷属化を果たしたマチルダは、魔力の上昇と共に、多くの魔法を習得していた。


その事を思い出した京太。



――今回の戦い、僕は、不要だったかも・・・・・・



そう考えて、少し落ち込む京太だったが、それ以上に拗ねている者がいた。



デュラである。



『聖剣デュランダル』に変化したのに、殆ど何もしていないのだ。



そして今、3人は、多いに揉めていた。



「僕の邪魔しないでよぉ~」



「貴様ばかり、活躍するのは、ズルいのじゃ!」



「そうです、公平です」



「え~、でも、2人は、剣に成りたがらないって聞いたよ」



「「うっ・・・・・」」



デュラに、事実を言われ、思わず怯む2人。



それでも、色々と文句を言っていたが、

クオンが間に入り、2人を説得を試みる。



その結果・・・・・



「だ・か・ら、このままでいいでしょ!」



デュラがそう言い切り、人の姿が気に入っている2人は、

剣に戻りたくないので、スゴスゴと引き下がった。



その後、地竜と悪魔パズを倒した京太達は、先へと進む。


すると、またしても門が現れた。



「またですか・・・・・」



「今度は、何がいるんだろう・・・・・」



それぞれに愚痴をこぼす中、京太が門に手をかける。


前回と同じ様に、門は開いたのだが、

その先に見えたのは、謁見の間だった。



――え?・・・・・・


謁見の間に入ると、

玉座に腰をかけている悪魔の姿が目に映る。




「我が名は、【バアル】。


 さぁ、存分に楽しもうぞ」

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