第201話バーレン 武装国家ハーグでの会議

謁見の間に、入ると誰もいない・・・・・


「あれっ?・・・・・」


京太とユグドラが立っていると、

後ろからルドガー タガートが追い付く。



「京太殿!


 そちらでは、ございません!」




「えっ!?」



京太とユグドラは、顔を見合わせた。



その後、ルドガー タガートの案内に従い、連れて来られたのは会議室。


息切れも収まったルドガー タガートが扉を開く。




「京太殿とユグドラ様をお連れしました」




アリソン タガートが席を立つ。




「京太様、ご無沙汰致しております。


 何分、この様な時ですので、何もお構いできなくて・・・・・・」




「お気になさらないで下さい。


 僕も、その件で、お伺い致しましたので」




「では、会議に御参加ください。


 それから、そちらの方は?」




「改めて、紹介するよ、ユグドラさんです」




「我は、古竜、ユグドラ。


 今は、息子に代を譲ったが、先代の長である」



会議室の空気が固まる。


そして、始まる混乱。



京太が、辺りを見渡すと、意識を失っている者。


逃げようとして、扉にぶつかり、血を流す者。


テーブルの下に隠れ、ブツブツ言っている者達の姿があった。




その中で、意識を必死に保とうとするアリソン タガート。




「・・・・・京太様、あの・・・・・お話が・・・・・?」




「はい?」




「出来ましたら、別室でお話を・・・・・」




「ん?」




再び辺りを見渡す。




「あっ・・・・・ごめん。


 他の部屋に行きましょう」




――この状態だと、会議は、無理だもんなぁ・・・・・




ユグドラと京太が会議室を出ると、アリソン タガートが後に続く。




「貴方も来なさいっ!」




アリソン タガートに腕を掴まれるルドガー タガート。




「何で儂が!」




「貴方は、驚かなかったところを見ると、知っていたのですね」



「ああ、先程知った」



アリソン タガートは、怒りの表情を見せる。



「なら、お2人を別室に案内した後、私達に告げる事が出来た筈です!」




「そ、そうであったな・・・・・すまない」




アリソン タガートは、3人を自室へと案内する。


ソファーに腰を掛け、一息つくと、話しを始めた。




「ユグドラ様、先程の態度、改めて謝罪致します」




「気にしておらぬ、それに、今は、もっと大事な話があろう」




「はい、アラアイ教国に、竜魔人が住み着いた事についてですね」




「そうだ、あの地に、誰か送って見たのか?」




「一度だけですが、偵察隊を送りました。


 しかし、街に入る事は難しく、遠目の魔法でしか確認が出来ておりません。


 ですが、その時に神殿のあった場所に、

 何かを建造していた事が、確認できております」




その話を聞き、京太には、思い当たるものがある。




『生贄の祭壇』




かつて、リザード族も使用していた。




「あの場所で、生贄の祭壇を建て、

『アビスホールの奥に巣くう者』に、力を与えるか、

 若しくは、召喚するつもりなのでしょう」




青ざめるアリソン タガート。



「京太様、何か手は?・・・・・・」



「はい、竜の力を借りようと思っています」



アリソン タガートが、ユグドラを見る。



「本当に、手を貸して頂けるのでしょうか?」



「ああ、その為に来たのだ。


 我等は、この地の守護者でもある。


 この度の件、放置するわけにはいかぬ」


「感謝致します」


アリソン タガーガートが、御礼を述べた後、

京太は、作戦について説明をする。


竜を使い、上空からの侵入。


また、上空の敵の殲滅には、兵士を載せた竜達に任せる事を告げた。



「では、私達は?」


「はい、国境の守備と、地上からの侵入です。


 初めに、上空から侵入します。


 その後、隙を狙って、地上から侵入して頂き、

 生贄の祭壇の破壊に向かって下さい」



「竜魔人の抵抗が、予想されますが?」



「奴らの殲滅は、僕たちが担いますので、

 皆さんは、生贄の祭壇を破壊した後は、直ぐに、逃げてください。



 生贄の祭壇には、その場所で召喚する以外にも、

 生贄になった者達の魂を送る事が出来ます。


 なので、必ず、破壊しなくてはなりません。


 もし、失敗すれば、アラアイ教国だけでなく、

 バーレンでも、復活が可能になるのです」



「それは、・・・・・」




「はい。


 竜魔人の数が増えるばかりか、

 上位の竜魔人の復活もあり得ます。


 そうなれば、こちらが不利になることは、間違いありません。



 現在、各地に飛び回っている竜魔人も、何処かに祭壇を作っている筈です。


 なので、その祭壇と、アラアイ教国の祭壇を破壊するだけでも、

 奴らの復活を遅らせる事が出来ます」




「では、早急にかかろう」




京太達は、アリソン タガートを先頭にして、先程の会議室に戻る。


先程の状況から復活していた参加者の前に立ち、

アリソン タガートが説明を始める。



元々、膠着状態に陥っていたので

先程の作戦が、満場一致で、承認を得た。




1週間後に、再び集合する事を約束し、一度、火の山に戻る。



火の山に京太と共に戻ったユグドラは、直ぐに竜と竜人を集めた。



火口に集まる竜達。




「これより話す事は、今迄に無かった事態だ。


 その為、混乱する者も現れるかも知れないが、聞いてくれ」




ユグドラに、皆の視線が集まる中

再度、この戦いに参戦し、人族とも連携を取る事を告げる。



「我等、火の山に住む竜族は、この度の竜魔人殲滅作戦に参加する」




この発言を受け、歓喜する者や、

『何故、下等な人族となんかと・・・・』と荒れる者もいた。



その状況を見て、ユグドラが提案する。



「貴様等の言い分は、わかった。


 人族と組みたくないのだな・・・・・」


一瞬にして静まり返る。


「丁度、ここに、貴様らが下等と侮る人族がいる。


 その者達と、戦ってみてはどうだろうか?


 もし、勝つことが出来たのなら、その者の言い分を認めてやろう」



――あっ、凄く悪い顔をしている・・・・・・



溜息を吐き、諦めて、前に進み出ようとした京太を、背後にいた者達が止める。



「京太が出る必要は無いわ」


「わらわも、その意見に賛成じゃ」


「お兄ちゃんの分も、頑張るからねっ!!」



京太を背後に追いやる嫁さん達。




「えと・・・君達、何をしているの?」




「温泉に来てたんだけど、

 『なんか、揉めている』って聞いたから、皆で、見に来たの。


  そしたら、お兄ちゃんもいるし、面白そうな話に、なっていたから・・・」




皆が、うんうんと頷く。




――誰だよ、揉めているなんて言ったのは・・・・・・


――それに『面白そう』って・・・・・




肩を落とす京太だった、とある事に気付いて、慌てて止める。



「ちょ、チョット待ったぁぁぁぁぁ!!」


一斉に振り向く嫁さん達。


「ミーシャ、セリカ、イライザ、こっちに来なさい」


「京太さん、どうかしました?」



不思議な顔をするミーシャ。



「君達は、妊婦さんなんだから、止めておこうか・・・・・」


「「「えっーーーー」」」




――何故ここで不満が出る・・・・・



京太の必死の説得が続き、仕方なく、3人は参加を見送った。




「時間を取らせて悪い。


 話は終わったから」



「そうか。


 ならば、始めよう」



名乗り出る挑戦者達。


その数6。



――本当に、大丈夫?・・・・・



そう思う京太の心配を余所に、試合は始まる。



「最初は、私」



ラムが、前に出た。


同時に、一際大きな竜が、ラムの前に現れる。



「へへへ・・・・・楽しませてもらうぜ」



自信に溢れた態度の竜。試合開始とともに

咆哮を上げ、ラムを恐慌状態にしようとする。


しかし、ラムには効果が無い。


「えっ・・・・・」


驚きのあまり、茫然とする。



その隙をラムが見逃す筈も無く、竜の懐に潜り込むと、

魔力を纏わせた拳で殴る。



「グヘッ!」



少し、頭が下がった所で顎を殴った。


『ドシィーーーン』と大きな物音を立てて倒れる竜。



「アースバインド」



竜は、地面から伸びて来た蔦に、巻きつかれ、身動きが取れなくなった。


そして、殴る。


マウントを取ったような状態で、ただひたすら殴る。


悲鳴を上げる隙も与えないほど殴り続ける。


その様子を見ていた京太は、不思議に思った。



「ユグドラ、あれ、弱すぎない?」



「・・・・・あ奴は、まだ16歳です」



「へっ!?」



「最近、こ奴は、親の言う事も聞かず、 

 街に出て暴れようと画策していた事もあり・・・」



「・・・・・」



「・・・・・申し訳御座いません。


 ですが、他の部族に迷惑をかけ、

 討伐される前に、身の程を教えてやりたかったのです」



京太は、ユグドラの気持ちを察した。



――丁度良い感じに、反抗したから

  俺達を、利用したのだろうなぁ・・・・・



事情を知り、怒る気になれない。



「まぁ、別に構わないよ。


 うちの方も楽しそうだし・・・・・」




京太とユグドラの目には、『次は誰?』と笑顔で言い放つラムの姿が映ったが

『交代!』と言い続ける嫁さん達の抵抗に遭い、渋々交代する。



この状況に、思わず声が漏れる。




「京太様・・・・・」




「・・・・・ごめん、これがうちの通常です」






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