第211話バーレン 上陸
ソニア達に、あの場を任せて、先に進む京太達。
「なんか、自然に出来たようには見えないね」
デュラの言葉の通り、ソニア達と離れた後、
京太達の進む海の両側は、人の手によって、
並べられたと思われる岩礁で固められていた。
そして、その先に進むと、見えない何かに触れ、通り抜ける。
――今のは、結界?・・・・・
でも、こんなに簡単に通れるもの?・・・・・・
もしかして・・・・・
京太とエクスは、驚いている。
先に口を開いたのは、エクス。
「主、この結界ですが、既に役目を終えているように思えます」
「うん、僕もそう思ったよ。
『神力』を、殆んど感じなかったからね」
「主様、どういう事じゃ?」
ラゴの問いに答える。
「この結界は、魔法の神イシスが張ったものだけど
殆ど 『神力』が残っていないんだ。
だから、じきに霧散して、
結界の意味を、なさなくなるよ」
結界を通り抜けたからこそ、京太には、はっきりと理解出来たこと。
【魔法の神、イシス】の張った結界は、魔力に神力を混ぜ合わせ、
『魔の者達』を閉じ込める結界。
その為、神力が失われると、結界としての意味を、なさなくなる。
そうなれば、この島に閉じ込めていた者達が開放される。
悪魔が出現し、竜魔人達に力を与えていると思われる状態で、
竜魔人達が解放されれば、世界が最大の危機に陥る事は明白。
京太にとって、それは許されない事。
12人の神が、命を賭して守ったこの世界。
再び悪魔が、暗躍しようとしているが、
京太は、絶対に阻止すると誓う。
京太達が足を進めると、岩陰に身を潜めていた、ガーゴイルの集団が姿を現した。
「グギギギギ・・・・・」
手には槍を持ち、京太達を取り囲む。
そして、ガーゴイル達の上空には、
いつの間にか黒い鳥達が飛んでいた。
完全に囲まれた京太達だが、黒い鳥もガーゴイルも、
攻撃を仕掛けて来ず、様子を窺っているように見える。
警戒を強め、武器を構える京太達。
そんな中、ガーゴイル達の間から、3人の女性が姿を現す。
3人の真ん中に立ち、黒いボンテージスーツの女性が
呆れたような顔で呟く。
「あの2人・・・・・わざと通しおったな・・・・・」
ゴルドバ男爵とシアンコ男爵に、腹を立てているようだ。
「【ゼントマー】子爵様、私達が処分して来ましょうか?」
右側に立っていた赤いキャットスーツを着た少女が、
ゼントマー子爵に伺いを立てた。
「まぁ・・・・・後で良い。
それよりも、目の前の侵入者共を、どうやって殺そうか・・・・・」
「ゼントマー子爵様、私にやらせて下さい」
ゼントマー子爵の左側に立ち、赤いデビルスーツを着た少女が申し出る。
「ズルい、私もやりたい!」
赤いキャットスーツの少女も参加を申し立てた。
「ならば、2人で殺せ。
ただし、わかっておるな・・・・・」
ゼントマー子爵が、2人を睨む。
「勿論です!」
「では、行け」
2人は同時に飛び出し、左右に分散する。
「【メイダ】、私、右に行くよ」
赤いキャットスーツの少女は、
メイダと呼んだ赤いデビルスーツの少女に伝えた。
「わかった、【メイロ】。
だったら私は、左側だね」
メイダは、赤いキャットスーツの少女、メイロに答えた。
「そう来るか・・・・・ならば、わらわは、あの猫を倒そう」
アイシャは、そう言い残し、駆け出した。
「ならば、わらわは、こっちじゃのぅ・・・・・」
ラゴも逆方向に駆け出すと、メイダのもとへと向かう。
「では、此処はお2人に任せて、私達は、先に進みましょう」
ウルド ツールの言葉に従い、京太が歩き出すと
上空で待機していた黒い鳥達が、京太達に攻撃を仕掛けてきた。
その攻撃は、今までの攻撃とは、違っており
黒い鳥自身が、槍のようになって降り注ぐ。
――えっ!?・・・・・・特攻かよ・・・・・
逃げ場の無い京太達の様子を、
笑みを零しながら見ているゼントマー子爵。
しかし、驚きはしたが、対応策が無いわけではない。
透かさず、京太は魔法を使う。
「シールド」
京太は、シールドを張り、黒い鳥の攻撃を防ぐ。
「このまま進みましょう」
黒い鳥たちの攻撃は、シールドによって阻まれ、
京太達にダメージを与える事が出来ない。
その光景に、ゼントマー子爵は、中止の合図を送る。
「もう良い、無駄だ・・・・・」
黒い鳥の攻撃が止まる。
そして、ゼントマー子爵自身が、京太は向かい合う。
「貴様の名を聞こう」
「僕は、京太と言います」
「我は、ゼントマー子爵。
我等の悲願の為、貴様の命、今、この場で頂くぞ」
「それは無理です。
貴方に、僕は倒せません」
「フッ・・・・・それは、どうかな?
今の我等には、ベルゼブ様より授かった加護がある。
貴様の様な人間が、この地に赴き、
我らに刃向かうなど、万死に値する」
京太の顔つきが変わる。
「・・・やはり、この地には、
悪魔に必要な何かが、あるのですね」
「貴様に話す事など、何も無いわ!」
ゼントマー子爵は、腰の剣を抜く。
「一撃のもとに屠ってやる!」
ゼントマー子爵の動きは素早く、
瞬時に京太の死角に回り込み、
剣を振り下ろす。
――もらった・・・・・
笑みの零れるゼントマー子爵。
しかし、振り下ろした剣に、何の感触も感じなかった。
「えっ!?」
幻影を切り裂いた事に気が付いたゼントマー子爵だったが、
同時に、自身の体の変化に気が付く。
「どういう・・・・・事な・・の?・・・」
ゼントマー子爵は、気付かない内に、京太に、袈裟切りにされていた。
その為、視界が段々と下がり、最終的には、上半身が地に落ちる。
目を見開いたまま、一撃で倒されたゼントマー子爵の姿に
メイダとメイロに動揺が走る。
「「ゼントマー子爵様!!!」」
2人は、思わず叫んだ。
しかし、その行為は、致命的な隙を生む。
「愚かじゃ」
背中を見せたメイダの首が飛ぶ。
「メイダ?・・・・・」
完全に動きが止まったメイロに、アイシャは、背後から剣を突き刺す。
「中々楽しかったぞ、だが、わらわ達には、まだまだ及ばぬわ」
アイシャは、剣をメイロの体から抜くと、
メイロの首を飛ばす。
3人を倒すと、待機していたガーゴイルと黒い鳥が襲い掛かってきた。
「邪魔だ・・・・・」
京太が、神力を込めて、剣を振ると、
その風圧により、黒い鳥とガーゴイルは、塵と化す。
「凄っ!」
思わず声を漏らすデュラ。
その声を聞き逃さなかったラゴが、デュラに詰め寄る。
「当然じゃ、主様に敵う者などこの世には、おらぬわ」
腰に手を置き、高笑いをみせるラゴ。
しかし、その様子を見ても、京太に笑顔は無かった。
――主・・・・・・
エクスは、気付いている。
ゼントマー子爵の話を聞いてから、京太の顔つきが変わった事を。
そして、ガーゴイルと黒い鳥を塵に変えた今も、
京太の表情は、険しいままだった。
エクスは、クオンにお願いをする。
「お姉ちゃん、お願いです。
何があっても主を怖がらないで下さい」
「ん?
どうしたの?」
「いえ、それだけを伝えたかったのです」
エクスは、そう言い残し、ラゴのもとへと向かった。
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