第212話バーレン アビスに巣くう者を目指して
バーレンに上陸を果たした京太達。
結界の綻びがある港に背を向け、歩いている。
港の外は、砂漠になっており、草木も生えていない。
大気は紫の色をしており、上空を黒い霧が覆っている。
その中を黒い鳥達が飛んでいた。
「まるで、別世界じゃな・・・・・」
「地獄・・・・・みたい」
アイシャの言葉に、デュラが返した。
「先に、進もう」
京太達は、砂漠に足を踏み入れる。
砂漠を進むにつれ、砂埃が舞い、景色が失われた。
「これでは、前には、進めぬぞ!」
一歩先も見えぬ状態に陥った京太達。
「主、このままでは・・・・・」
「わかっているよ」
京太は、『シールド』を張る。
「これで、大丈夫」
砂埃にまみれる事は無くなったが、相変わらず、視界が悪い。
その為、京太は、もう一度魔法を使う。
――【大気の神、シュー】、力を・・・・・
京太の体の周りにオーラが現れる。
「エアーインパクト」
京太を中心にして、風を押し返す力が働く。
『ドンッ!』という鈍い音と同時に、砂埃が収まる。
「ほう・・・・・」
ウルド ツールは、感心していた。
その様子を見ていたラムザニアは、ウルド ツールに話しかける。
「ウルドは、あれ、出来る?」
「ハハハ・・・無理だ。
というよりも、奴以外には出来ない」
「どういう事?」
ウルド ツールは、ラムザニアに語る。
「似たような事が出来る者は、いるだろう。
しかし、砂漠のど真ん中で風を止めるなど、
普通の人間の出来る技ではない。
京太殿は、異質なのだ」
――本人の目の前で、異質とか言わないで欲しいのだけど・・・・・
京太は、そう思いながら、聞こえていない振りをして、先を目指した。
ラムザニアは、ウルド ツールの話を聞いて感心していた。
砂漠の風が止むと、遠方に街が見える。
「街だぁ!」
デュラは、砂漠を抜けられる喜びから、声を上げた。
しかし、その喜びに、ラゴが水を差す。
「この島に、ある街など、奴らの住処以外無かろう」
「げっ・・・・・」
嫌な顔をするデュラ。
京太達は、ゆっくり街に近づく。
「崩壊しているね」
街の壁は、老朽化で殆ど崩れかけていた。
そして、壁の間から見た街の中には、竜魔人達の姿がある。
「主様、どうするのじゃ?」
「決まっているよ」
そう言うと、京太は立ち上がる。
「えっ!?
主様・・・・・・」
ラゴの声が聞こえていないのか、京太は、1人で街の中に進む。
「貴様、何処から入った!?」
京太に気が付いた竜魔人達が、集まって来る。
その竜魔人の指示に従い、襲い来るガーゴイル。
しかし、京太が『神力』を込め、剣を振ると、
先程と同じように、その風圧で、ガーゴイルが消滅した。
「貴様・・・・・」
竜魔人達に対して、京太に遠慮は無い。
集まっていた竜魔人達に、攻撃を仕掛ける。
抵抗空しく、次々と倒される竜魔人達。
「なんだ、この人間は!」
竜魔人達が驚いている間に、
京太の仲間達も参戦する。
「僕も、戦うぞぉ~」
「わらわもじゃ!」
京太の仲間達も参戦し、次々に倒されてゆく竜魔人達。
その状況下、豪華な武具を装備した竜魔人が姿を見せる。
「我の街で、好き勝手に暴れてくれたものだな」
竜魔人は、京太の前に進み出た。
「我は、【ゴルマ】侯爵。
この地を預かり、この場で貴様を屠る者だ」
ゴルマが戦闘態勢に入る。
京太は『神力』を込めた剣を、構え
ゴルマに突進する。
「貴様の攻撃など、我が槍が受け止めてくれるわ!」
ゴルマも槍を構え、攻撃を防ぐべき行動に出た。
しかし、京太が振り下ろした剣は、槍が無かったかのように、
ゴルマを真っ二つに切り裂く。
「な、なんだと・・・・・」
一撃で、ゴルマ倒した京太だったが、持っていた剣が塵と化した。
――やっぱり、耐えられないか・・・・・
武器を失った京太に、竜魔人達が襲い掛かる。
「今だ!」
「殺せぇぇぇぇぇぇ!!」
「奴を逃がすなぁぁぁぁぁ!」
――困ったな・・・・・・
今の京太の力に、通常の武器では耐えられない。
その為、神の力に耐えられる剣が必要だった。
「主様!」
ラゴは、京太に向かって走り出すが
ラゴより先にデュラが辿り着く。
京太に抱き着くデュラ。
「京太様、僕が剣になるよ」
しかし、そこにラゴが追いつく。
「貴様は、主様の眷属では無い。
それなのに、主様の剣になるというのか?」
「眷属になるよ・・・・・
京太様、僕じゃ、駄目・・・かな?・・・・・」
デュラは、外の世界を見たくて脱走して、1人で旅をして来た。
しかし、彼女は『聖剣』。
旅をしている時も、『適合者』を見つける事は、忘れていない。
しかし、『適合者』など、簡単に見つかる筈も無く、
京太達と出会うまで、ずっと一人だったのだ。
しかし、今は、『適合者』以上の『使い手』が目の前にいる。
デュラは、『絶対に離れない』と心に決め、行動に移す。
デュラは、京太の返事を待たず、人化を解いた。
「貴様!」
ラゴの声が響く。
人化を解いた『聖剣デュランダル』は、京太の正面に浮いている。
「僕でいいんだね」
その質問を待っていたかのように、『聖剣デュランダル』は光を放った。
「京太様、これから宜しく!」
京太の手に握られ、神力を流し込まれる『聖剣デュランダル』。
「気持ちいぃ~!!!」
『聖剣デュランダル』は、京太を『主』に認めた事で、
神の持つべき剣に生まれ変わった。
「デュラ、行くよ」
「うんっ!」
『聖剣デュランダル』を手にした京太は、その力を余すことなく発揮し
ガーゴイルや竜魔人を消滅させた。
「流石、主です」
「わらわの京太は、最高じゃ」
ラゴとアイシャは、京太の活躍を喜んでいる。
――僕のおかげだよぉ~・・・・・・
しかし、デュラの呟きは無視された。
その後は、皆も戦闘に加わった結果、
この街の竜魔人は全滅した。
京太達は、次の街に向かう準備に入る。
そんな中、戦いに参加していたウルド ツールとラムザニアは、
未だに驚いたままだった。
「まさか・・・・・これ程とは・・・・・」
「これが、デュランダルの使い手か・・・・・」
ウルド ツールもラムザニアも聖剣デュランダルの名前は知っている。
しかし、行方もわからず、その力も噂でしか聞いた事が無かった。
だが、それが今、京太の手にあり、その戦いを見せられたのだ。
――あの時、私は、運が良かったのか・・・・・
ウルド ツールは、以前の戦いを思い出し、
目の前の現状と比べてしまう。
そして、命がある事を奇跡の様に思えた。
準備を終えた京太達は、街の調査をしたが
悪魔の形跡は無かった。
――あいつ等、何処に隠れた・・・・・・
京太の頭の中にあるのは、竜魔人ではなく、悪魔。
この地を滅ぼそうとする悪魔を、一刻も早く発見し、
殲滅する事だけを京太は考えている。
だが、手掛かりは、見つからない。
京太達は、この街を後にし、
街の外に残っていた僅かな道の跡を辿って、歩き出した。
暫く歩き、砂漠を抜けた所で、新たな街を発見する。
「ここも、崩壊してるね」
「・・・・・うん」
京太達は、静かに外壁に近づき、街の中を覗く。
街の中には、見た事がある物が建っていた。
――あれは、生贄の祭壇・・・・・・
この祭壇から、悪魔が復活した事が考えられた。
――こんな所にも・・・・・
京太が動く。
「主様!」
京太は、ラゴの呼びかけに答えず、生贄の祭壇に向かって走り出すと
突然、炎が襲い掛かる。
「京太!」
「主!」
「お兄ちゃん!」
炎は、京太に直撃した。
だが・・・・・
燃え盛る炎の中で佇む京太。
その光景に、茫然とする仲間達。
そこに、姿現す竜魔人とガーゴイル。
炎の中で、立ち尽くす京太を見て、竜魔人は、不服そうに呟く。
「ふむ・・・・・獲物は、1人か・・・・・」
睨み付けるアイシャ。
「貴様・・・・・殺す」
その横で、悲しそうな顔をするクオン。
「お兄ちゃん・・・・・」
炎の中の京太は、微動だにしない。
その間に、続々と集まる竜魔人とガーゴイル達。
「久し振りの獲物だ。
丁寧に持て成せ」
合図と共に、襲いかかる竜魔人達。
京太の仲間達も、黙って見ている筈がない。
襲い来る敵を薙ぎ倒し、京太のもとに向おうとするクオン。
「邪魔をしないで!」
クオンに行動に、エクスも続く。
敵の真っ只中に飛び込んだ2人は、
連携を駆使し、ガーゴイルと竜魔人を次々に倒す。
――主の所に、向かわなければ・・・・・
必死に道を開こうとするクオンとエクス。
その2人を助けるように、アイシャが魔法を放つ。
「吹き飛べ、『エクスプロージョン』」
ガーゴイルは、粉々に砕け、竜魔人達は吹き飛んだ。
その隙に、クオンとエクスは、京太のもとへと向かう。
「お兄ちゃん!」
「主・・・・・」
だが、京太に辿り着く前に、
3体の竜魔人が立ち塞がった。
クオンが、竜魔人を睨みつける。
「そこをどけ!」
エクスも、そう言い放ち、竜魔人達に剣を向けるが、
竜魔人達にも、引くつもりなど、毛頭ない。
「よくも仲間達を、やってくれたな・・・・・」
クオンを睨み付ける【ダンタニア】侯爵。
「ダンタニア侯爵様、ここは、私、【ソロモ】にお任せください」
ソロモ男爵が名乗り出るが、【ヂャング】男爵が止める。
「まて、ソロモ男爵、ここは、2人で行くぞ。
丁度2対2だ」
ソロモ男爵とヂャング男爵が前に進み出る。
しかし、2人よりも早く、クオンとエクスは、駆け出していた。
その事に気付くのが遅れたソロモ男爵とヂャング男爵。
急いで剣を取り出すが、間に合わない。
2人揃って、その腕を、切り落とされた。
「ウギャァァァ!」
「グワァァァァァ!」
シンクロする様に切り落とされたソロモ男爵とヂャング男爵の腕。
2人は、地面を転がり続けている。
「無様だ・・・・・」
ダンタニア侯爵に慈悲は無い。
目の前で、転がるソロモ男爵とヂャング男爵の首を刎ねる。
「これで、静かになった」
「なんてことを・・・・・」
ソロモ男爵とヂャング男爵は、物言わぬ屍と化した。
だが、ダンタニア侯爵の顔色は変わらない。
「次は、貴様達の番だ」
ダンタニア侯爵は、クオン達と向き合った。
その瞬間、空から落ちて来た稲妻により、生贄の祭壇が破壊される。
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